困った介護 認知症なんかこわくない①
川崎幸クリニック 杉山孝博院長
介護の中で一番やっかいなのは「認知症」でしょう。不可解な言動や行動が理解できず、心身ともに疲れ切ってしまうからです。この認知症の方の診療を永年、続けておられる杉山孝博院長(川崎市:川崎幸クリニック)に、認知症の言動や行動パターンについて解説していただきました。
これを読めば、認知症の理解を深めた対応ができ、いい関係を保ちながら介護にあたることができると思います。認知症の原因から、介護家族のたどる4つの心理的ステップ、認知症をよく理解するための8大法則1原則、上手な介護の12ヶ条について連載します。
認知症とは・・・「生活障害」
「認知症」は以前は「呆(ぼ)け」といわれていましたが、京都市・盛林診療所三宅貴夫院長は「一度獲得した知的機能(記憶、認識、判断、学習など)の低下により、自己や周囲の状況把握・判断が不正確になり、自立した生活が困難になっている状態」と定義されています。
つまり、自立した生活ができていた人が、物忘れがひどくなり、適切な判断力、推理力などの知的機能が低下したため、周囲に迷惑を起こす言動が出てきて見守りや援助が必要になった状態です。「生活障害」と言うこともできます。
年を取れば物忘れがひどくなり、それまでできていたことができなくなります。まして、重い病気になれば何も分からなくなり、昏睡となって死を迎えます。つまり、しっかりしていた人も、記憶力・判断力などが低下して認知症の状態になるのです。
このように考えますと、突然死しないかぎり人は皆、認知症になると言っても過言で
はありません。そして、認知症は必ずしも「困りもの」「いやなもの」ばかりではなく、末期の苦痛、不安、恐怖などの辛さを和らげてくれる仕組みでもあるのです。家族にとって介護は大変ですが、認知症の人はがんの末期であっても苦痛が少なく、穏やかな最後を迎える人が多いようです。