あなたの『終の住処』はどこですか?!〈連載14 〉

『在宅ホスピス緩和ケア』死ぬところは自分で決められる(下)
「在宅医療費」一人暮らしでお金がなくても大丈夫!!
小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長 小笠原文雄院長
日本在宅ホスピス協会会長
在宅医療のお金の仕組み
今回は在宅医療だとお金がかかると思っている方のために、お金の話を伺いました。
小笠原先生は「病院に入院させるよりも在宅医療の方が安くつきます。国の財政も在宅医療が普及すれば1兆円以上浮き、国民の負担も国の負担も減ります」と話されています。
在宅医療費は所得の多い人は負担が多く、所得の少ない人は負担が少ないというように、誰でも支える仕組みになっているので心配いらないそうです。
「生活そのものを見ている在宅医療なら、患者さんの経済力に合わせて工夫ができます。だからほとんどの人が、入院より安いお金で最期まで暮らせるのです」
在宅医療のお金を安くする4つのコツ
①「お金がかからないようにしてほしい」と恥ずかしがらずに伝えること
②医療保険や介護保険などを上手に使うこと
③高額療養費制度と高額介護サービス費制度を利用すること
④THP(トータルヘルスプランナー)がいるなど、連携・協働がスムーズなチームを探すこと
次に紹介する患者さん全員が一人暮らしです。家族と同居している人よりも一人暮らしの方がお金はかかると思われますが 実際はどれくらいのお金がかかるのか見ていきましょう。
「月3万円あれば大丈夫」って本当ですか?
高井さん 70歳男性 肺がんの末期 一人暮らし
在宅医療は病気だけでなく患者さんの生活全般を見ます。家族や仕事、趣味やお金、死への思いなど、どんな話にも耳を傾け支えます。
今回の高井さんは「妻の納骨まで生きていたい」と願った患者さんです。
支払ったお金(自己負担額)
◉死亡前々月 2万1644円(16日分)
◉死亡前月 2万5157円 (31日分)
◉死亡月 4万1854円 (10日分)
※患者さんが負担するお金には上限があるから、『高額療養費制度』を使えば 払いすぎた分は戻ってきますよ。それに末期がんの人は『在宅がん医療総合診療料』も適用されて、一度に支払う金額も少なくて済みます。
デイサービス代は高くないって本当ですか?
石田さん 90歳女性 右肺膿瘍後遺症、誤嚥性肺炎 一人暮らし
在宅医療を受けている患者さんの中には、デイサービスを楽しみにしている人も大勢います。もし週3回デイサービスに通ったらどのくらいかかるのでしょう。
支払ったお金(自己負担額)
◉死亡前々月 2万5475円(31日分)
◉死亡前月 2万7582円(31日分)
◉死亡月 3万5040円(13日分)
石田さんが受けていたサービス
月・水・金 デイサービス(入浴、食事など)
火・木 ヘルパー(掃除、洗濯、買い出しなど)
土・日 訪問看護、訪問リハビリ
※石田さんは デイサービスが大好きでした。在宅医療を受けていた3年間で、デイサービスを休んだ日は数えるほどしかありません。亡くなる前日も、デイサービスを満喫していたほどです。
一人暮らしだと家政婦さんが必要ですか?
井上さん 83歳女性 多発性骨髄腫 一人暮らし
井上さんの希望は「最期まで家で過ごしたい」ですが、「息子の嫁と仲が悪いんです。介護されるのは嫌だわ」と相談。「お嫁さんに来てもらわなくてもいいんじゃない。気が合わない人に来てもらっても心は暖かくならないよ。それに訪問看護師さんやヘルパーさんたちが来てくれるから心配いらないよ」と在宅医療を進めていたところ、お嫁さんから近所の人の手前入院させて欲しいと言ってきました。
「母の願いは叶えてあげたい。でも妻の気持ちもわかる」という息子さんに、私は「在宅医療ならみんなの願いが叶うよ」ということで納得。
支払ったお金(自己負担額) …自費ヘルパーに支払ったお金も含む
◉死亡前々月 6万200円(28日分)
◉死亡前月 6万2500円(31日分)
◉死亡月 7万5474円(24日分)
※息子さんの心配は「母が一人でいる時に亡くなったら孤独死ですよね」と言われました。「孤独死っていうのは、一人でいる時に死ぬことじゃないよ。心が孤独になって、その中で死ぬことだからね。お母さんは死ぬまで家にいたいという願いが叶うんだから、心は暖かいはずだよ。本人の願いが叶ったらそれは希望死・満足死・納得死だよ。日中はヘルパーさん、夜は巡回型ヘルパーさん、訪問看護師さんはいつでも呼べばきてくれる。足りなければ自費ヘルパーを頼んでもいい」と話した井上さんは自費ヘルパーを使いましたが、入院しているよりもお安くすみました。
心不全の悪化を防ぐ10か条
①利尿剤などの薬を飲み忘れない
②水分を取りすぎない
③塩分を控える
④便秘に気をつける・排便時に力まない
⑤過度な運動をしない
⑥入浴時は脱衣所や浴室を暖め、胸以下の水量にし、長湯をしない
⑦室温を適温にする
⑧質の高い睡眠をとる
⑨ストレスや緊張を感じないように暮らす
⑩あくび体操をこまめに行う






