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知ってますか? 認知症 (31)

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

混乱を経て、割り切りへ

正しい理解がポイント

前回に引き続いて、介護家族のたどる4つの心理的ステップを考えていきたい。

第2ステップは「混乱・怒り・拒絶」だ。

 「戸惑い・否定」をしていても、現実には異常な言動が続く。すると家族は、そのような言動に対してどう理解し対応してよいか分かららなくなって、混乱状態に陥る。

 丁寧に説明し、教えれば理解するだろうと期待して頑張ってみても、効果が得られない、いくら注意しても同じことを繰り返す、一晩中騒いで眠らせてくれない。

このような状態になると、心優しい介護者であっても「ついいかげんにしてよ。さっき注意したばかりでしょ!」と、怒りの気持ちがわき上がってくる。

 さらに介護の成果が一向に得られず、孤立して介護を続けざるを得ない介護者は精神的・身体的に疲労困ぱいして、ついには「とても面倒をみきれない。このままではわたしも家族も倒れてしまう」「お母さんさえいなければ、どんなに気持ちが楽になるだろう」などと言って、認知症の人を拒絶しようとする。

 これが第2ステップの「混乱・怒り・拒絶」である。この段階では介護者の苦悩は極限に達する。日常的な苦労に加えて、この状態が今後何年間続くのかという不安が重くのしかかり、介護者を苦しめることになる。

 第2ステップの特徴は、認知症に関する正確な知識もなく、適切な医療や介護サービス護を受けずに介護者が常識的な対応をすることで、かえって認知症症状を悪化させていることである。

介護を「拒絶」しようとしても、親類の援助を得られない、施設に入所できない場合には、介護は続いていく。すると、そのうちに「―生懸命にやってきたけれど、どうも効果がないばかりか、かえって混乱がひどくなってしまう」ということが分かってくる。

そういう段階では、無駄なことはしなくなる。第3ステップの「割り切り、あるいはあきらめ」の境地にいたるのである。

 同時に、認知症の人の介護を通して、また本や新聞、「社団法人認知症の人と家族の会」などを通していろいろな情報を得ることで、さまざまな介護のテクニックにも次第に精通してくる。そして、社会・医療・福祉からある程度の援助があれば、病院や施設に預けず家庭で介護しようという気持ちにもなってくる。しかし、一方では、認知症が進行して、より多彩な症状を呈してくるのもこの時期である。

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