48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

知ってますか? 認知症 (46)

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

急拡大したグループホーム

ケアに有効な生活を提供

 「ここのお年寄りは精神病院や老人ホーム、老健施設などにいたとき『問題老人』と呼ばれていた人たちばかりです。夜間騒いだり徘徊したりして、時にはベッドに縛り付けられたりしていました。ここに来て使い慣れた家具に囲まれ、規制のない生活を送るだけで本当に落ち着いきて、普通のお年寄りになました」

そう話すのは、北海道函館市にある「シルバービレッジ函館あいの里」総合施設長、林崎光弘さん。十数年前、私が初めてグループホームを見学した時聞いた話である。

 「食事の支度や、畑の野菜づくり、ポニーの世話など、それぞれのお年寄りの能力や経験に応じたことをやってもらうと生き生きとして来ます。人の役に立っていると感じることは誰でもうれしいものですから」

 入院しているときと比べて、自宅に帰った途端に食欲が出て、見違えるほど元気になった在宅患者をたくさん診ている私には、林崎さんの言葉が誇張されているとは思わない。

 認知症高齢者グループホームは利用者の数が5~9名程度の小規模な生活の場で、専門スタッフとともに家庭的で落ちついた雰囲気の中で生活を送ることにより、認知症の進行を遅らせ、その人らしい生き方を可能とするサービスである。「ゆったり、一緒に、楽しく、ゆたかに」が基本理念だ。

2000年3月末で266施設であったグループホームは、介護保険によって「認知症対応型共同生活介護事業」として認められ、最近では約1万カ所まで増加した。介護保険のサービスで最も拡大したサービスのひとつだ。

小規模のため設置しやすいこと、介護保険で認められて経営的に安定したことなどが急速な拡大の理由としてあげられるが、最大の理由は認知症の人の介護に関してグループホームにおけるケアが最も有効であると考えられたことであろう。

 グループホームが抱える問題としては、ケアの質の向上・維持と、利用者の重度化、ターミナルケアへの対応がある。

自己評価、外部評価などによって自発的にケアの質の向上・維持をはかる仕組みが、グループホームで最も早くから義務化されたことは重要だ。

入居時体力のあった人でも徐々に動けなくなって重度化し、いずれ末期を迎える。その状態で他の施設や病院に移ると混乱がおこる。医療との連携や医療的ケアなどさまざまな問題があるが、「みとり」に取り組み始めたホームが出ていることは心強いかぎりだ。

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