あなたの『終の住処』はどこですか?!〈連載18〉
認知症になる事前対策に『家族信託制度』がある!!
一般社団法人家族信託普及協会 事務局長 松本康男さん
一人暮らし、認知症になる前、障がいのある方に最適!
親が認知症になると定期預金の解約や不動産の売買などができなくなり、親の財産から介護費用を捻出することが簡単にはできません。一人暮らしの方が認知症になったり、突発的な脳梗塞で意思判断ができなくなるケースもあります。
本人が自分で物事を判断できなくなったときに、信頼できる第三者(成年後見人と呼ばれる)が財産管理や生活全般のサポートをする成年後見制度がありますが、より自由度のある制度が『家族信託制度』です。
※どーもで2018年5月号に特集しました『家族信託制度』について、一般社団法人家族信託普及協会の事務局長の松本康男さんにその仕組みについてお伺いした内容を紹介します。
自分で実践して制度の良さを体験した
一般社団法人家族信託普及協会は2014年に設立。 松本さんは『家族信託制度』の存在を知り、まず自分で実践して制度の良さを体験した一人 でした。
「両親は大阪で、私と弟は東京で暮らしています。数年前、母が道で転倒して頭 を打ってそのまま認知症になってしまいました。父が一人で母を介護しなければならず、高齢のため、大変な日々を送っていました。大阪で生まれ育った父は、私たちのいる東京に移り住むのも抵抗があり、このまま将来はどうなるのか大変不安でした。ある時『家族信託制度』を聞き、父と私とで話し合う機会を持ちました。話し合ううちに、これまで聞かされていなかった財産のことや、父の今後の希望などを聞くことができ、その希望は私がしっかり叶えることを伝えると、父は非常に喜んで安心してくれました。家族信託制度の活用を検討することで、親子の間で信頼の気持ちを確かめ合えたことが良かったと思います」
家族信託普及協会では、家族信託の相談に乗る専門家向けに様々な研修を行い、その人たちがお客様の相談に乗り手続きを行っています。
『家族信託制度』は 2007年に使いやすい制度に簡素化された
家族信託制度』は2007年の法改正で使いやすくなりました。相続をめぐるトラブルや認知症が増加する中、家族の資産を守り、有効に活用できる制度と して注目されるようになってきました。
最近では弁護士・司法書士・行政書士といった専門職や、保険の営業職、不動産関係の人たちが、仕事との関わりから『家族信託制度』について勉強するようになり広がってきているようです。
『家族信託制度』は相続対策と認知症対策ができる
①柔軟な財産管理と運用が家族でできるようになる
認知症になった場合、相続税対策や不動産の運用を信頼する家族が代わりに行うことができる。
② 遺言書ではできない二次相続先の指定をすることができ 例えば、「財産を受け継いだ後妻が亡くなったあと、後妻の兄弟に行く財産を前妻との子に相続させる」二次相続先の指定が可能になります。
③ 共有不動産によるトラブルを事前に防げる 不動産の共有者の権利や財産的価値を平等に保ちながら、家族などの受託者に管理処分を任せることができます。 また、不動産の流通税を大幅に削減することが可能です。
一度申請すると止められない『成年後見制度』
親が急に認知症などで意思判断ができなくなると、生前贈与や土地・マンションなどの相続対策ができなくなります。しかも定期預金などは本人でなければ解約できません。銀行は定期預金を解約するためには制度上、後見人をつけてくださいといいます。しかし、いったん『成年後見制度』を利用してしまうと親が亡くなるまでやめることはできません。
後見人にかかる費用は財産にもよるでしょうが、月2万円として年間24 万円。10年間で240万円を後見人に払い続けなければなりません。
また、『成年後見制度』は「判断能力が低下した本人の財産を守る」のが目的ですから、基本的にお金の出し入れは全て後見人の監督の下で行うことになります。不動産や株式への投資などはもちろん、本人の資産を損なう可能性があることは基本的にできません。
『家族信託制度』の仕組みのメリットは?!
『成年後見制度』よりも柔軟な資産の管理や運用が、家族間で行うことができます。信頼できる家族に財産の管理や処分の権限を託すことで、親(委託者)が望む範囲であれば、自由に資産活用や運用もできます。もちろんその資産は介護費用等、親のために使うことが前提です。 契約そのものも途中で「変更できる」「変更できない」を決めることができます。
遺言と違って、家族の中で話し合い、納得しあってから契約内容を決めるので、後々のもめ事が起こる余地の少ないところが優れている点です。
『家族信託制度』を説明しますと、財産を託すお母さんが「委託者」、信託契約をして財産を託され、管理・運用・処分する人を「受託者」、預けた財産から得られた利益を受け取る「受益者」の流れです。
委託者が財産を「誰(受益者)のために」「どんな目的で」「誰に」託すかを決めて、 信頼できる相手(受託者:家族)と契約し実行してもらいます。信頼できる相手(受託者:家族)と思っていても、将来信頼を裏切る可能性があると判断すれば「信託監督人」(弁護士や司法書士、税理士などの専門家)を立てて、受託者を監督してもらうこともできます。
『家族信託』はいつ頃契約すればよいのか?
自分の意志がハッキリしている間でないとダメです。これは病院などの認知症の診断基準とは関係なく、介護認定とも関係ありません。契約書を作成する公証人、そして弁護士や司法書士などの専門家が本人との面談の中で判断します。
家族信託制度』の契約方法
『家族信託制度』の相談、手続きはどこで?
