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特集 認知症患者さんの不安をやわらげる癒やしの『マフ』

介護や医療現場で活用されています!

浜松医科大学臨床看護学講座 鈴木みずえさん

イギリスで「Twiddle Muff」と呼ばれる、毛糸や厚手の布で作られた筒状の『認知症マフ』。2018年に日本に紹介されて以来、介護・医療現場や家庭で活用され、マフ作りは地域のボランティア活動としても広がっています。

この活動を全国に広めている浜松医科大学の鈴木みずえさんは、朝日新聞厚生文化事業団の認知症マフワークショップに参加後、急性期病院や高齢者施設での導入を行いました。こそれらの体験のもとづいて「認知症マフ活用ケアガイド」を作成し、普及に取り組んできました。
本特集では、このケアガイドをもとに、マフの効果や活用方法、作り方を紹介します。あわせて、「私の生き方と学び」で紹介した『なごみマフ』のボランティア活動も取り上げます。

Twiddle muff『認知症マフ』とは

マフは、筒状でカラフルにデザインされたニット製品で、認知症の人の落ち着かない手をやさしく、温かく包み込みます。触覚や視覚を活用したケアに用いられ、内外にはボタンやリボンなどのアクセサリーが付けられています。
片手または両手を筒に入れ、触れたり握ったりすることで感覚刺激が生まれ、周囲の人とのコミュニケーションも促進することで、心身の緊張が和らぎ、安心感につながります。

『認知症マフ』は、『癒やしのマフ』『なごみマフ』など、グループによって呼び方が異なります。

ここにご紹介しているのは一部です。活動したい方は本を購入してください。

癒やしのマフ』人と人がつなぐ認知症ケア

鈴木みずえさんがまとめた本書は、マフを初めて作る方や、認知症の方にマフを使ってみようと考えている方のための指南書です。
マフ制作のポイントや注意点、ボランティアグループの活動事例、さらに医療・介護現場でどのように活用されているのかが、具体的に紹介されています。 

著者:鈴木みずえ

出版社:クリエイツかもがわ ¥2,860(本体¥2,600)

マフの効果や活用方法について 

浜松医科大学臨床看護学講座  鈴木みずえさん

手を拘束するものではありません!

マフは、手袋型拘束帯(ミトン)の代わりに、認知症の人の手を拘束するものではありません。マフの内外には、柔らかな編みぐるみの人形やリボンなどのアクセサリーが付けられています。
認知症の人が自由に筒状の部分に片手あるいは両手を入れたり、マフの外面や内面、アクセサリーなどを触ったりすることで、感覚を用いた関わりが生まれ、心身の緊張が解きほぐされ、安心感が得られます。

マフは、ご本人の好みに合わせて色や手触り、アクセサリーを選び、変化するニーズに合わせたデザインにすることで、さらに喜ばれます。
ご本人が自分で選べない場合は、生活背景や趣味に合わせて、例えば農家であれば収穫していた野菜や好きな花など、その人ならではのストーリーを取り入れたマフの制作をしてみましょう。

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認知症の人の心理的ニーズ  

 使用開始時に本人に好みを聞いてみよう!

日常生活で刺激少なく、人とのコミュニケーションも少ない認知症の人、握った物を離さない傾向のある人にマフはケアとして活用できる可能性があります。アイコンタクトをとりながら、「○○さん、これは手を温める毛糸です。触ってみませんか?」と声をかけ、好みを確認します。
コミュニケーションが難しい場合は、マフの中にある掴むためのボールや毛糸玉などを握ってもらい、マフに興味を示すか、落ち着くかなどの反応を見ましょう。
ただマフを手渡すのではなく、コミュニケーションを取りながら反応を見ながら、マフの温かさやカラフルな色合いなどを一緒に感じることが重要です。

マフの活用と開始・中止基準

活用できる人

① 触ることによる心地よい刺激を好まれる人
② 視力の低下など、外部からの感覚刺激が少ない人
③ 重度認知症や脳血管疾患に伴う高次脳機能障害を有する患者
 (特に前頭葉機能低下や注意障害による行為障害
  例:言語的コミュニケーションが困難、説明に合わせた動作が困難、
  掴んだ物を離さない〈強制把握〉など)
④ ミトン型拘束帯を使用している人

 

