48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

100円からの『御用聞き』 ちょっとした困りごと「御用」を承っています!

2024.07.10

株式会社御用聞き 代表取締役社長 古市盛久さん

日常生活で電球の取り替えや家具の移動など、誰かにちょっと手助けしてもらうだけで簡単に済むことってありますよね。そんな困り事をお願いする「100円家事代行」などを始めているのが株式会社御用聞きの古市盛久さんです。

有償ボランティアで地域を盛り上げ、生活者に寄り添うために考え出されたシステムで、全国各地域に『御用聞き』を広めていきたいそうです。

『御用聞き』の主な2つの活動

・地域を盛り上げる(地域支援活動)

・生活者に寄り添う(生活支援活動)

 

Vision(理念)  会話で世の中を豊かにする

生活者(利用者)と生活者(担い手)が顔を合わせて会話をしている。

お互いが楽しく、その空間があたたかい。
そんな在り様を世の中に1つでも多く増やしていく。

Mission(使命) 2025 第5のインフラを日本で作る

電気・ガス・水道・通信・『御用聞き』
5番目のインフラとしてサービスの流通を目指しています。
水道のように「いつでも どこでも どなたでも」
安心安全にサービスを利用できる世の中に。
2025年12月までに日本の8割の場所でインフラとしてのサービスを流通させる。

 

現在『御用聞き』は東京をはじめ栃木県、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、奈良県、鹿児島県の一部のエリアでサービスを提供しています。「担い手」の有償ボランティアは550人を超える大学生がいます。

  • 幼い頃に抱いていたヒーローを夢見て

今年45歳の古市盛久さんは小学4年生の時に、酒屋さんやお米屋さんにクロネコヤマトが荷物を取りに来るのを見て、その仕組みを考えた人はすごいなと思い、また任天堂のファミコンを友達の家でテレビ画面に全員が熱狂的になり「世の中を幸せにしているファミコンはすごいな」世の中を良くする人になりたいと思ったそうです。

 

②不動産事業で金儲けしたが「買い物代行業」に転換

2001年に大学を卒業し、不動産会社で8カ月間働いて独立。約8年間お金儲けはしたものの、何をすれば社会が良くなるのかわからない。

30歳を前に、論語の「三十にして立つ」という言葉のように、「人の役に立ちたい。世の中を良くすることをやりたい」と事業転換し「買い物代行業」をはじめました。

 

③買い物代行業で失敗して財産をなくす

2009年の末。当時の話題が「買い物難民」「買い物弱者」でした。買い物に苦労している子育てママや高齢者が豊かになるようにと、インターネットを活用した「買い物支援サービス」を始めたが、1年で1億数千万円の損失を出す。
物流がそもそも赤字体質で利益を出すのは難しい。経営者である私がよくなかった。

 

④会社を締める前に「まず謝ろう」と

買い物支援サービスに協力してくれた地域の人たちに電話で、「立ち行かなくなり事業は畳みます。ごめんなさい」と。当時はうつになりました。

その時「買い物は健康で外に歩く時間だから、買い物を任せるなんてしないよ」「そんな仕事がうまくいくわけがない」とダメ出しも。

やっている時も言われていましたが、聞く耳を持っていなかった。絶対にうまくいくと確信していましたから。

⑤『互助の精神』を初めて痛感した

謝っているうちに「自分は生きる価値がない」と思い、町中で座り込んでしまい、景色がモノクロになり耳も聞こえなくなった。
謝った先で「そんなこといいから休んでいきなって」布団引いて寝かしてくれたんです。そして、鍋焼きうどんを取ってくれて一緒に食べました。
その時に、地域での支え合いのありがたさ。自分が救おうと思った高齢者の人たちに、困った時にちょっと手を差し延べさせていただく。逆に向こうからお礼を言ってもらうことで自分が救われた、いわゆる『互助の精神』。お互いが助け合うということを初めてそこで痛感しました。

そして、「人生長いから諦めるな」とか「これだけ失敗した人間はそうそういないから 、君は将来面白いことになるぞ」というエール送っていただきました。

 

⑥『100円でお手伝いします』からスタート

1人反省して2010年夏頃今の原型ができました。

「買い物支援」をしていた練馬区で「100円でお手伝いします」と書いてケアマネさんに挨拶して、ちょこちょこ紹介をいただきました。

最初にコールセンターを外部委託して開設し、商店街に店を出しても全然注文が来ませんでした。当時やることがなく、朝から晩まで商店街の掃除をしたり通行人に挨拶をしたり、助成金を調べて書き換えてあげたりするうちに、お店の方がお客さんに私のサービスを紹介してくれました。その辺からじわじわ仕事がきました。

年末の爆発的な依頼に血尿「このままだと死ぬ」 

爆発したのは2010年の年末の大掃除です。リピーターも増え口コミで広がっていって、年末は6時半から夜の12時過ぎぐらいまで 1日現場に行っていました。

「今すぐ来て」という依頼が多くて、毎日やっていたら血尿が出て倒れました。「このまま行ったら死ぬな」と思いました。

スーパーボランティアがインフルエンザやコロナに感染したとなると、その地域を支えるものがなくなっていくことを感じました。これは仕組みとして広げないと駄目だなと思いました。

⑧1年がかりで50年先のビジョンを作成
この活動が5年、10年、50年続いた時に、バトンをつないでいく時に、どんな色のバトンなのかというところです。

最初の頃は江戸時代の『御用聞き』を平成の時代に復元させようと。それは「世の中を豊かに作る」というビジョン。

自分がいて相手がいて、お互いの心が暖かくてその空間が何か居心地がいいというようなものを国中に広げていくというのが『御用聞き』の味噌。
それからは自分たちが何者なのかがわかるようにケアマネや自治体、自治会、町会、民生委員の方々に説明し徐々に応援いただき、テレビやマスコミが取り上げてくれるようになりました。

⑨仲間を増やしシステムを構築 テーマは“収益化”

世の中を変える仕組みを作ろうと、2年目ぐらいから、もう一つのテーマは収益化。仲間が増えないと世の中が良くならないと人を増やす段階に。

地域で支え合うには若者がいた方がいいわけですが、若者がどこにいるのかわからない。彼らは勉強にバイトに忙しいから地域福祉に関わることがないと聞きます。

なぜ若者は地域福祉に関心がないのか?!

