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特集 65歳未満で発症する認知症を『若年性認知症』といいます

2021.11.06

仕事が上手くいかないことで気づくことが多いようです

『認知症』は高齢者だけではありません。65歳未満で発症するのを『若年性認知症』といいます。65歳以上の認知症が推計約600万人に対して、『若年性認知症』は約4万人程度と少なく、発症年齢は50代が多く就労や子育て中の現役世代です。働いている場合は周りの気づきがありますが、家庭にいて一人暮らしの場合には気づく人も少なく、認知症とは思い至らず時間を過ごしてしまうことも少なくありません。

編集者の知人は50歳の看護師で『若年性認知症』になりました。なぜなるのか、予防はできないのか、これからどのように過ごせば良いのかといった疑問が湧き、「若年性認知症コールセンター」を開設している、認知症介護研究・研修大府センターに伺いました。

認知症介護研究・研修大府センター 

若年性認知症支援推進部 山口喜樹さん

同センターは2001年に愛知県大府市に設置され、認知症介護に係る研究および研修事業を始めました。2009年から「若年性認知症コールセンター」を開設し、2016年度には全国の都道府県に配置される「若年性認知症支援窓口」の職員に向けた「若年性認知症支援コーディネーター研修」を開始。2018年度に「全国若年性認知症支援センター」を設置し、若年性認知症の支援に携わる専門職からの相談にも応じています。
今回は山口喜樹さんに『若年性認知症』の疑問についてお聞きし、パンフレットを基に編集しました。

 

★『認知症』というのは一つの病名ではありません

認知症は状態で、原因となる疾患は様々です!

『若年性認知症』は女性より男性に多く発症し、有病率は男性57.9人対女性36.7人です。

下記の4つの基準に当てはまると『認知症』と診断されます。
1)原因が脳の病的な変化である

例えば、脳の萎縮(脳が縮んで小さくなる)、脳卒中・脳血管の障害(血管の詰まりなど)
2)記憶などの知的な働き(認知機能)が低下していく
3)日常生活や仕事などの社会生活がうまく送れない
4)意識ははっきりしている

☆認知症になると何ができなくなる?!

◎時間や場所がわからなくなります

認知症になると「今日は何日?」「ここはどこ?」がわからなくなります(見当識障害)。日時や場所を何度も聞かれたら疑ってみましょう。

◎判断力、理解力、思考力などが低下していきます

それまで普通にできていた料理がうまく作れなくなったりします。それは段取りがうまくできなくなるからです。

都道府県に「若年性認知症の相談窓口」ができた!

若年性認知症の人数は約35700人。2009年の調査より若干減少しましたが、これは働く世代の人口が減少したからだと考えられています。人口10万人あたりの有病率は50.9人であり、前回の47.6人よりやや増加しています。

発症年齢の平均は57歳です。

2018年度に全国の都道府県に「若年性認知症支援センター」が設置されたのは、人数が増えてきたからではなく、認知症で仕事を辞めて5年も10年も経ってからようやくサービスを利用し始めるケースが調査で明らかになってきたからです。

実際には勤めている段階でも受けられる制度やサービスを使っていない方々がほとんどでした。

私のところには、医療機関や障害福祉サービス、介護サービスを使われていない方々からの相談が多く寄せられます。先ほどの有病率の調査でも、カウントできていない方々がいらっしゃると思っています。

「若年性認知症コールセンター」への相談は、6年前には月2000件を超えていましたが、去年は月1200件ぐらいでした。都道府県に相談窓口ができ、それぞれの地域で対応できているからだと考えています。

★65歳以下の若年の方は本人から相談がある! 

