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知ってますか? 認知症 ②

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

身近な人に強く出る症状

それは信頼されている証拠

「私のいうことは一切聞かず、ひどい言葉で私を非難する義母が、よその人に対してはしっかりした対応をするのです。わざと私を困らせているに違いありません」と訴える介護者は非常に多い。

認知症の人は、よく世話をしてくれる介護者に最もひどい症状を示し、時々会う人や目上の人にはしっかりした言動をするのが特徴である。このことが理解されないため、介護者と周囲の人との間に認知症の理解に深刻なギャップが生じて、介護者が孤立する。

同じ家に住んでいても朝夕しか顔を合わせない息子に対してはしっかりした言い方をするので、介護が大変だという妻に対して、「おまえの言うことは大げさだ」といって、夫婦の亀裂を決定的なものにしたケースもある。

逆に、この特徴が理解できて、夫から、「大変だね。いつも世話をしてくれてありがとう」といわれて、「気持ちが軽くなった」と話す介護者も少なくない。

医師や看護師、訪問調査員などの前では、普段の状態からは想像できないほど上手に応答するので、認知症はひどくないと判断されてしまう。介護者は、専門家でさえ本当の認知症状態が理解できないのだと思い、絶望と不信に陥ってしまう。

ところで家族だけでなく、身近な存在となったヘルパーに対しても、この特徴が当てはまる。「ヘルパーが大事なものを盗んだ」といい始めたら、この特徴を思い出してほしい。

それでは、なぜ認知症の人はこのような「意地悪」ともとれる言動をするのだろうか。

私は次のように考えている。認知症の人は介護者に嫌がらせしているのではなく、子供が最も信頼している母親に甘えて困らせるように介護者を絶対的に信頼しているから認知症の症状を強く出すと考えるべきだと。

介護者が普段感じていることと、正反対である。このことがわかっただけで、介護者の認知症の人に対する気持ちが変わってくる。

よく考えれば、私たちも、自分の家の中と他人の前とでは違った対応の仕方をするものだ。よその人に対しては体裁を整えて対応している。認知症の人と同じことをしているのではないか。自分も相手も同じ立場だと理解できた時に初めて、相手にやさしくなれるのではないだろうか。

この特徴を知って気持ちが一変したという経験をもつ介護者は数多い。認知症の介護の第1歩は正しい知識から始まる。

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