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知ってますか? 認知症 ㉑

 川崎幸クリニック 杉山孝博院長

思いも寄らぬ衰弱の速さ

介護期間は決して長くない

「毎日6~7時間歩いても、疲れた様子もないのです。食欲は私よりもあります。とても86歳とは思えない元気さです。事故が起こってはと思って一緒に歩いているのですが、私の体がもちません。この状態がどれくらい続くのでしょうか」

「食事のとり方が悪くなったら、衰弱が急速に進行して、2週間目に亡くなってしまいました。以前、先生から、認知症の人の衰弱の進行は速いといわれていましたが、こんなに速く衰弱が進むとは正直思っていませんでした」

「義母の介護を始めてから17年目になります。話しかけてもうなずくだけで、穏やかな状態です。昔は憎らしかった姑がいとおしくなりました」

認知症の人と家族の会などが行う、介護者のつどいでは、このような会話が日常的に交わされている。

「認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症のない人の2~3倍のスピードで進行する」という特徴がある。私はこの特徴を、「衰弱の進行に関する法則」と名付けている。

高齢者を四つのグループに分け、それぞれのグループの年ごとの累積死亡率を5年間追跡調査した結果(長谷川和夫前認知症介護研究・研修東京センター長)によれば、認知症高齢者グループの4年後の死亡率は83.2%で、正常高齢者グループの28.4%と較べると約2.5倍になっていた。

さらに、認知症グループホームなどの利用者の変化をみると、はじめは元気で行動的であった人が、数年経過すると動きが悪くなって通所できなくなる例や、買い物、配膳などの共同生活ができていた人が室内に閉じこもるようになり寝たきりになる例などは決して少なくない。

したがって、何年何十年にわたって介護し続けなければならないのかと思い悩んでいる家族に対して、私は次のように説明することにしている。

「同じ年齢の正常な人と比べると、認知症の人の場合、老化が約2~3倍のスピードで進むと考えて下さい。例えば、2年たてば4~5歳年を取ったと同じ状態になりますから、看てあげられる期間は短いのです」

 ただし、アルツハイマー病でも非常に速く進行する例もあれば、20年間にわたって穏やかに進行する例もあるように疾患そのものの性質によって変わってくるし、落ち着いた環境で適切な介護によって経過がゆっくりすることもあるのでこの特徴はすべての認知症に当てはまるわけではない。

 

 

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