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知ってますか? 認知症 ⑱

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

「明日はわが身」と理解を

普段の付き合いが大切

「こだわり」に対する、第5番目の対応の仕方は、「地域の協力理解を得る」というコツもある。

夜間の騒音、ごみ出し、徘徊、隣人への被害妄想など、地域社会とのかかわりをもつ認知症の症状は少なくない。こんな時、家族は、「遠慮」「気兼ね」「陳謝」など、近所への気遣いという重荷を背負うことになる。

「女手一つで苦労して私を育ててくれた母ですから、被害妄想のため私を母がののしった時も、夜間騒いで眠れなかった時も、介護がつらいと思ったことはありませんでした。しかし、あることがきっかけで隣の家に毎日怒鳴り込むようになって、隣の人から、町を出て行ってほしいと抗議をうけた時、母に死んでほしいと思いました」

ある介護者が泣きながら語った言葉を今でもはっきり思い出す。

近所への迷惑を考えて、鍵をかけて外出できないようにする、薬を使って興奮を静める、言い聞かせるなどの対応をしてもうまくいかず、混乱を深めることになりかねない。逆に、地域の理解があれば深刻な症状が軽くなる。

「義父が近所の薬局でせっけんを万引きしていることに気付いたとき、目の前が真っ暗になりました。先生のお勧めによって、石鹸を持ってお店の方に事情を話した。『あんなに元気だった方が認知症になったとは知りませんでした。大変ですね。私たちも注意しますが、せっけんが見つかったら返していただければ結構です』と言っていただいてほっとしました」

これは私が訪問診療をしていた介護者の体験である。ちなみに、その家では雑貨などをいつもその薬局から買っていたので顔なじみだった。地域でどのような人間関係を築いているかによって、認知症問題の深刻さが違ってくるものである。

「散歩にでて帰ってくると思っていて、徘徊ということが頭になくショックでした。心当たりを捜し警察にお願いした後の連絡待ちの長かったこと」(社団法人認知症の人と家族の会千葉県支部アンケートより)

そんな徘徊も「一人で歩いているのを見掛けたので、声をかけて連れてきました」といった近所の人の目と協力があれば、さらに地域社会の協力で「徘徊SOSネットワーク」がしっかりできていれば、深刻なものでなくなるかもしれない。

「明日はわが身」「お互いさま」という理解が地域に根付いていれば、「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」が可能になると確信している。

 

 

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