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特集  未知との遭遇『万華鏡』の世界!

2025.05.05

日本万華鏡博物館 大熊進一館長

日本一の万華鏡コレクターである大熊進一館長のプライベイトミュージアムです。

1986年から収集を始め、「日本の万華鏡文化をしっかり残していかなければならない」と、渋谷に日本で初めての万華鏡博物館として約3500点を展示していました。2012年に現在の川口市に移設しています。

博物館は館長による解説付きで見るコース(1000円)と、作るコース(4000円〜)があり、予約優先になります。

埼玉県川口市幸町2-1-18-101  Tel.048-255-2422

どーもでは過去に「日本玩具博物館」や「日本独楽博物館」など個人の博物館をご紹介してきましたが、今回は「日本万華鏡博物館」です。博物館を作られた方は玩具や独楽(こま)、万華鏡との出会いが「面白いな〜 綺麗だ〜」などと感動し興味が生まれ、同じようなものを探すようになり、気づけばすごい数になっていた。そして、収集してきた素晴らしいものを大勢の人たちにも観てもらいたい、と個人で『博物館』を作ることになったようです。

「万華鏡」は今では子どもの頃に覗いた万華鏡とは違い、さまざまな形や制作手法なども異なり、プロの万華鏡作家がいることなど知らないことばかりです。

今回は日本万華鏡博物館の大熊進一館長に「万華鏡の世界」について教えていただきました。

学んで 作って 見る 日本万華鏡博物館

実際に万華鏡を手作りしてみると、とっても簡単に作れることがわかります。

万華鏡の素晴らしいところは、誰もが世界でたったひとつの、自分だけの万華鏡を作れることです。ひとつ作ると、万華鏡のシステムがよくわかり、覗いた時に、この万華鏡は何枚の鏡を組んでいるのか類推がしやすくなります。万華鏡は見ると同時に作ると、その楽しさが何倍にも膨らんできます。

スペシャル万華鏡教室 

2ミラーと2等辺3角形の二つのミラー・システムを組み、オイルの部屋とドライの部屋を併せ持った万華鏡をつくります。視点を変えただけで、丸い2ミラー映像と無限に広がる3ミラーが楽しめる楽しい万華鏡を作ります。

大熊進一館長 万華鏡『カレイドスコープ』のお勉強  

ハワイで買った万華鏡は、 真鍮(しんちゅう)の円筒の中に3枚の鏡を正3角形に組んでありました。鏡が反転する連続映像がこんなに綺麗だとは思ってもみませんでした。そして、2枚の鏡をVの字に組んで作った万華鏡は、丸く花が開いたように見えるのです。しかも2枚の鏡の万華鏡が世界初の万華鏡(7頁)だというのです。

万華鏡を発明したのはスコットランドのブリュースター!

万華鏡は1816年スコットランドの物理学者ブリュースターDavid Brewster(1781〜1868)が35歳の時に発明しました。反射による偏光の法則や複屈折の研究では有名で、万華鏡の発明、多辺体レンズの灯台の照明灯への応用などでも知られています。

そして、私は1998年、48歳の時に万華鏡の歴史を調べるためにスコットランドのエジンバラへ向かいました。

1816年にブリュースター35歳の時に万華鏡を発明してからは、あっという間にヨーロッパ中に広まりましたが、スコットランドで作られた万華鏡は普通のお店にはありませんでした。スコットランドで売っているのは全部中国製のおもちゃみたいな万華鏡でした。

万華鏡は英語でKALEIDOSCOPE カレイドスコープ

ちなみに万華鏡を英語では、KALEIDOSCOPE カレイドスコープ(発音はカライドスコープ)といい、ギリシャ語のKALOS カロス(美しい)、EIDOS エイドス(形)、SCOPE スコープ(見る)を合体させた造語で、ブリュースターの考案です。

では「万華鏡」という言葉はどこから生まれたのだろうか。20世紀の始まり(明治30年代)中国からたくさんおもちゃが日本に入ってきています。中国語で万華鏡のことを「万華筒」(ワンホァトン)と言い、当時、日本では「百色眼鏡」と呼んでおり、筒と鏡の字が入れ替わり「万華鏡」となったのだろうと推測できます。当時の読み方は「ばんかきょう」で、100年前頃から万華鏡という呼び方が広がっていきます。

万華鏡『カレイドスコープ』の基本と仕組み

万華鏡の基本の長さは20cm。この長さは焦点距離なので鮮明に見えます。昔は20cm足りていなかったので9割ぐらいは全部ボケていました。だから小さい万華鏡を作る時には、必ず覗き窓に凸レンズをつけて焦点を合わせています。
そして、鏡の組み合わせも日本は3枚の鏡を正三角形に、ヨーロッパでは2枚の鏡を組んで丸い映像を作ります。3枚の場合は、二等辺三角形、直角三角形などもあります。それをどういう風に組んでいくかが一つのアイデアになってくるわけです。
一般的な鏡というのは、板ガラスの裏側をミラーコーティングして前面がガラスですから、必ずガラスの間に屈折が起きてしまいます。それを裏側ではなく表面をミラーコーティングした『表面鏡』が開発されたことで、綺麗な反射をとることができ美しい万華鏡ができるようになりました。世界最大の表面鏡は直径8.3mで、ハワイの天文台の望遠鏡に使われていますが、作るのに10年かかり億単位の価格です。

