48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

困った介護 認知症なんかこわくない ㉔

2019.04.09

川崎幸クリニック杉山孝博院長

認知症をよく理解するための8大法則・1原則

第4章  上手な介護の12ケ条

第4条 「過去にこだわらないで現在を認めよう」

「細かいところにもよく気配りができ、いつも身ぎれいにしていたお母さんが、これほどだらしなくなるとは!とても信じられない。」
 これまで敬愛していた肉親に認知症が始まったとき、どの家族も現実を認めようとしません。肉親の示す奇妙な症状にとまどいながら、「認知症であるはずがない。今日はからだの調子が悪いか、虫の居所がわるいのだ。」などと否定しようとします。そして、これまでのイメージに固執して、元どおりのしっかりした人になってもらうため一生懸命に教え込んだり、説明したり、しかったりします。

このようにすることによって効果が得られるでしょうか。分別ある、しっかりした肉親が戻ってくるでしょうか。

多くの場合、答えは「ノー」です。

「まだら症状の法則]にあるように、認知症のないしっかりした言動を認知症の人はしばしば見せますし、あるときの混乱が落ち着くと、認知症が治ったと思えるような穏やかな状態になることもよくあります。こんなときには、家族は、「やはり認知症ではなかったのだ」「認知症が治った」と思いがちです。

家族がそのように考えても悪いとは思いませんが、残念ながら、もとの状態に戻そうとする努力はマイナスの結果をもたらす場合がほとんどです。

何度教えてもすぐ忘れてしまう「記銘力低下の特徴」、説明されたり否定されたりすればする程こだわりを強めてしまう「こだわりの法則」、そのようなことをする人をくどい人厭な人ととらえてしまう「感情残像の法則」などの特徴から、認知症の症状がかえってひどくなってしまうのです。

結局、現実を認め、それをそのまま受け入れるしかないのです。現実をうけいれたくない家族の気持ちはよく分かります。しかし、過去にこだわりをもっているときこそ、介護が最も困難な時期です。言い方を変えれば、現実を認めないことで自ら介護を大変なものにしているのです。

「認知症をよく理解するための8大法則」や「介護の原則」をよく理解して、さらに、自分は「家族のたどる心理的ステップ」のどの段階にあたるかを考えながら、上手な介護を続けたいものです。

 

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