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歩くことに勝る良薬なし! 「病気の9割は歩くだけで治る」

 「病気の9割は歩くだけで治る」  

長尾クリニック 長尾和宏院長

みなさん歩いていますか? 健康の基本は「歩く」ことです。なんとなくわかっていても、その効果がハッキリ理解できないと人は行動しないし継続できないのかもしれません。江戸時代の庶民は1日3万歩歩いていたそうですが、交通機関が整ってきた近年では歩くことが減り、そのことが生活習慣病をはじめいろいろな病気をつくってきたように思います。

今回ご紹介します「病気の9割は歩くだけで治る」著者の長尾和宏先生は、外来患者さんに「歩きなさい」「歩いていますか」と声をかけています。「歩く」ことが、体や精神面へ計り知れない程の効用効果をもたらしていることを実感しているからだそうです。

👣歩くことで筋肉や骨が丈夫になれば、年をとってから膝が痛い腰が痛いといった事も少なくなります
👣認知症だって歩くことで防げますし、たとえボケが始まっても歩けば良くなります

👣国民病といわれるがんも歩くことが予防・治療になります
👣気管支喘息や膠原病などの免疫系の病気だけでなく、片頭痛を代表とする脳過敏症も歩くことで良くなります

👣不眠やうつも、精神科に行って薬をもらわなくても、歩けば良くなります

👣介護が必要になりつつある「要支援」の人も、歩けば要支援を卒業できます

 現代病の大半は歩かないことが原因だった

  • 糖尿病人口は950万人に

    ⭐️高血圧人口は4000万人に

    ⭐️高脂血症人口は2000万人に

    ⭐️認知症人口は460万人、予備軍も加えると900万人に

    ⭐️毎年100万人が新たにがんにかかり、年間37万人ががんで命を落としています
    ※このデータは本が出版された2015年以前のデータです。

     毎年、このようなニュースが飛び込み大騒ぎしていますが、大半は歩かなくなったことが原因だと思います。
    沖縄県は1985年には、男女とも平均寿命第1位という長寿県だった。ところが2000年には沖縄県の男性の平均寿命は全国26位。2010年の調査では30位までに転落。65歳未満の死亡率はワースト1位になっています。
    女性の方は2005年まで平均寿命全国1位を保ち、2010年には3位のままですが、長寿のおばあちゃん達が平均寿命を引き上げているだけです。女性も65歳未満の死亡率は、2010年に全国最下位になっています。

    長寿ランキングから転落した大きな要因が、ファーストフードと車社会になって歩かなくなったこと。すべての問題は食事と運動です。食事と運動どちらが先かといえば、どちらも大事なのですが体を動かさなければお腹も空きません。いくらバランスの良い食事を摂っても、カロリーを消費しなければ栄養過多になってしまいます。だから、まず体を動かす。「歩く」ことが大事だと思っています。

    生活習慣病は歩くほどに改善する
    生活習慣病の代表は糖尿病や高血圧、脂質異常症です。

    糖尿病といえば、糖質制限食に取り組む食事療法です。高血圧で勧められるのが減塩食。脂質異常症の場合はコレステロールやカロリーの制限食でした。ただ生活を作るのは食だけではありません。食以上に大事なのがやはり「歩く」ということです。
    生活習慣病を早期発見するための「メタボ検診」は、私の出身医局である大阪大学第二内科で30年ほど前に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)という概念から誕生したものです。
    2008年からメタボ検診が全国で始まり7年程が経ちましたが、正直なところ十分な成果が表れていません。原因は食事の指導はされていても、運動の指導が十分に行われていないからではないでしょうか。

     肥満入院も食事と運動で成果
    私が30年前、研修医として働いていた頃、肥満入院の患者さんの主治医になったことがあります。体重が100 kg 以上ある人が入院され、カロリーを段階的に減らしていくことと自転車こぎの運動をやっていくわけです。そうするとみるみる体重が減って、4週間の入院期間中に数キロ以上減っていくのですが、同時に血糖値や血圧、コレステロール値、尿酸値も見事によくなるのです。私は痩せるってすごいな、生活習慣病がみるみる良くなっていくのに驚いたことを覚えています。
    血圧も同じで、降圧剤で血圧を抑えている状態というのは治ったとはいえません。薬に頼るのではなく、もし肥満であれば痩せる。痩せるには体を動かすこと、つまり「歩く」ことが欠かせません。

    ∅『認知症予防は計算しながら歩くこと』

    認知症の人は460万人にのぼり、予備軍も加えると900万人を超えるといわれています。これは糖尿病の患者数にも匹敵する人数です。特に80歳以上では、4人に1人が認知症といわれています。
    認知症が増えたのは、一つには長生きするようになったことが原因でしょう。ただ問題は年齢に比して認知機能が低下している場合です。