万華鏡『テレイドスコープ』とは

万華鏡の一つに当初からあったのが『テレイドスコープ』です。

先端にビーズの代わりに透明な球体をつけて景色を見ると綺麗な紋様に見えます。これは球体のレンズで180度の風景を鏡に反射させているわけです。

万華鏡はどこで販売されていますか?!

昔は観光地に行くとお土産屋さんで万華鏡を売っていましたし、今でも販売されています。万華鏡は昔は中国で作っていたのですが、今ではベトナムやラオス、バングラデシュなど、安い賃金のところで作られるようになっています。「今は日本人が貧乏になっているんだから、日本で作ればいいんじゃないか」と言われますが、もう日本人にこういう細かなものを作る技術がなくなっています。

出会いはハワイで見つけた万華鏡

大熊進一さん(写真)が初めて万華鏡と出会ったのは、1990年1月に家族とハワイのマウイ島に行った時にアートブティックで出会った万華鏡でした。

長さ20cmの真鍮製の円筒の先端に5cmほどの円盤が2枚ついたものを見つけ、お店の人に「これは何だ」と尋ねると、「覗いてみろ」と言われて覗いてみると万華鏡だということがすぐに分かりましたが、ものすごく綺麗な映像だったので驚きます。小学校で作って覗いた万華鏡とは全く違っていて、「いつの間にこんなに綺麗になってしまったんだ」と思って、びっくりして思わず買ってしまったそうです。それがコレクションの第1号です。

1本の万華鏡の全映像を見るのに4628億年かかる!

万華鏡は「同じ映像が二度と見れない」と言われます。表面鏡を使って作っていくと、とんでもない数の映像を見ることができるわけです。

例えば20個のビーズを入れて、1分間に6秒ごとに回転させて変えるという条件で、万華鏡が作りうる映像を見終えるためには何年かかると思いますか。

20個のビーズが入っているということは20×19×18×17×・・・から1までをかけ、6秒ごとは1年間に何回あるかを計算し、それで割ると、万華鏡が作り出す全映像を見るためには4628億年かかるわけです。そのくらいの年数がこの小さな万華鏡の中に入っているということです。だから表面鏡を使いさえすれば、いかようにも面白いものができるわけです。
4628億年という数字はとてつもない数字ですよね。ビーズの数が増えればもっと年数がかかると思われるかもしれませんが、この中にそれ以上のビーズを入れると動きが鈍くなります。また、ビーズを少なくする方が回転が速くなり、たくさんの映像ができる可能性があります。

大熊進一館長 万華鏡(カレイドスコープ)のお勉強

万華鏡は世界各地で作られています。特に美しく、アイデア豊かで楽しい万華鏡はアメリカと日本でたくさん作られています。アメリカはおもちゃからアートへ変身した地域です。私が90年に万華鏡と出会ったのもアメリカ・ハワイでした。

1996年、ニューヨーク州で開かれた万華鏡愛好家団体「ブリュースター・ソサエティ」のコンベンションに参加した時に、たくさんの万華鏡作家と出会いました。私が最初にアメリカに行った時は100人ぐらいの作家さんがいましたが、当時の人たちは年を取ってしまい、新しいものを作らなくなりました。

日本でもそういう集まりを作ろうと「日本万華鏡倶楽部」を作りましたが、今は名前だけ残っている状態です。日本にも万華鏡作家はいますが、数は多くいません。作家と呼ばれるためには自分のアイデアをきっちり形にすることが重要なわけです。だから作品として出来上がるまでに3、4ヶ月かかりますし、価格も100万円を超える場合があります。

 日本万華鏡博物館の中の日本万華鏡図書館 

博物館の中には、『万華鏡』のことが書かれている本と、○○万華鏡、××万華鏡、などタイトルに万華鏡がついている本もコレクションされています。音楽やゲームの中にも『万華鏡』をモチーフにしたものがあります。岩崎宏美さんや中森明菜さんも『万華鏡』という曲を出しており、ドリカムの吉田美和さんは『涙の万華鏡』を歌っています。

また、『カレイドスコープ』というバンドは日本にも、イギリスにもあり、ロックを歌っています。ゲームの『ベイビーユニバース』はチェッカーズの藤井フミヤさんのプロデュースによる、イメージで楽しむ3Dカレイドスコープで、様々なジュエルをチョイスして自分だけの万華鏡を楽しみます。

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