“産官学福”によって生まれた『シブヤフォント』!!
(一社)シブヤフォント・(株)フクフクプラス
共同代表 磯村歩さん
今、渋谷駅を訪れると、100年に1度とも言われる大規模再開発の真っ只中。そんな渋谷区の長谷部健区長が2016年に就任した時に「渋谷のお土産をつくろう」とプロジェクトが立ち上がり、“産官学福”連携してできたのが『シブヤフォント』。フォントとパターン数は500種以上にのぼり有名企業が採用。その動きは全国にも広がり“ご当地フォント”が16地区にできているそうです。その仕組みについて磯村歩さんにお伺いしました。
磯村さんは「このプロジェクトの鍵は“産官学福”の連携で、特に官が加わることは珍しい」と言います。
プロジェクトには、当初8カ所の障がい者支援事業所と磯村さんが指導している桑沢デザイン研究所の学生が参加し、「学生から障がいのある人の描いた文字がユニークで味わいがあるので、フォントデータにしたいと提案がありました。フォントであれば、多くの人に使ってもらえ、社会に広がる可能性がある。文字だけでなく柄・文様をデジタルプリントしようといったアイデアも出て採用になりました」
2017年の後半から障がい者支援事業所と協働で『シブヤフォント』をライセンス販売していったそうです。
ただ単純に障がいのある人の文字や絵をスキャンしてフォント・パターンを制作したわけではなく、学生は障がい者支援事業所に訪問し、障がい者と交流しながら、共に作り上げていったようです。
「フォントとパターンはおおよそ517種類(2023年度時点)あり、契約されている企業や団体は累計で80社以上、商品数は400〜500種類ぐらいあります。
契約企業にはワールドからユニクロ、キヤノン他。GoogleのWeb用フォントサービスにも採用され、しまむらの子供服の採用においては全国400店舗で販売されました」
『シブヤフォント』は個人が利用する場合は、フォントデータは無料で、パターンデータは一律500円です。
企業に対しては、使用許諾契約を締結した上で、データ利用料をいただいています。
そうした売上から、事務局の手数料を引いて障がい者支援事業所に還元する仕組みで、2022年度は約400万円を還元しているそうです。
全国に“ご当地フォント”
この春には京都フォントとヨコハマフォントなどが加わり16地区に。全国津々浦々に広げていきたいという磯村さん。
「“ご当地フォント”はデザイン関係企業と障がい者支援事業所の連携が多く、私どもとしては、障がい者支援事業所との連携の仕方、フォント・パターンの制作方法、ライセンス契約の進め方、企業営業の仕方などをトータルでご支援しています。それぞれの地区でフォント・パターンデータを直接販売してもいいですし、当社が運営するご当地フォント公式ウェブサイトに登録して販売することもできます」
磯村さんはシブヤフォント事業によって渋谷区が障害者就労の先進地域になることを夢見ているそうです。