特集 長寿のまち『京丹後市』 ― 知りたい!長生きの秘訣 ―

京丹後市の市民の健康意識の高さ×行政のサポート
健康長寿福祉部 長寿福祉課 包括ケア推進係長・中川映子さん
健康推進課 健康増進係長・吉岡めぐみさん
京都府の京丹後市は、人口あたりの百寿者の比率(百寿率)が全国平均の約3倍という、日本有数の「長寿のまち」です。昨年、この京丹後市で「第1回世界長寿サミット」が開催され、世界の健康長寿地域の取り組みや展望について活発な議論が行われました。
サミットでは、8自治体の首長による「健康・美・長寿」に関する取り組みが紹介されました。本特集では、長寿のまち・京丹後市の市民の日常生活と、それを支える行政の取り組みを通して、「健康づくり」「心のサポート」「食文化」という3つの視点から、長生きの秘訣を探ります。
自然とともに生きるまち・京丹後市
京丹後市は2004年、6町が合併して誕生しました。京都府最北部に位置し、丹後半島を含む広い市域には、海・山・川が身近にある自然豊かな環境が広がっています。
人口は約5万人で減少傾向にありますが、高齢者(65歳以上)の割合は約36~38%と全国平均(約30%)を大きく上回っています。中でも100歳以上の高齢者が多く、人口比では全国平均の約3倍。この点が研究者の注目を集め、「第1回世界長寿サミット」開催につながりました。
「長寿のまち」と言われる一方で、高齢化率も非常に高い京丹後市では、行政としても、市民により健康で長生きしていただくための取り組みが重要な課題となっています。そこで、令和6年3月に策定した「第9期京丹後市高齢者保健福祉計画」(令和6年度~8年度)では、「高齢者がいくつになっても元気に活躍できる百才活力社会」を基本理念に掲げ、高齢者の生活実態や健康状態などを把握し、地域に即した事業を積み重ねてきました。
今回は、その中から
①健康づくり②心のサポート③食文化にも着目し、この3項目について、中川さん、吉岡さんのお話を交えながらご紹介します。
人口5万人のうち、100歳以上は124名/最高齢は109歳
京丹後市の人口は、昨年3月末時点で4万9,651人。そのうち100歳以上の方は124名で、最高齢の方は109歳の方が2人おられるそうです。
「海があり、山があり、風光明媚な土地柄です。日本海側ですが冬の積雪は比較的少なく、6町が一つになったことで、生活環境が広がったように感じます。
もちろん介護を必要とされる方もいますが、ご高齢でもお元気な方は確かに多いですね。天気が良ければ畑仕事をしたり、海沿いの方は漁に出たりします。カニのシーズンには、観光施設や旅館で働いておられる高齢者の方もいらっしゃいます。
皆さんとても忙しく、そのこと自体が生きがいとなり、生活の張りにつながっているのだと思います」
また、京丹後市観光公社では、「旅」と「健康」を掛け合わせたヘルスツーリズムを推進しています。“長寿のまち”と自然や歴史、食などの豊富な地域資源を活かし、旅を通じて、企業の健康経営Rや個人の健康づくりにつながる観光型健康保養地(Kyoto Health Resort 京丹後)を目指しています。
京丹後市の市民の健康意識の高さ×行政のサポート
- 健康づくり 「ウォーキングマップ」「レッツチャレンジウォーキング」「のびのび体操」「こころの健康相談」
⭐️ 京丹後市健康ウォーキングマップの作成
海と山の季節を楽しむウォーキングマップ12コース
ウォーキングを楽しんでいる市民に、より楽しさや季節感を感じてもらうために作られているのが、「京丹後市健康ウォーキングマップ」です。
「市の保健師と市民の“健康づくり推進員”が一緒になって、まず47コースを作成しました。実際に歩きながら、桜の時期はここがきれいですよ、このルートは海がよく見えますよ、といった地元ならではの魅力を盛り込み、12コースを選定。手書き風のマップとして仕上げています」
成老人の健康講座「丹後のびのび体操」
転倒予防に必要な下肢筋力やバランス能力が向上
各自治体でさまざまな体操が導入されていますが、京丹後市では平成27年から「☆からだ・寿命・元気☆ 丹後のびのび体操」(通称:丹後のびのび体操)を実施し、地域全体での介護予防の取組を支援しています。
「地域の運動講師さんと一緒に考えた体操を、筑波大学の山田実教授に監修していただきました。特徴は、転倒・骨折や認知症を予防するための体操で、ウォーミングアップ、筋力トレーニング、有酸素運動、クーリングダウンの4つで構成されています。
