48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

特集 ユネスコ無形文化遺産 “和食”を忘れないでね!!

一般社団法人和食文化国民会議  

稲田潤専務理事・事務局長

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたのを機に、2015年2月に民間団体として発足。和食文化を次世代へ継承するため、日本の食を支える生産者、食品メーカー、流通業、フードサービスなどの様々な企業・団体、そして地域の郷土料理保存会や食育団体・NPO・料理学校など食にかかわる団体、地方自治体、個人の方々と共に運営を行っています。

 

昨年12月5日に日本の伝統的なこうじ菌を使った「酒造り技術」(日本酒、焼酎・泡盛、みりん等)が、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。これで日本の「無形文化遺産」は22件目です。「無形文化遺産」とは、芸能や祭り、伝統工芸など形のないものを保護し、人から人へと継承を目的とするもので、2013年には日本人の伝統的な食文化の「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されています。インバウンドの多くが「和食」を楽しみに来日されているようで、今や“Washoku”や“UMAMI”などは世界共通語になっています。その一方で国内では郷土料理や行事食など、人から人へと継承する食文化が将来途絶えるのではないかという危機感もあるそうです。

「和食」の保護・継承活動を行っている和食文化国民会議の稲田潤さんに、「和食」の魅力を教えていただきました。

1124日は『和食の日』  

どこまでが「和食」?! 箸を使っている食べているものは日本料理です!

ユネスコに登録された「和食」は、食べ物が登録されたわけではなくて日本人の文化が登録されたということです。さらに言えばお正月のおせち料理は、国民行事として国民全体に広まっている文化だということで認定されたということです。ただ日本料理で必ず「どこまでを和食というんですか」という話が出てきます。

図のように「和食」の外側に広い意味での日本で食べられる料理ということで「日本食」という言い方をしまして、ここに折衷料理や粉物などを「日本食」として分類しています。

ユネスコに登録された日本人の伝統的な食文化4つの特徴 

食材が豊富/健康的/自然を大切にする/年中行事

  • 日本列島は南北に長く複雑な海流は多様で新鮮な食材が豊富

日本列島は南北に長くおおよそ3000kmあるんです。海岸線だけを測ると3万3000km。地球1周が4万kmですからその8割ぐらい海岸線があります。寒流と暖流がちょうど日本海側と太平洋側でもぶつかっていて複雑な海流になります。そこにプランクトンが発生して、それを食べる魚が集まり多様な魚が獲れるということです。また、複雑な海流や海岸線があるので貝類やエビ、カニや海藻類が捕獲でき、地域ごとに豊富な種類の魚介類が食べられるということです。これも一つの文化です。

そして、海と山の自然が豊かで、地域には季節ごとの食材があり、その素材を生かす地域ごとの調理技術があります。

和食は出汁の文化/「うま味」は日本人が発見した!

昆布だしというのは和食の基本ですが、最近は海水温の上昇で昆布が減り採りづらくなっているそうです。また、鰹節にするサイズのカツオが獲れなくなってきているようです。

「うま味」を発明したのは東京帝国大学の池田菊苗博士。昆布を食べるとなぜ美味しいのか?と研究されたところ、昆布からグルタミン酸というアミノ酸の一種を取り出すことに成功しました。その味を「うま味」と名づけました。2002年には舌のうま味を感じる味蕾(みらい)の中に「うま味」を感じる受容体があることが実証、発見されたんです。この発見により2002年以降は、これまでの基本味とされる「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」に続いて、「うま味」が5番目の味覚として認定されました。
アメリカでもうま味調味料が売られています。味の素もそうですよね。グルタミン酸を製品化したもので、うま味調味料という言い方がされています。

外国語では「うま味」と表す言葉がなく、世界中の人たちが「うま味」を「UMAMI」と認識しています。

日本の軟水が「出汁文化」を作っている

日本は山と海が近いので雨が降ってもすぐに流れてしまう。土の中のミネラル分が溶け出す時間がないので日本の水はミネラル分が少ない軟水です。一方ヨーロッパでは長い時間をかけて川が流れてくるので、土の中のミネラル分が水に溶け出してくるので硬水なんです。
ミネラル分があると出汁を引くとき邪魔するんですね。日本の水がもし硬水だったら「出汁の文化」は起きなかったということですね。いろんな自然の要素があって日本の食文化ができているということです。

発酵調味料の「麹菌」は日本独特の菌

日本の食文化を支えているのは発酵調味料の麹、醤油味噌などの調味料です。麹菌はカビの一種ですが、日本の温帯の気候でないと活動できない菌です。韓国では一部同様のものがありますが麹菌を使った調味料は日本ならではのものです。

また、古来からの作物であり、全くゴミを出さない「お米」は糠をお漬物を発酵させる調味料にしたりしていますが、藁やもみ殻に至るまで廃棄物を出さないというのも日本人の知恵です。

健康的な食生活を支える栄養バランスの「和食」

「和食」の基本は一汁三菜です

「和食」の基本は一汁三菜です。主食の「ご飯」に「汁物」と3つの「菜(おかず)」を組み合わせた献立は、たくさんの栄養素をバランスよく摂ることができます。出汁を引くのがめんどうな場合には、インスタントの出汁を使ってでも出汁を効かせたものを食べる。おかずが一品しかなくても「ご飯」と「汁物」の食生活を続けてほしい。「和食」を忘れないでほしいということが我々のメッセージです。

和食は塩分がちょっと気になるところですが、和食をよく食べている人たちは、循環器系の心疾患などの罹患率のリスクが下がります。そういう意味では健康的な食事であり、肥満防止という点では「うま味」が入ったスープを飲むと満腹感を感じやすく、ご飯の食べる量が減り健康的です。

