クリエイティブの力でKAiGOの世界を変える!!

『KAiGO DESiGN AWARD 2026』
現役の介護職の方が「自分の仕事がいかに素晴らしいか」に気づけていない。まず本人たちに気づいてもらい、そこから引き出したものを社会に発信することで、社会にも気づいてもらう。このサイクルをうまく作ることで、介護や福祉の見え方を変えていきたい。それが『KAiGO PRiDE』プロジェクトの始まりでした。
そのプロジェクトのひとつとして、昨年からスタートした、介護を取り巻く優れた「モノ」「コト」「アイデア」を表彰するコンテスト『KAiGO DESiGN AWARD』が開催されています。今年は2月27日、東京ビッグサイトにおいて入賞作品が発表されました。
クリエイティブの力で「介護」の魅力を発信し、介護職の誇りや専門性を高め、誰もが安心して暮らせる社会を目指す。本特集では、そのプロジェクトの意義と入賞作品を紹介します。
『KAiGO PRiDE』が目指す未来は 「介護の魅力の真ん中は『i』(愛)」
2020年に設立された一般社団法人KAiGO PRiDE(代表理事/マンジョット・ベディ)の常任理事である小口貴幸さんに、KAiGO PRiDEが設立された経緯と、今後目指す未来社会についてお話を伺いました。介護業界が抱える課題と、その解決に向けたクリエイティブなアプローチについてご紹介します。
KAiGO PRiDEのロゴで『i』(愛)を小文字にしているデザインの意図は、PRと情報発信の大原則として、「内側から広げていく」という考え方にあります。
PRは波紋のように、真ん中から広がっていくものなのです。
一人ひとりが自分の仕事に誇りを持てなければ、誰もなりたいとは思いません。
介護の魅力の真ん中は何なのか。それを考えたとき、一人ひとりのマインドであると気づきました。一人ひとりが何にやりがいを感じ、何に誇りを持ち、何を魅力に思っているのか。それを内側から発信しない限り、社会からのリスペクトにはつながりません。
だからこそ、介護の魅力の真ん中は「I=私」であり「愛」、つまり私たち一人ひとりだという意味で小文字にしています。業界に良い意味で一石を投じ、波紋が広がっていく。そんな未来を描いています。
KAiGO DESiGN AWARDに至るまでの流れ
(一社)KAiGO PRiDE常任理事 小口貴幸さん
💫介護職の友人との出会いが生んだ“気づき”
代表理事のマンジョット・ベディさんは、10年以上前から介護職の友人のもとで土日にボランティアに参加する中で、一人ひとりがプロフェッショナルであることに気づきました。
介護職でない私たちからすると気づけないような点に気づいたり、一つひとつの技術も含めて、本当に素晴らしい仕事をされています。その一方で、社会からの見られ方と内側のプロフェッショナリズムに大きなギャップがあることにも気づきました。
このギャップを解消することが、介護人材不足の解決につながる。介護という仕事へのネガティブなイメージをなくしていかなければならないと考えました。最初は、介護保険制度である以上、国がやるべきではないかと思っていましたが、そうではなく、自分たちができることを一つずつやっていくことが大切だと考えるようになりました。
私たちはクリエイターという職業の中で、クリエイティブの力で少しでも貢献できるのではないかと考え、この活動を始めました。
💫パイロット事業が賛同され、全国へ波及する
2019年、熊本県庁と厚生労働省の「生産性向上分野」のパイロット事業に応募し、採択されました。そのとき「KAiGO PRiDE」というプロジェクト名が付けられました。
パイロット事業は1年間、熊本県内の50人の介護職の方を撮影し、コンセプトを練って制作しました。この取り組みに全国から賛同が集まり、「うちの地域でもやってほしい」という声が次々と寄せられました。山形県での講演会をはじめ、各地から依頼をいただくようになりました。
2020年に一般社団法人化しましたが、直後にコロナ禍となり活動は制限されましたが、それでも、成果物だけでなく、考え方そのものにもインパクトがあったと感じています。
「まずは介護職本人が自分の仕事に誇りを持てなければ、周囲から良い仕事だと思われるはずがない」。当たり前のことではありますが、このコンセプトがこれまで明確に掲げられてこなかったこともあり、注目を集めたのだと思います。
働く本人が誇りを持つために何が必要か。その部分をクリエイティブの力で変えていけないかと考えています。
💫業界の外から力を借りるマインド・仕組みづくり
魅力発信だけで全てが解決できるとは、当初から考えていません。業界の中だけでは解決できない部分には、必ず外側からの力が必要だと考えています。
例えば、自動車メーカーや化粧品会社など、あらゆる業界が自分たちのサービスや商品を介護・福祉の分野に活かしていく視点を持つことです。「この商品があれば介護現場は楽になるのではないか」「こうしたサービスがあれば高齢者の方は、より快適に過ごせるのではないか」といった発想です。
さまざまな分野の人たちが介護・福祉と向き合い、関わっていく姿勢が必要です。そうでなければ、日本の介護のクオリティを維持することが難しくなる時が来てしまいます。
その思いから『KAiGO DESiGN AWARD』を立ち上げました。
💫現場と企業をつなぐ架け橋になればいい
商品開発に取り組む方々からは、「思いはあるが現場とのつながりがなく、本当に正しいのかわからない」「試す方法がわからない」「どう使ってもらえばいいのかわからない」といった声が寄せられています。
現場の人を巻き込むことが重要です。わからないのであれば、現場に聞いてほしい。そうした取り組みをうまく行っている人たちに光を当て、「このようなアプローチで、このような思いで商品が作られた」と発信することで、「あのようにすればよいのか」という気づきも生まれるはずです。
『KAiGO DESiGN AWARD』の参加企業の取り組みが参考になります。
KAiGO DESiGN AWARD 商品開発のポイント
💫ビジネスデザインという視点と考え方!
