学ぼう① 第1回 世界長寿サミット」
「元気に長く生きるために」
世界長寿サミットが伝えた4つのヒント
京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器・腎臓内科学 副学長 教授
「第1回 世界長寿サミット」実行委員 的場聖明さん
「私の生き方と学び」で紹介しました「第1回 世界長寿サミット」では、老化生物学、ライフスタイル医学、老年科学、さらに地域づくりや政策までを視野に入れた多分野横断型のセッションが行われました。共通して強調されたのは、「健康長寿は、医学だけでなく、生活習慣や社会環境、文化を含めた学際的かつ国際的な視点から取り組む必要がある」という考え方です。
⭐️エピジェネティック時計による加齢の測定
エピジェネティック時計とは、DNAのメチル化という変化をもとに、実際の体の老化度=生物学的年齢を測る方法です。研究者スティーブ・ホバース氏は、100歳を超える長寿者の子どもは生物学的に若い傾向があることや、老化の進み方は臓器ごとに異なることを示しました。
また、喫煙歴などを加味した「GrimAge」により、病気や死亡リスクをより正確に予測できる可能性も示されました。生活習慣の影響は一様ではなく、肥満は老化を進める一方、オメガ3の摂取はわずかに老化を抑える結果が報告されています。さらに、文化や生活環境によって生物学的年齢が左右されることも明らかになり、老化が単なる年齢の問題ではないことが示されました。
⭐️オートファジーと老化の細胞メカニズム
細胞レベルの老化機構として注目されたオートファジーは、細胞内の不要になった部品を分解・再利用する「細胞の掃除機能」で、大阪大学の吉森保先生は、この働きが健康維持と老化制御に不可欠だと説明しました。
近年では、老化を進めるタンパク質「ルビコン」が年齢とともに増え、オートファジーを妨げることがわかってきました。特に神経細胞では、ルビコンを抑えることで寿命や運動機能が改善する可能性が示されています。細胞レベルでの仕組みの理解が、将来の健康寿命延伸につながることが期待されています。
⭐️イタリアで進められている国家研究プロジェクト
ステファニー・バンディーニ氏は社会的な視点から、イタリアの国家研究プロジェクト「AGE-IT」を紹介しました。地方や山間部では、人口減少やインフラ不足が進む一方、伝統的な食文化や人とのつながりが高齢者の健康を支えています。地理情報システム(GIS)やAI、IoTといったデジタル技術を活用することで、医療や介護へのアクセスの課題を可視化し、地域に合った対策を講じる重要性が示されました。高齢化は負担ではなく、社会を再設計する機会だという視点が印象的でした。
⭐️日本人特有の長寿型腸内フローラ
腸は免疫細胞の約7割が集まる人体最大の免疫器官で、日本人の長寿には、長い歴史の中で培われた特有の腸内フローラが関係していると考えられています。近年、健康長寿には運動や生活習慣に加え、腸内フローラが健康寿命を大きく左右することが明らかになってきました。京都府立医科大学大学院の内藤祐二先生らは、京丹後市の健康長寿の要因が腸内フローラにあるのではないかと考え、高齢住民の協力を得て研究を進めています。
その結果、京丹後市の高齢者は京都市民に比べ、免疫を調整する酪酸産生菌が多いことが分かりました。2018年の調査では、インフルエンザや肺炎で入院した人は1.6%と少なく、高い免疫力が示されています。
その背景には、食物繊維を多く含む多彩な食材を継続して摂る食生活があり、腸内環境の良さが健康長寿を支えていると考えられます。
⭐️今後の展望と課題
今後の課題として研究者が共通して挙げたのは、「世代を超えて健康長寿を目指すこと」です。その知見を地域や市民生活にどう生かすかが、これからの大きなテーマとなります。










