1994年に日本で初めて“禁煙外来”始めました!
京都大学大学院医学研究科・社会健康医学専攻
特任教授 高橋裕子さん
10月からタバコが値上がりしましたが、外国と比較してもまだまだ安く、どこででも購入できます。タバコの価格対策に早くから取り組んできた国では、肺癌の発生率がぐっと下がっています。日本の喫煙者数も成人の約20%と下がっていますが、これは禁煙治療薬が健康保険適用になったことが大きいですが、それ以前に高橋裕子さんが日本で初めて“禁煙外来”を始めたことが大きく貢献しました。その“禁煙”のメリットについて伺いました。
高橋さんが “禁煙外来”を始めるきっかけは、消化器内科医として胃潰瘍の患者さんに「タバコを止めたほうがいいよ」と言っていると、ある患者さんが「タバコを止めました。禁煙したら家族が喜んでくれたことが凄く嬉しくて」と話されたこと。
1994年に公立病院で“禁煙外来”を始めると採算性を問われ、調べると日本には“禁煙外来”のないことが判明。反響は大きく全国から年間約600人が来院してパンク状態。そこで、禁煙した先輩が話す「禁煙教室」を開いたそうです。
その後、“禁煙外来”は二つの方向に進展します。
「小学校から、修学旅行に行かないと言っている女の子を診て欲しいとの依頼。その子はおばあちゃんのタバコを吸っていたようで、おばあちゃんと一緒に禁煙してもらって修学旅行に行けましたが、ティーンの場合はたとえ3口でもタバコ中毒になります。そこで子ども達の禁煙外来も受け付けました。
もう一つは1997年から始めたインターネットで禁煙をサポートする『禁煙マラソン』です。集団指導で行う禁煙教室が効果的なことから、薬の効果や禁煙方法を禁煙した先輩がアドバイスします。ソフトは自治体ごとに利用してもらっています」
禁煙効果のあるニコチンパッチ
1999年に貼り薬のニコチンパッチが出て、2006年に健康保険が適用され薬局でも販売されるように。2016年の中医協調査では治療を始めて3ヵ月後の成功率は8割。
「タバコを止められない方は、これ以上の楽しみがないとか俺のお金だ、誰にも迷惑かけていないと。然し、受動喫煙はすでに2004年に、わずかでも有害だと判明しています。しかもタバコを吸い終わって45分間は肺からタバコの有害成分を吐き出し続けます。
喫煙者は、俺の健康は俺が一番よく知っているといいますが、肺がんや脳卒中の怖さをほんとうにわかっているとは言えません。糖尿病も喫煙で悪化します。さらには手術の4週間前にはタバコを止めておかないと術後にトラブルが起きやすいと言われ、手術がキャンセルされることもあります。突発的な事故で手術になることもありますので、元気なうちに止めましょう」
高橋さんは「禁煙のスタート時にニコチンパッチが助けてくれますが、ニコチン切れで1本でも吸うと振り出しに戻ります。そんな時に家族や周りの人達が励ましサポートすることが大切です。そして、禁煙した人は輝いています。できないと思っていたことを成し遂げた自信が、そのあとの人生を変えるのです。その笑顔を見ることができるのが禁煙外来。医者冥利につきます」