48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

知ってますか? 認知症 (41)

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

薬で進行を穏やかに

ワクチン療法も開発中

 認知症に対して使われている主な薬を取り上げてみたい。

塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)は、アルツハイマー病の原因を治療するものではないが、病気の進行を緩やかにする効果が期待できる。

作用は、シナップスと呼ばれる脳の神経細胞同士のつながりを改善することであって、神経細胞を再生したり「老人班」と呼ばれる脳の異常な変化を消したりするものではない。従って脳の萎縮が進行すると効果はなくなる。

塩酸ドネペジルを服用してから、物忘れや判断力低下が改善して、家事などがスムーズにできるようになった例がある。効果が期待できるのは数ヶ月から1,2年と言われている。できるだけ早い時期から治療をはじめることが大切だ。

5mgを1錠、朝食後に服用するのが基本だが、現在は10mgまで増量できるようになった。

私の経験では副作用はあまりみられないが、ときに下痢・嘔吐などの胃腸症状が出ることがある。しかし興奮・不安・うつ状態などの精神症状がまれに出ることもあるので注意が必要だ。

認知症の介護が大変なのは、幻覚・妄想・興奮・暴力・徘徊など、いわゆる「周辺症状」が出ている場合だ。認知症の人の世界を理解して、その世界に合わせて対応するのがよいのだが、現実的には介護者がこれらの症状に振り回されて疲労困ぱいする場合が多い。

激しい症状に対しては統合失調症などに使われる向精神薬が、また不安・緊張・不眠などに対して抗不安薬・睡眠薬が使われることがある。しかしパーキンソン症状や意欲低下、ふらつき、食欲低下といった副作用が見られることが少なくないので注意が必要だ。

 幻覚・攻撃性・興奮などの激しい症状に対して、漢方薬の「抑肝散」が使われることがある。特に「レビー小体型認知症」の幻視に対して副作用が少なく、効果があるという報告がある。

 それ以外に、脳の血流や脳神経細胞の活動性を高める目的で、脳循環・代謝改善薬が処方されることもある。

これから登場が予想される新薬としては、塩酸ドネペジルとほぼ同様の作用をもつ臭化水素酸ガランタミン(内服薬)、リバスチグミン(貼り薬)がある。脳細胞を保護する塩酸メマンチン(内服薬)は治験中だ。

脳に蓄積し、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の老廃物「ベータアミロイド」を取り除くワクチン療法も開発中で、将来期待されている。

関連記事