年配の方が支え合う団体は大なり小なりありましたが、「もし若者が地域福祉に興味を持って参加してくれたらどうですか」と聞くと「とても嬉しい。そんなことができるんだったら最高じゃないか」と言われました。
「私たち『御用聞き』は、若者たちが担い手でお手伝いします」と宣言をしたものの若者の知り合いなんていません。

そこで知り合いに「大学生に朝昼晩ご飯をおごるから、普段何をしているか見せて欲しい」と。そして携帯を覗き込んだり、どんな服着ているのか、どんな人が可愛いと思うのか根掘り葉掘り聞いたんです。

そこで大学生の日常生活や思考、学生さんの悩みだったり不安だったり、楽しい時間が理解できるようになってきました。

⑪「1回こっきり、5分からのボランティア」が当たる
大学生はアルバイトを探すというよりは選ぶという時代でした。

良質な社会体験が就職活動の目的として圧倒的に多かったです。

そして一人の人間として、ちゃんと成長していきたいと思っていて、それが何だろうと探しているようでした。
東北の震災の時に復興支援で行って3年で一巡。首都圏に戻ってきた人たちが結構いて、首都圏で何かボラティアできないかと思っていましたが、ボランティア団体に所属したら一生所属しないといけないという先入観を持っている。「1回こっきりで、5分から参加できます」ということで、そのニーズの心を当てることができました。

⑫学生の社会参加で感動して泣く子がいました
学生は『有償ボランティア』で感動して泣く子がいました。知らない人から御礼を言われることがなかったからです。

決められた勉強をして、テストで平均点を超えるか超えないかという競争の中で、『有償ボランティア』で訪問先でわけのわからない問題を提示されて、自分の頭で解決したことがすごく褒められたからです。

そういう社会教育みたいな感動体験をして、感情が溢れて涙が出ていました。それを教えてくれるわけです。

私たちがやりたいのは働きながらお金のトレードではなくて、お互いに助け合う活動に参加しませんかということです。 

⑬御用聞きが『インターンシップ』に認められる

今550名ほどのボランティアが登録して活動しています。9割が大学生です。新型コロナウイルスが5類に移ってからは50代以上の募集を始め、結果的には30代の社会人ボランティアさんも増えてきました。有給や休日を使って、アルバイトではない社会経験の価値の中の一部にお金があるだけです。
今は大学で『御用聞き』をすることでインターンシップの単位がもらえる大学が4校あります。大学の先生が関心を持って見学に来られます。

最近では実験的に埼玉県宮代町と千葉県柏市と協定を結んで、地域福祉センターの人材の育成を次世代の方々にしています。支え合いに関心を持ったり、心が豊かになることをコーディネートするお手伝いを始めています。

大学生の皆さんと一緒に、お互いに助け合うということは何だろうかとか、そのための仕組みとしてポイントが何なのかとか、それを多世代に広めていくということをやっています。

 

⑭コールセンターとシステム作り

会社の事務所はありません。大企業のエンジニアが作ったものを安く利用して、ネット上で全て完結するようにシステムを作っています。

利用者はコールセンター(外部に委託)に電話をするだけです。そして、どこのエリアがお手伝い可能かわかるようになっています。

出張料は一応500円で設定して、待機時間を最小化しています 。
18カ所にエリアリーダーがいてコーディネートします。

エリアリーダーになるには『有償ボランティア』を経験しながら養成講座を受け、受講後オッケーがだされ、本人が『御用聞き』をしたいと面談をして、ビジョンの共感と活動をしていただきます。

団塊の世代が後期高齢者になる2025年に準備をしておかないといけない。広げていくにはどうすればいいか。若者が地域福祉に関わるという設定でやってみようと思っています。

⑮「何が悩みか」「何が問題か」わからない人が多い

「悩み」と「困りごと」とは別です。悩みは将来の不安です。困りごとはかゆいところに手が届くこと。お金のある方でも私たちへの依頼は多くて、専門業者に1万円でお願いしてそこまで綺麗にしなくてもいいという日常の掃除。そこまでは必要ないわけです。
そして、介護保険ではできないことを念頭に置いています。病院内の付き添い とか、会計もキャッシュレスだとかわからない。タクシーを呼ぶのに代わりにアプリを操作してあげたりしています。そういうことはお年寄りはついていけないわけです。
インターフェースです。操作を覚えるよりも覚えている人間と仲良しになった方が手っ取り早いです。
そして、「心の元気」を私たちは戻すことができればいいなと思っています。

 

⑯世の中がよりよくなるためにやっている
ビジョンの予定は立てていないんですが、ただ14年以上活動を継続していますし利用者も増えています。商売としてではなくて、世の中がよりよくなるためにギリギリのラインでやっています。
一般の便利屋さんは誰が来るのかわからない。廃品回収でも結局高くついたりしますよね。そこの分かりづらさを明確にしています。

いかに信頼性を持つかということですね 。

 

 

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