    「血管年齢」や「骨年齢」とよくいわれますが、同じように「脳年齢」が実年齢よりも著しく落ちてきたら問題です。仕事や家事をこなせなくなり、社会生活に支障が出てきて初めて認知症といわれるわけです。
    年齢相当以上に認知機能が低下してしまう認知症の人が増えているのは、生活習慣病の糖尿病が深く関係しています。糖尿病の人は認知症になるリスクは2倍。ちなみにタバコを吸っていると認知症リスクが2〜3倍になります。

  • 軽度認知障害の段階で予防する
    認知症を予防するには、認知症予備軍といわれる「軽度認知障害(MCI)」の段階で注目することがひとつです。そのまま何もしなければ5割の人が認知症に進むけれども、気をつければまだ後戻りできるという段階。この段階で気がつけば、自分で認知症を予防することができます。

    何も症状のない段階から、MCIを早期発見する「MCIスクリーニング検査」が、アルツハイマー病の原因である「アミロイドβ」が脳内にたまっていくときに関わっている3種類のたんぱく質を調べることで、MCIのリスクをA〜Dの4段階で評価するというものがあります。検査は採血のみで2〜3万円程度で受けることができるそうです。

    認知症予防は計算をしながら「歩く」こと
    MCIスクリーニング検査を受けて、「このままいくと認知症になりますよ」と判定された場合。予防する効果が明らかになっているものが二つあります。
    一つは、シロスタゾール(商品名:プレタール)という脳梗塞発症後の再発予防に使われる薬ですが、認知症に対しての保険適応はありません。
    もっと大切な予防方法は、実は「歩く」ことなのです。正確には、計算をしながら歩くことです。これは、日本発のエビデンスです。ただ計算をしながら歩くだけ。頭を使いながら歩くということがポイントです。誰でもどこでもいつでもできる、こんなにも簡単なことで認知症を予防できるのですから、やらない手はありません。

    認知症が始まっている場合の治療も「歩く」こと

    認知症がすでに始まっている場合。食べたことを忘れて食べ続け、ブドウ糖依存症のような状態になってしまいます。食事も大事なのですが私の経験上、食事で認知症を治すのは難しいです。予防と同じように、認知症の治療でも実は「歩く」ことが一番の治療です。
    ただ認知症の人は、歩いている途中で自分がどこに向かっているのか、どこにいるのかわからなくなって迷子になりやすいので、介護者も一緒に散歩をするといいでしょう。一緒に散歩をすることは、認知症の人だけでなく、実は介護者にとっても「介護うつ」を改善し、お互い気持ちが上向きになるメリットがあります。

     「歩く」と脳内ホルモンが増える
    歩くと脳内ホルモンの「幸せホルモン」のセロトニンが脳内で増えます。

    例えば、腕を組んで、手をつないで肩を寄せて歩くと、オキシトシンというホルモンの分泌も高まります。これは愛情ホルモンともいわれていて、安心感や幸福感、信頼感を高めてくれます。だから認知症の人ほど、誰かが付き添って自由に歩かせてあげなければいけません。
    病院や施設では、自由に外出して歩けないので、ただボーッと座ったまま1日が過ぎていく。そんな状態では認知症は悪くなるばかりです。施設に入ったあとも毎日「歩く」ことが大切です。認知症の人こそ、誰よりも歩かなければいけません。

  • 歩くと未来が変わる!「歩く」ことで寿命も延びる

    「歩く」ことはいろんな臓器にとって良いことばかりです。脳が若く保たれ、認知症になるリスク、がんになるリスクも減らせます。だから、当然寿命も延びます。

    介護が必要となる原因で一番多いのは脳卒中で、次が認知症です。脳卒中という病気は、血管が老化して動脈硬化が進行し起こるものです。

    そして、血管の老化は加齢も一因ですが、何より血管の老化を早めるのは高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満など歩かないことで起こる病気です。

    認知症もあまり歩かない人の方がなりやすく、よく歩く人はなりにくい。要介護になる二大要因も「歩く」ことで防げるのです。

    「歩行」は脳の癖を変える

    自分の思考の癖というのは、変えたいと思ってもなかなか変わらないものです。思考の癖とは脳の癖。それを変えようと思ったら、薬でもなく食べ物でもなく、「歩く」ことが一番です。一番簡単で最も近道だと思います。

    毎日歩いている人は、脳が健康になる。脳が変われば思考の癖が変わって、人生が豊かになります。

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