あなたの『終の住処』はどこですか?!〈連載6〉

在宅療養生活のキーマンは『訪問看護ステーション』
24時間365日対応してくれます!!
一般社団法人全国訪問看護事業協会 髙砂裕子副会長/阿部智子常務理事
全国訪問看護事業協会の活動平成7年7月7日に設立した全国訪問看護事業協会は、全国15000カ所ある訪問看護ステーションの約6割の事業所が加盟し、訪問看護事業に関する全国的な情報の拠点として、資質の向上を研修会などで図り、適切な訪問看護事業の発展に寄与する活動をしています。協会として団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題や2040年問題(団塊ジュニア世代が65歳以上)における在宅療養者の「重度化・多様化・複雑化」に、24時間365日対応する訪問看護ステーションの整備が迫られているそうです。訪問看護の役割について髙砂副会長(左)と阿部常務理事にお聞きしました。
訪問看護とステーションが支援するサービス内容
病状や療養生活を専門家の目で見守り、適確なアセスメントに基づいたケアとアドバイスで、自立した生活が送れるよう支援するサービスです。
◉緊急時の場合にも対応します 24時間365日相談に応じ、急変時にはかかりつけ医と連携し訪問、対応します。
◉医療機器をつけた方の療養生活を支えます 経管栄養、在宅酸素、吸引、在宅での点滴注射、人工呼吸器などの医療処置が必要な方の在宅療養を支援します。
◉自宅への退院を支援します 入院中から病院と連携して、在宅生活に向けたスムーズな移行ができるよう 相談や支援をします。
◉安らかな死・ターミナル期を支えます 住み慣れた家で最期まで過ごせるように、医師の指示のもと痛みの管理や症状緩和などにも適切に対処し、心のケアも行います。ご家族とともに看取りをします。
◉医療と介護の橋渡しをします 在宅ケアサービスの使い方の紹介や介護保険の申請・更新のお手伝いをします。
◉介護予防や機能回復のお手伝いをします 病状の悪化や寝たきりになるのを防ぐほか、拘縮予防や機能の回復、嚥下訓練などを行います。ベッドや車イス、介護用品の相談を行います。
◉医療保険・介護保険の双方に対応できます 医療保険・介護保険の両方のサービスが同じステーションで引き続き受けられます。必要な場合は、他のステーションや医療機関の訪問看護を併用することもできます。
◉ご自宅以外でも受けられます 地域にある高齢者住まいやグループホーム、特定施設、特別養護老人ホームのショートステイなどにおいても、医療と介護の連携を強め、一定の場合にサービスを提供します。
本人がどう暮らしたいかを明確にすることが一番!
病院は人生会議で意思に沿ったサービスを検討する
この連載で『訪問診療』するクリニックが増え、都会においては在宅療養の心配はなく、むしろ競争も激しくサービスの格差が出ているそうです。訪問診療を支えているのが訪問看護であり訪問介護との連携も重要です。特に訪問看護は医療的処置も行うので、在宅療養のキーマンと言えるでしょう。
病院から退院する時に在宅か施設かを選択するには、「あくまでも本人がどう暮らしたいかに尽きる」そうです。提供されるサービスは表(次の頁)に示されており、初めての利用者には内容説明があり、利用者自身もどこまでのサービスが受けられるか確認すべきです。
訪問看護ステーションには看護師以外にも准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がいる場合があり、リハビリなどを希望することもできます。また訪問看護は在宅でも施設(病名や施設の種類によって訪問できる制限があります)でもサービスを受けることができます。
「仮に入院されていて退院のメドがつけば、できるだけ早く自分がどこでどのような暮らしをしたいのか、意思表示を主治医や看護師に伝えるのが良いでしょう。今はACP(アドバンス・ケア・プランニング)・人生会議が開かれ、病状によって訪問看護と介護支援も必要なのか、独居か家族がいる場合によって在宅か施設かが話し合われ、できるだけ本人の意思を尊重した暮らしが相談されます」
しかし、実際に家に帰ってみなければわからないことがたくさんあるようで、家にクーラーがなかったり、ベッドが置けない状況もあるようです。退院スケジュールを立て訪問看護ステーションやケアマネ、訪問診療のクリニックに連絡を取りながら進められます。
医療保険利用と介護保険利用の違いは?!
医療保険利用は疾病等によって決まっている!