☆山口喜樹さん
65歳以下の若年性認知症の方の相談は、本人から直接相談をいただくことが多いです。高齢者の場合は家族や友人からが多く、本人から相談がくることはほとんどありません。

就労されていれば早い段階で、仕事の効率が下がったりするので周りも気づき、自覚される方も多いです。

高齢者の認知症と若年性認知症との違い

• 発症年齢が若い  平均の発症年齢は 57 歳ぐらいです。

• 男性に多い    女性が多い高齢者の認知症と違い、男 性が女性より少し多くなっています。

• 体力があるので、適切な支援を受け ることで就労を継続したり、ボランティアなどの活動が可能である

• 今までと違う体調変化に気がつくものの受診が遅れる(他の病気や疲 労やストレスの蓄積と間違えやすい)

• 経済的な問題が大きい

働き盛りで一家の生計を支えている人が多く、 休職や退職により経済的に 困窮する可能性があります。

• 主介護者が配偶者に集中する

高齢者の場合は配偶者とともに子ども世代も介護を担うことが多いのです が、若年性認知症の世代では、子どもはまだ若く場合によっては未成年であ り 、介 護 者 は 配 偶 者 に 集 中 し が ち で す 。

• 時に複数介護となる

若年性認知症の人やその配偶者の親世代は、要介護状態になるリスクが高い 世代であり、また家庭内に障害者を抱えている場合もあり、複数介護になる こともあります。

• 介護者が高齢の親である

子どもが若年性認知症になった場合、高齢の親が介護者になることもあります。

• 家庭内での課題が多い

夫婦間の問題、子どもの養育、教育、結婚など、親が最も必要とされる時期 に認知症になり、あるいは介護者になることは、家庭内に大きな問題を引き 起こします。

早期発見・早期治療が大事ですが診断は難しい

特徴的な事として、50 歳頃に自分が体調不良になっ て も 認 知 症 は 疑 わ な い で す よ ね 。ま ず 疑 う の は 鬱( う つ )だ と 思 い ま す 。 物 事 が う ま く い か な か っ た り 、 人 か ら 指 摘 さ れ た り 、働 き す ぎ て 疲 れ て い る ん じ ゃ な い か とか。確かに認知機能が低下するとうつ状態になる 方が多いです。初期段階でうつと区別するのが難し いのです。うつの治療を受けて 2 年、3 年経っても良 く な ら な い 。そ れ で 初 め て 認 知 機 能 が 低 下 し て い る の

ではないかと認知症を疑うわけです。
ま た 、 女 性 で あ れ ば「 更 年 期 」だ と 思 っ て 婦 人 科 を 受 診 さ れ る 方 が 多 い 。 更 年 期 の 時 に は ボ ー ッ と し た り も の 忘 れ を し た り 、認 知 症 と 同 じ よ う な 症 状 が 出 ま すが、婦人科の先生からは「2、3 年で閉経したら良くなりますよ」と言われる。 ボ ー ッ と し た り う つ 状 態 が 出 た 時 に 、認 知 機 能 の 低 下 に よ っ て そ れ が 起 こ っ て いるのではないかと疑ってみてください。かかりつけ医に正確に状況を伝え られればよいですが、認知機能を専門に診ていただくような脳神経内科、認 知 症 疾 患 医 療 セ ン タ ー や 精 神 科 に 行 け ば 、 こ れ は「 更 年 期 」や「 う つ 病 」に よ る も の で は な い こ と が わ か り ま す 。逆 に 認 知 症 だ と 思 っ て 行 っ た と こ ろ 、 違 う 病 気 が 分 か る 人も た くさ ん い ま す。
皆さんネットで自分の症状を打ち込 ん で い く と 、 私 ど も の「 若 年 性 認知 症 コ ー ル セ ン タ ー 」に た ど り 着 かれます。ご本人が診断を受けても疑 っ て い る 相 談 も あ り ま す 。「 ど こを 受 診 し た ら い い で す か 」と か 、 症状 を お 聞 き し て 逆 に「 認 知 症 じ ゃ なさ そ う で す ね 」と い っ た 方 に は 、 適切な診療科などをお話します。

この他下記のような記事を掲載しています

『若年性認知症』の原因となる病気は?!

若年性認知症とうつ(状態)との違い

若年性認知症と診断されても 働ける職場はありますか?

どのような制度が利用できますか?

若年性認知症の予防や治療方法は?!

どこに相談すればいい / 相談窓口は?!

 家族から見た“気づき”のポイントとチェック項目

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