介護や福祉に関心を持ち、チャレンジしてほしい人が増えてほしいと思っています。その際に起こりがちなのが、新規事業として取り組もうとするケースです。それも大切ですが、ビジネスデザインとは、まったく新しいものを生み出すことだけではありません。1を1.1にする、1.2にする。すでに良いものを少し改良して、より良くしていく。その積み重ねだと思います。
すでに良いものを持っているのであれば、少し変えるだけで高齢者向けになる可能性もあります。それを高齢者向けにするのか、子ども向けにするのか、意識の向け方にはさまざまな選択肢がありますが、その中で介護や福祉という分野を選んでいただく。このアプローチが非常に重要だと考えています。
💫ニーズ(必要)か?!ウォンツ(欲しい)か?!
使う側も買う側も同様ですが、モチベーションが「ニーズ」なのか「ウォンツ」なのか、つまり必要なのか欲しいものなのかという違いがあります。日本人は比較的ニーズで考えがちです。
「自分の親の介護でこういうものが必要だから商品化しました」という発想だけでなく、「もし自分が介護を受けるなら、どんなものが欲しいか」というウォンツの視点でもっと考えてもよいのではないかと思います。
例えば、30万円近くするスマートフォンがあれば、1円のスマートフォンもあります。なぜ30万円のものを買うのか。それはニーズではなく、ウォンツによるものだと思います。
介護の分野は一般の商品と異なり、買う人と使う人が一致しない場合があります。そのため、「欲しい」という感情が生まれにくい側面もあります。
受賞企業に見る「ウォンツ」の視点
今回受賞された三和厨房さんの事例を見てみましょう。現場の声だけを聞くと、積み重ねられる割れないシンプルな食器が良いという結論になります。しかし、実際に老人ホームで生活している方は、「きれいな器で食事がしたい」と思っていても、それを言葉にしないことが多いのです。
声にならないニーズやウォンツをどう汲み取るか。そこにはビジネス的な視点も必要です。現場の声だけを聞くと、すべて真っ白な食器になってしまう可能性もあります。
その捉え方や考え方、いわばセンスの部分は、クリエイティブが得意とする領域だと思います。
💫学びの場『介護プレナーシップ コミュニティ』
商品開発の考え方や捉え方を学ぶ場として、昨年から「KAiGOプレナーシップ コミュニティ」を運営しています。「介護」と「アントレプレナーシップ」を組み合わせた造語です。介護や福祉業界に関わる方や、起業家としてチャレンジする方を『KAiGOプレナー』と呼んでいます。
一般企業や行政向けに、不定期でリアルセミナーやオンラインサロンを開催しています。専門家の話を聞いたり、さまざまなワークショップを行ったりしながら、多様なビジネスに携わる参加者同士で、どのように形にしていくかを学ぶ場となっています。
私たちの特徴は、企業だけでなく介護職の方や行政の方にも参加いただいている点です。さまざまな視点が集まることで、それまで気づかなかった発見が生まれます。そうした積み重ねを大切にしています。
💫自分の思いを強くし、誰もやらないことに挑戦する!
人の話を聞くだけでうまくいくわけではありません。むしろ、自分自身の思いを改めて強くすることが重要だと考えています。
デザインや機能で賞を狙うと、どうしても無難になりがちです。しかし、あえてどこかを尖らせることも必要です。そのためには覚悟も求められます。誰もやらないことに挑戦するからです。
そこには理屈ではなく「思い」があります。その思いを再確認する場として、マインドセットを大切にしています。
KAiGO PRiDEもクリエイティブの力で、多くの業界や人々を巻き込みながら、日本が誇る介護のクオリティを次世代へとつないでいきたいと考えています。
KAiGO DESiGN AWARD 2026 入賞者は割愛します