本人が希望する生活も、病状によって利用できる医療保険のサービスと介護保険で利用できる介護サービスは自ずと決まっているそうです。
「厚生労働大臣が定めた疾病(がんやパーキンソン病他、人工呼吸器を使用している)によって医療保険のサービスが使えることが決まっています。その場合は、医療保険で週3日を超える訪問看護も利用できたりします。
ケアマネさんの中には、自分たちが決められると勘違いをしておられる方もいますが、私たちが決めるのではなくて制度の中で決まっています」
最近では在宅への訪問ホスピスや看護小規模多機能型居宅介護という施設で、訪問看護のサービスが利用できます。
訪問看護ステーションはどのように選ぶ?!
厚労省の『情報公表システム』を参考にする!
退院時に利用するサービス事業者を、病院は中立公平に住まいの近くの事業者や、経験値の中でダメな事業者を省いて紹介しているようです。利用者にとっては初めて利用するサービスの質まで知りたいところですが。
「私たちもケアの質まではわからないのが問題だと思います。役所や地域包括支援センターに相談をして、例えば、24時間やっている事業者やリハビリをしてくれる事業者を紹介してもらう。また夜中熱が出た時に相談に乗ってもらえるか、土・日も状況によって来てもらえるかなど、自分が聞きたいことはそこで聞くといいですよね。中には、24時間やりますと謳っていても、夜中電話すると出なかったり、救急車を呼んでくださいと返事するところもあるそうです。利用してみて事業所の対応や訪問担当者のケア内容などに納得いかなければ事業所を替えることもできます。事業者を変えてみるとサービスの違いもよく分かります」
厚労省が行っているHP『介護サービス情報公表システム』で、事業者を検索すれば看護師が何人いて、どのくらいの経験があるのかもわかるようなので、それを参考にするのもいいでしょう。
在宅で医療保険と介護保険をフルに使えば
充実したサービス量になります!!
介護保険制度ができた頃は実費を安易にとってはダメとなっていたのが、最近では制度枠を超えた分は実費が許されるようになっているそうです。しかし、重度の場合でも医療保険と介護保険サービスはかなり使えるようです。
「介護保険の要介護5ですとかなりのサービスが使えますよね。施設なら今は月20万円ぐらい必要です。医療保険と介護保険と両方合算して高額医療費の請求をすれば、在宅では20万円かからないですからね。(ご本人の所得等にもより異なります)
例えば、がんの末期の場合は、医療保険で訪問看護を1日3回(緊急対応含む)まで使うことができます。ヘルパーさんも1日3回来てもらうと充実した看護ですよね。
ただ、医療保険の場合は1週間のうち7日間訪問看護ステーションを利用する場合は3カ所使うことができますが、1日3回利用する場合には1つのステーションだけ使わないといけないことも、ケアマネさんには知っていただきたいです。そういう意味でいい医療制度だと思っています」
認知症独居でも在宅で暮らすことはできます!!
他職種と連携して在宅で支援します
阿部さんの事業所では認知症独居の方にサービスを提供しているそうです。
「訪問看護と介護の連携で1日3回入っていますが、その方はトイレの場所を混乱してしまい玄関でおしっこをしてしまうことも多く、朝行くとまず掃除から始めています。
他職種の人とも連携して、認知症の方がどういう風に暮らしていきたいかを確認しながら、家族とも話し合って工夫すれば、施設に入らずに在宅で生活できるんじゃないかというケースもあります。みんなで考えればいいと思います」
地域でのネットワークを作っておく必要があります!
災害時やコロナ禍で利用者を守ために助け合う
介護保険が2000年にスタートして、訪問看護も訪問介護の質のレベルが上がりサービスも充実しているようですが、10年前に比べると在宅に家族がいないケースが増えているそうです。震災やコロナ禍の特別な状況下では、家族に委ねることもできず、サービス提供者同士のネットワークが必要だといいます。
「従来は他のステーションとコミュニケーションをとることもありませんでしたが、現在では他のステーションにお願いするといった助け合えるような、地域のネットワークを作っておかなければならないと思いました。
10年ほど前は在宅に家族がいましたが、今は家族も働きに出掛けていません。私たちがコロナなどで1週間お休みをさせて欲しいということは言えないわけです。私たちが行かないと、呼吸器をつけている人もいますから、普段から必ず2カ所のステーションが入って、どちらか何かがあってもお願いできるようにしておく。自分たちに何かがあった時に、利用者さんをどう守っていくか、守れるかという仕組み作りが必要です」
核家族化で独居が増えることで、訪問看護や訪問介護のサービス提供はより重要になっていくのです。