日本の調理法は「出汁を引く」ことから
フランス料理やイタリア料理、中国料理は鍋に油を敷いて調理が始まりますが、日本料理の調理法はまず出汁を引いたところに、いろんな素材を入れて味をつけながら煮物を作るといったことが基本的な調理法です。そういった根本的なところで、どこから料理が始まるかといったところの違いがあり、日本料理は独自性があるということです。
また、フレンチのフルコースを食べた時は素材が25品目で2500kcal、イタリアのカルボナーラのパスタは900kcal、日本の懐石料理は65品目の素材が食べられて摂取カロリーは1000kcalしかありません。低カロリーでいろんな食材を食べられるのが日本料理の優れたところです。

日本料理というのは引き算です
「和食」は出汁の味をメインにして、脂肪分などの余計な味つけをしない料理です。

和食の場合は「出汁を引く」と言います。和食の出汁の取り方は、昆布をお湯につけて時間かけて温度をじっくりあげて沸騰する前に昆布を取り出し、そこに鰹節を入れて沸騰直前に鰹節を取り出して濾すというもの。出汁からうま味を引きだすから「出汁を引く」と言います。

一方「出汁を取る」というのは、骨とか野菜を沸騰したお湯でグツグツと長時間にわたって煮る出汁の取り方を言います。骨からうま味を取り出すということで、言葉の使い分けをします。

  • 自然の美しさや季節の移ろいを表現

器を持って箸で食べるのは和食文化の特徴です

器を手に持って箸で食べるのは「和食」だけなんです。海外ではお皿を手に持つことはタブーで、やってはいけないマナーなんです。器を手に持つため食器が熱くならないことが重要で、そういう時に漆器がいいと言われています。

また、季節ごとに食器を使い分けるのが「和食」の特徴。夏は涼しげなガラスの器を使ったり、寒くなると厚手の陶器を使って暖かみを演出する。赤身のお刺身なんかは白っぽい器に盛り付けるなど繊細な器の盛り付けが和食の特徴です。

 

調理法は生、煮る、焼く、蒸す、揚げるが和食の五法
和食の基本的な調理法は、刺身などを切る、煮る、焼く、蒸す、揚げるが和食の五法。茹でるとかあえるは下ごしらえの一部で基本的な料理法としては入れません。一汁三菜の3つの菜というのは、五法のそれぞれ異なる作り方をした三菜が本来の一汁三菜です。

この五法に応じた調理器具を使い分けます。食材によって包丁を使い分けし、蒸し器や土鍋、サメ肌のわさびおろし、揚げ物用の菜箸、鉄瓶など。また、子どもたちは鰹節や削り器の本物を見たことがないため「出前授業」で現物を見せることもあります。

  • 年中行事とお正月の「おせち料理」

お正月は「おせち料理」が国民全体に広まっている文化だということで、ユネスコの無形文化遺産に認定されたということです。特定の地区、特定の人たちしかやらない行事は認定されません。

行事食/日本は奇数がめでたい数字

日本では古くから奇数が縁起のいい数字と言われています。奇数が重なるとおめでたいということで「節句」は奇数月奇数日に設定しています。日本古来の文化です。
しかし、行事食もだんだん家庭では行われなくなってきたので、我々としては「行事食」を忘れないでくださいと呼びかけをしていきたいと思っています。

「いただきます」「ごちそうさまでした」は日本だけ!

日本では食事の前に「いただきます」と自然の恵みに対する感謝の気持ちを表します。これは魚・野菜・肉などの生き物の命をいただく、自然への感謝の気持ちがこめられた言葉です。

食事が終われば「ごちそうさまでした」という言葉には、野菜を作る農家の方や魚を獲る漁師の方、料理を作ってくれた方々全ての人に対する感謝の気持ちが込められています。

この自然の生き物や作る人々への感謝の気持ちを大事にする文化は日本だけです。素晴らしい文化だと思います。

11月24日『和食の日』に和食給食やっています!

小中学生/幼稚園/保育園への「出前授業」

11月24日「和食の日」を中心とした11月に学校給食で出汁を効かせた汁物を出していただいて和食の給食を味わってもらい、先生からも子どもたちに「和食」について話をしてもらう「だしで味わう和食の日」という食育活動をおこなっています。活動10年目の2024年は15,835施設、386万人の子どもたちに参加していただきました。子どもの時にこうした和食を味わってもらうことが大事だと思っています。特に産地が近い学校では給食で地産地消を実践しています。
また、小中学校や幼稚園へ食育活動の一環で「出前授業」もやっています。出汁を飲ませてあげたり、昆布の現物を見せてあげると印象に残ります。子ども達は鰹節を見たことありませんから、削り節器などを持って行くこともあります。

「栄養バランスと同じように味覚の教育という点では、食べて楽しむことと味覚を磨くことが大事で、子どもの頃に食べていたものを年とってからも食べたいと思う。そういう意味で子どもの時に和食に親しんでもらうことが大事だ」と話される大学教授もいます。

「和食」がなくなる危機?!

食文化と食べ方の作法・郷土料理の継承は?!

最近の調査で多くの若者は「生活を簡便化したい」と言っています。この時代の流れは、図表の「和食文化の実態調査」の「食文化や食べ方・作法の継承状況」にも表れていて、7割が受け継いでいるのに対して、「伝えている」のは5割もないわけです。この20ポイントの差が続いていくと、いずれなくなるんじゃないかという危機感を持っています。
また、「郷土料理の継承」についても、受け継いでいるけれども次の世代に「伝えている」のは1/3になっています。その次の世代では、なくなってしまいますよね。そういう意味では危機的な状況です。

関連記事