48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

『インクルーシブデザイン』を普及させたい!!

(一社)インクルーシブデザイン協会 代表理事 

国宝孝佳さん(38歳)

 今、多くの企業が『インクルーシブ デザイン』を意識して物作りを始めています。ソニーも2025年度までに全ての商品やサービスを企画・開発段階で障がい者(リードユーザー)らに参加してもらい、意見を取り入れる「インクルーシブデザイン」を採用して、障がい者や高齢者に配慮した仕様にすると発表しています。従来のデザインプロセスから除外されていた方々を巻き込み、新たな価値を創造するデザイン手法の『インクルーシブデザイン』について伺いました。

 国宝孝佳さんは理学療法士として8年間、病院でリハビリなどの運動指導を行っていたそうです。「そこでは身体に動かない部分があるなど、障がい者と呼ばれている人たち自身が、生活しやすいように工夫していることがたくさんありました。例えば、ズボンを上げやすいように麻痺の方にフックをつけるなど。これらのアイデアをなんとかして作っていければいいな」と思ったそうです。

国宝さんは2016年に障がい者の人たちとのイベント企画や専門職と病院への橋渡しする会社を立ち上げるとともに、『インクルーシブデザイン』という考え方を勉強し協会を立ち上げることにしたそうです。ちょうどその頃に社会の課題を解決する参加型デザインの本『インクルーシブデザイン』を出しているジュリア・カセムさんに出会い意見を求めてスタートしました。

多くの企業は新製品を出す時には、ある程度のロット数がなければ生産に踏み切れない。そのため対象者のゾーンを広げることでピントがボヤけていました。国宝さんは一番のネックは使う当事者の意見を求めるタイミングだと言います。「企業はこんな商品のニーズがあるだろうと8割、9割方商品の形ができた時点で使う人の意見を求めてくるので、大きな方向転換がしにくいわけです。『インクルーシブデザイン』はリードユーザーの意見を基にして一緒に作っていくという考え方です」

協会としては、企業とリードユーザーである障がい者が一緒に意見を出し合って商品開発していくコンサルティングの形で物づくりに関わっているそうです。

すでに商品化されているのがノートブック『まほらノート』で、発達障がい当事者が既存のノートでは「光の反射が眩しい」「罫線が識別しにくい」「余計な情報が気になる」という問題を解消してできた商品で、2021年度のグッドデザイン賞を受賞しています。また、現在試作段階ですが、片手しか使えない方のためにボタン操作のいらない「5秒で着られるシャツ」があります。

「今の時代は小ロットでもクラウドファンディングという形で必要とする方に製品を提供することができる時代なので、商品化の可能性が広がっています。

これからは花王のアタックゼロのワンハンドボトルのように、握力の弱い方や高齢者、手指の不自由な方をインクルーシブしてデザインされたノズル形状は、あらゆる方々にとって使いやすいものです。このような商品化を目指して、商品開発段階で障がい者を巻き込んだモノづくりができる環境を作っていきたいです」と話しています。

 

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