市職員が3ヵ月間地域に入りサポートして実施したところ、転倒予防に必要な下肢筋力やバランス能力が向上したという結果が出ています。現在では、市内32地区で約400人が、週1回、公民館などに集まり、楽しみながら続けています」
成老人の健康講座と「こころの健康相談」
京丹後市では、フレイル予防や食生活、骨粗しょう症を予防するための食事と運動をテーマにした講座を開催するとともに、市職員による「まちづくり出前講座」も実施しています。
また、こころの悩みなどについて話すことができる『こころの健康相談窓口』も設けています。
「月に1回、健康・栄養相談以外に心の相談日として日々のストレスや不安、人間関係、仕事、家庭の問題など様々なお悩みについて、 保健師や臨床心理士が相談をお聞きします。
相談される方の多くは 、気持ちが落ち込み、どこにも相談できずにいた場合が多いです。ご自身のこと、家族や職場 のこと、生活や病気のことなど多岐にわたります。ケースに応じて医療機関や専門機関につなぐこともあります。
毎月実施しているため、定期的に来られる方の中には、『話を聞いてもらうだけで心が楽になる』と言われる方もおられます」
京丹後市の市民の健康意識の高さ×行政のサポート
- 心のサポート「こころの相談」「寄り添いサポートセンター」
あらゆる相談から支援まで、安心できる生活基盤づくり
寄り添い支援総合サポートセンターは、『こころの健康相談』とも重なる部分がありますが、「生きがいづくり」という視点では、生活そのものの基盤を立て直し、再び前を向いて生きていくための支援を行う拠点です。
「日々の悩み」「生活費の減少」「ひきこもり」「債務問題」「訪問販売による被害」「仕事に関すること」など、どんな内容でも、相談を受けるだけでなく、必要な支援につなげるところまで伴走しています。
「このセンターでは、生活全般に関する相談を受け、支援につなげています。相談内容は本当に多岐にわたっており、例えば生活困窮、障害者相談、消費者被害、不登校やひきこもりの相談などです。
特に難しいケースとしては、高齢者でも障害者でもなく、制度のはざまにいる方々です。そうした方が、生きづらさを抱えていることも少なくありません。今年度からは、保健師や社会福祉士などの専門職が加わり、相談支援の幅がより広がりました」
寄り添い支援総合サポートセンターは市民にも広く周知されており、フリーダイヤルを導入しています。職員は相談者の自宅を訪問し、直接話を聞くなど相談方法も多様で、LINE相談など、忙しい方や若い世代でも相談しやすい工夫がされています。また、消費生活センターを併設しており、相談支援の幅が大きく広がっていることも特徴です。
まさに、市民一人ひとりに寄り添う存在といえるでしょう。
「京丹後市成年後見サポートセンター」を併設
判断能力が低下しても、自分らしく暮らせる地域へ
寄り添い支援総合サポートセンターでは、今年度から「京丹後市成年後見サポートセンター」を併設しています。認知症や障害などにより判断能力が低下しても、住み慣れた地域で、その人らしい生活を続けられるよう、成年後見制度をはじめとした権利擁護支援に関する相談や支援を行っています。
成年後見サポートセンターがコーディネーターとなり、関係機関や専門職と連携しながら、ご本人・ご家族・後見人などを地域全体で支えるネットワークづくりにも取り組んでいます。
京丹後市の市民の健康意識の高さ×行政のサポート
- 食文化 郷土料理「京丹後百寿人生のレシピ」を学校で調理指導
京丹後市では、地域に伝わる食文化を次世代に継承するため、市内の小学校・中学校の児童生徒を対象に、郷土食の調理指導を行う「食生活改善推進員」を派遣しています。
「長寿の秘密を探るため2013年に百寿者の方に、若い頃どのような食事をしていたのかを調査しました。その結果、特別なものではなく、家庭で作られてきた郷土料理が中心だったことが分かりました。レシピは26点あり、それをまとめたのが『京丹後百寿人生のレシピ』です。
昔の方は郷土料理を自然と覚えていますが、今は若い世代やお母さん世代が作ることができないという現状があります。そこで、食文化をきちんと伝えていこうと、小学5年生の総合学習の時間等を活用させていただき、食文化伝承推進事業に取り組んでいます」
※京丹後市のHPに「郷土食レシピ」が掲載されています








