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特集 認知症も“早期発見に勝る治療なし”

認知症のサインを見極め予防する!

「おくむらメモリークリニック」脳神経外科医 奥村あゆみ院長

私たちは高血圧症や糖尿病を医師から告げられると、生活習慣を改めようと思いますが、「認知症だけにはなりたくない」と思っている方は多いようです。それは認知症になると自分の意思がコントロールできない、元の正常な状態には戻らない、家族や周りの人たちに迷惑をかける、などが挙げられるからではないでしょうか。しかし、最近の医療では認知症になる要因なども解明され、早く気付いて予防すれば改善できることがわかってきました。

今回、「ボケない技術」の著書である奥村歩先生は「認知症もがんと同じで“早期発見に勝る治療なし”。がんと異なる点は家族や友人らが、本人の行動を観察するだけで早期発見できます。正しく理解し、適切に対応すれば怖くありません」と話しています。その認知症のサインと予防方法についてお聞きしました。

全国からの来院される要因は10万人の実績と1日で診断できること!

2008年に岐阜で開院したおくむらクリニックは「もの忘れ外来」を設置。これまでに10万人以上の脳を診断してきた実績があり、院内には脳神経外科医に老年内科医、精神科医の5名の専門医が1日100名を検査診断しているそうです。

全国からの受診が多いのは診断実績だけでなく、通常2、3カ月かかる検査診断を1日でできること。認知症と診断すれば地元の「もの忘れ外来」の病院に引き継いでもらうそうです。

奥村院長は「ボケてるかなと思ったら、普段から身体状態を知っている“かかりつけ医”に相談して、もの忘れ外来を受診してください」と話しています。

 🌟認知症サイン①:5つの代表サインを見逃さないで!!

  • 朝(連続)ドラマを見なくなった
  • 同じことを何度も言ったり聞いたりする
  • 旅行など、印象的な出来事を覚えていない
  • 鍵や携帯電話を、たびたびなくすようになった
  • 井戸端会議やゲートボールなどの外出が減った

🌟家族や周囲は『認知症サイン』を見逃さないで!

 おくむらメモリークリニックの奥村歩院長は、前ページで認知症に気づく代表的な5つのサインだけでなく、家族や周囲が気づくいくつかのサインを挙げています。

「認知症の“もの忘れ”の特徴は、昔の出来事は覚えていても、最近の出来事ほど忘れやすいことです。30分前に見たり、聞いたり、体験した『近時記憶』が、脳の海馬(脳に記憶するところ)が萎縮して、脳に刻み込まれなくなります。そのため、最近の旅行や孫の結婚式など、印象的な出来事でさえ忘れることがあります。これは、人や物の名前がすぐに出てこない、加齢による“もの忘れ”とは少し違います。

認知症が始まると『朝ドラ』や連続ドラマを見なくなるのは、前回のストーリーが覚えられない、あらすじが分からなくなるため、つまらなくなって見なくなるのです。そして、今まで積極的に外出していたのに、家に閉じこもるようになるのも要注意です。それは井戸端会議での“おしゃべり”も連続ドラマと同じで、近時記憶の衰弱によって、世間話のあらすじが曖昧(あいまい)になり、人付き合いが苦手になってしまうからです」

🌟自分のプライドを守るために現れる行動・心理症状の『BPSD』

『BPSD』とは認知症が始まった方が“もの忘れ”などの中核症状によって、生活が不自由になり、ストレスを感じることによって現れる行動・心理の症状です。これはご自分のプライドを守るために現れる心理症状のことです。

例えば、テレビドラマを見なくなった場合は『最近のドラマは面白くなくなった』とか『忙しくてテレビなんか見る暇がない』などの言い訳をします。そして、元々温和だった人が怒りっぽくなったり、逆に元気だった方が無気力になったりします。
このようなサインを家族が認めた場合は、まずは「かかりつけ医」に相談します。そこから、認知症専門医のいる医療機関に紹介され検査を行い、認知症のタイプ別診断や最善の対応方法などが計画され、治療へとつながっていきます。

認知症サイン②:周囲の気づき『視空間認知

視空間認知とは対象の形や自分との位置関係を認識する脳機能のことです。
①着替えがうまくできなくなる
②道具(スマホやリモコン)がうまく使えない
③道に迷う
④車の運転が苦手になる

認知症サイン③:周囲の気づき遂行実行機能

頭に思い描いた動作を段階ごとに実行する脳の働きのことです。
①作り慣れた料理が苦手になる
②部屋が散らかる
③化粧や身だしなみが苦手になる
※家族にチェックしていただくことは、まず部屋が散らかっていないかゴミ屋敷ではないけれど生理整頓することもこの機能です。
そして、冷蔵庫の中に賞味期限切れのものがないか。同じ商品がいっぱい入っていないかチェックしてください。

🌟認知症とは 家族や社会支援が必要になる状態のこと!

🌟認知機能を低下させる病気は複合的に重なる

認知症の原因となる病気には、アルツハイマー型認知症が67.6%を占めています。

アルツハイマー病は1906年にアルツハイマー博士が、脳にアミロイドベータ蛋白質ができて、それが悪さをして神経細胞を破壊していることを突き止めました。若年性認知症の多くはアルツハイマー型が原因だといえます。

高齢者の認知症というのは一つの病理だけということはまずありません。脳血管疾患や脳腫瘍、甲状腺機能低下症やうつ病、外傷で頭を打つ、感染症、水頭症など、いくつかの病理が複合的に重なり、脳の働きが低下して今まで通りの生活が不自由になる。『家族や社会のサポートが必要になる状態を認知症』だといいます。

 

🌟急にボケた場合は身体に異常があり日常の変化を見る!

いつも患者の日常の状態を見ている「かかりつけ医」ならアルツハイマー型認知症であれば、私たち専門医に紹介しなくても診断できます。そして、介護保険制度を申請して介護サービスのパイプを作り、適切な薬を使うだけで9割がうまくいきます。

最近、急にボケた方は、例えば、この夏に急にボケた場合は脱水症状がなかったか。冬場でも熱の出ない肺炎からボケたというケースもあるので、身体は大丈夫なのか低栄養状態になっていないか。また、うつ病や精神的なことで急におかしくなった場合は、ご主人を亡くして半年後に急にボケたという症状が考えられます。

 

🌟一人暮らしの認知症への疑いは地域包括支援センターへ

家族が身近にいればおかしいなと感じて病院へ連れて行きますが、一人暮らしの場合には、判断しにくい場合があります。

「昔から住んでいる人が多い地域では、近所の人や民生委員の方が訪問して、『健康診断だから一緒に行きましょう』と理由をつけて検査してもらいます。残念ながら認知症が始まっているようだと地域包括支援センターに連絡を入れて、身寄りがあれば連絡を取って介護サービスや施設の方にお願いします。また、前頭側頭型認知症(ピック病)の場合はゴミ屋敷になったりします」

 

認知症を予防する方法認知予備力』を強くする!

70歳でも遅くない! 40歳でも早くない!・・・以降はどーもどーもの冊子をご覧ください

 

 

 

 

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