開始基準

① 落ち着きのない様子が見られるが、その理由をご本人が言語的に表出できない場合

② 点滴などのチューブ類を気にする様子が見られる場合

③ チューブ・カテーテル・ドレーンなどのライン類や布団、柵などを常に握っており、ミトン型拘束帯の使用を検討中、あるいは使用している場合

感染症対策

1人の患者が同じマフを継続して使用する。
洗浄していないマフの使い回しは禁止する。

中止基準

① マフを口に入れるなど、異食の危険があると判断される場合
② マフの活用により、かえって落ち着かない様子が見られる場合
③ 血液などによる汚染が強く見られる場合
 (洗濯などを行い、継続使用が可能か検討する)

 

❷マフの活用の手順

マフは、筒状で左右が開いており、両側から手を入れて内側に取り付けられたボールや毛糸玉、ボンボンなどのグッズを触り、感覚を楽しむのが基本です。
入院中の高齢者の場合は、下記の3STEPで、落ち着かない原因となる痛みや苦痛がないかを検討します。

  • STEP1:アセスメント
  • STEP2:苦痛緩和
  • STEP3:マフの活用

使用の際には、必ずマフを好むかどうかを確認します。
また、活用中はコミュニケーションを取り、反応を観察することが大切です。

STEP 1 アセスメント

①苦痛

点滴・酸素療法による苦痛、テープかぶれによる掻痒感、不快感や苦痛をア

セスメントする。

②皮膚トラブル

デバイス周囲の圧迫による皮膚のトラブルの確認を行う。装着したテープ

の不快感、皮膚のトラブルなどをアセスメントする。

③せん妄のリスク

行動の日内変動や経過を確認して、せん妄が疑われる場合には、せん妄リス

クやせん妄スケールを用いてアセスメントする。

④治療継続の検討

持続点滴・酸素療法の継続などの必要性について、再アセスメントする。

STEP 2 苦痛緩和

皮膚トラブルへの対応
刺激の少ないテープを選択し、かゆみや違和感の軽減を図ります。

点滴療法の工夫
点滴ラインを衣服の中に通し、患者の視野に入らないよう環境を整えます。

酸素療法の工夫
皮膚観察を十分に行い、ひもやゴムを伸縮包帯に変更するなどの工夫を行います。接触部位にはガーゼや創傷被覆材を使用します。

日常生活への配慮
整容や趣味活動など日常生活動作を大切にし、治療のみに偏らない工夫を行います。

治療の早期中止の検討
摂食・嚥下状態、呼吸状態、血中酸素濃度(SpO₂)を踏まえ、担当医と相談のうえ、苦痛に関連する治療の早期中止を検討します。

STEP 3 マフの活用

STEP1・STEP2を行った上で、点滴抜去の危険性がある人に対しマフを活用します。
本人の安心感が高まるか、ルート類を抜去しようとする行動が減少するかを観察します。

 

❹マフ作成のポイント

① マフは、筒形の毛糸で編んだものや布でも作成が可能で、いずれも柔らかい手触りのものが好まれます。アクリル毛糸は、洗濯しやすいというメリットがあります。

② マフを手繰り寄せたり、両手を入れたりする動作ができるよう、マフの本体の長さは、写真のように筒の部分が15cm程度が適しています。

① 認知症の人は、思うようにいかず焦りやイライラから、不安定な状態(焦燥感)が見られることがあります。また、目についた物を握ってしまう傾向のある人もいます。
マフの中には、必ず握ることのできる毛糸玉やぬいぐるみなどのアクセサリーを入れます。柔らかい物を握ったり離したりすることで、癒やしやリラックス、ストレス緩和の効果が期待できます。

② 毛糸玉は握り拳半分ほど(直径5〜8cm)を目安とし、マフから外れないよう縫い付けます。ぬいぐるみの綿はポリエステル素材であれば丸洗いが可能で、清潔を保ちやすくなります。

③ 毛糸玉は、マフ本体から取れないよう、しっかりと縫い付けます。

④ 毛糸玉には玉状、ドーナツ型、編みぐるみなどさまざまな形を用意します。感覚刺激を与えるだけでなく、点滴などのライン類から注意をそらす効果も期待できます。

⑤ リボンや紐の長さは20cm以内とします。それ以上になると、首に巻き付く危険があります。

⑥ ドーナツ型は、掴んで離さない人や握力が弱い人にも握りやすい形です。ハート形や半月型など、好みに合った形や色を使い、楽しみながら作成しましょう。

 

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