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知ってますか? 認知症 ④

2020.06.15

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

記憶になければ事実でない

最大の特徴は、もの忘れ

年とともに物忘れが目立つようになると「自分も認知症が始まったのか」と心配になるように、記憶障害が認知症の最大の特徴であることはよく知られている。そして、認知症には例外なく見られる症状だ。

 普通の物忘れと違い、認知症の記憶障害には、「記銘力低下」(ひどい物忘れ)「全体記憶の障害」(体験を丸ごと忘れる)「記憶の逆行性喪失」(現在から過去に向けて記憶を失っていく)という特徴がある。この3つの特徴を頭に入れておけば、認知症の症状がよく理解できるようになる。

 ところで、まず私たちが心得ておかなければならないことは「記憶になければその人にとって事実ではない」ことだ。見知らぬ人から「先日貸した金を返せ」と言われても、記憶になければお金を借りたことを決して認めないだろう。

しかし、交通事故やてんかんの大発作などのため逆行性健忘になり、金を借りたという記憶を失った人は、実際にはお金を借りていても、借りたことを覚えていないため、同じ態度をとるはずだ。

周りの者にとっては真実であっても、本人には記憶障害のために真実でないのが、認知症では日常的であることを知っておくことは大切だ。

 今見たこと、聞いたこと、話したことを直後に忘れる、つまりひどいもの忘れが、記憶障害の第一の特徴だ。同じ話を何回も繰り返し話すのは、その度に忘れてしまい、毎回初めてのつもりで話しかけているに過ぎない。

しかし、同じ話を聞かされている者はたまらないので、「何度も同じ話をしないでよ」と言うと、本人は「まだ一言も話してないのに、私が何回も話したなんて嘘を言うのだろう。嫌な人だ」と反応してしまう。それよりも、「ああ、そう」と適当に聞いていれば穏やかな状態が続く。

 物忘れのために同じことを繰り返すのは、認知症の人ばかりではない。「年寄りの話はくどい」と言うが、話したことをふっと忘れて2、3回繰り返すに過ぎないのであって、相手の頭が悪いから何度も言っておかなければならないと考えてのことではない。

外出の時、ガスの元栓を閉めたかどうか気になり、処置したことを思い出せなかったら、必ず台所に戻って確認するはずだ。気になることを忘れた場合に、繰り返すのは人間の本性である、と知ることは重要だ。

「同じ状態になれば自分も同じことをする」と思うことで、認知症の人の気持ちが理解でき、イライラが軽くなるのは間違いない。

 

 

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