よく「信託銀行ですか」と聞かれますが、信託銀行は銀行に財産を管理してもらい、銀行が報酬を受け取るという仕事をしている会社です。
『家族信託制度』は家族の間で契約を結びますので、第三者に対する報酬は発 生しません。通常、専門家(弁護士、司法書士、税理士)などに相談して手続きをしてもらいますが、最初から専門家に相談しにくい方も多くいらっしゃいます。そこで、私ども家族信託普及協会では、一般の人たちが相談しやすい、不動産関連や保険関係、介護職の方々などをコーディネーターとして養成しています。そのコーディネーターに相談して、形が決まれば契約にあたって専門家を紹介してもらうようにしています。
コーディネーター(+ 専門家)への費用は財産の0.7% 〜1%程度が目安です。不動産は固定資産税の評価額で計算されます。もちろん家族構成や信託する財産
が複雑なケースはさらに高くなります。その他、公正証書を作成する費用や不動産登記を行う費用などは別に必要です。
障がいのある子にも『家族信託制度』が最適
委託者」のお父さんが「受託者」を親戚にお願いします。当初の受益者はお父さん、障がいのあるお子さんを第二受益者と設定します。お父さんが亡くなり、障がいのあるお子さんの面倒が見られなくなっても、受託者は、お父さんの願いを尊重し、障がいのあるお子さんが安心して生活を送れるよう、資産を管理し、使用することができます。そして最後に障がいのあるお子さんが亡くなった場合、残った財産をヘルパーステーションや施設などを指定して、お世話になった恩返しをすることもできます。
共有名義で不動産が凍結状態になるケース
おじいさんが亡くなって、お父さんが家を引き継いだのですが、相続の手続きをしないままお父さんも亡くなってしまいました。その家の所有者はお父さんの兄弟とその子どもが共有していることになり、凄い人数になります。仮に15 名が共有持ち分権者だとすると、その家を売却したり貸すためには15名の承諾が必要になります。すぐに同意できればいいのですが、遠い従兄弟はどこにいるのかわからない。誰がその手続きをするのかといったことになり、さらに放置すると共有者は孫も含まれてきます。不動産が共有名義になってしまうと、その不動産はもはや誰も手を付けることができない凍結状態になってしまいます。
そこで『家族信託制度』を利用すると、「不動産を共有にしない対策」あるいは「既に共有名義である不動産を再び活用する」ことができる可能性があります。
『家族信託制度』で資産継承も決められます
例えば、先祖代々の財産を子孫に引き次いでいく場合に、相続先を指定することができます。
◎すでに父が他界していて、次に母が亡くなった場合には、民法の法定相続の 分配では、相続人が長男と次男の二人ならば、それぞれ50%ずつ相続します。
◎その後、次男が亡くなりました。しかし、次男には子供がいません。その場合には、財産はすべて次男の妻に相続されます。
◎そして次に次男の妻が亡くなると、子供はいませんので、その財産は妻の一 族(兄弟姉妹や親など)に相続されます。長男夫婦には子供(母からすると孫) がいたとしても、次男の妻が特別な遺言書を書かない限り、長男の子(母から 見ると孫)に財産は相続されません。
『家族信託制度』では、契約書にあらかじめ指定をしておけば、将来次男の妻 が亡くなった時に、その財産は長男の子どもに引き継がせることができます。 これを『受益者連続』といいます。
リバースモーゲージ 住み続けながら不動産を現金化できる!
老後の生活費が足りない、病気でお金が必要だけれど現金がない。でも自 分の家はあるといった人が持ち家を担保として、自治体や銀行から融資を受 けて、年金という形で受け取る制度が「リバースモーゲージ」です。自分の家 に住み続けながら借りたお金を生活費や入院費、レジャーにあてることがで きます。
借り入れる金額は自宅の評価額以下(物件の3〜7 割程度)で、生きている 間に返済する義務がなく、亡くなった後に遺族が手続きをして担保不動産を 売 却 し 、その代金で一括返済します。金融機関によっては、残された配偶者が住み続けるには一定の条件がある場合もあります。子どもがいない夫婦の場合、死後家は不要という世帯であれば、老後生活のために現金を借りることでゆとりある生活を送ることができます。
取り扱う銀行などによって融資条件は異なりますが、例えば東京スター銀行 の場合、55 歳からで一戸建ては全国、マンションは1都 3 県と大阪市が対象。 担保評価額数百万円以上と低い条件を提示し、最高1 億円まで融資が可能 です。また、毎月の支払いは利息分のみ。さらに、預金連動型なので、預金連 動対象預金残高と同額分には、利息の支払いもありません。
国や自治体が取り扱う「リバースモーゲージ」の場合、上限金利は3〜5%と 決められていますが、民間の金融機関で借りた場合は変動金利で上限金利 が定められていないので、金利負担が膨れあがるリスクも考えておきましょ う。そして、担保評価額は 1 年から 3 年ごとに見直されるので、担保割れに なることや契約者が想定より長生きした場合には融資が打ち切られること があるので注意が必要です。 取り扱う金融機関では、年齢や担保評価額、借り入れ限度額などの条件が異 なるので、比較検討しましょう。









