学ぼう! 犬の行動と習性について
NPO法人日本ペットドッグトレーナーズ協会理事長 鹿野正顕さん
私の生き方と学びにご紹介しました鹿野正顕さんに、ペットの行動や習性についてお教えいただきます。
日本では20年前にペットブームを迎え、一時は国内で1300万頭もの犬が飼育されていました。ペットブームが落ち着くと、その飼育頭数も年々減少傾向にあり、今では900万頭を切るまでになりました。しかし、昨年から続くコロナ禍では「生活に癒やしを求めて」再び犬を飼う方が増えましたが、その反面、飼育や問題行動で困っている飼い主も少なくありません。
人気犬は20年ちかくチワワ、トイプードル、ダックスフンドのトップ3が不動でしたが、近年では柴犬の人気も上昇しています。
犬のペットブームの要因の一つは、多くの団塊の世代がかつて犬を飼育した経験者であることです。そして、その団塊の世代の人たちが高齢化に伴って犬を飼わなくなったことも、飼育頭数減少の一要因と考えられています。「いま社会問題の一つになっているのは独居老人の犬の飼育から生じる様々な問題です。例えばその方の介護が必要になった際に、ヘルパーさんなどに犬が吠えて噛みついてしまう問題が増えたり、孤独死がわかり飼われていた犬の貰い手をどうするかということです。また、団塊の世代が老人ホームに入る時に犬と一緒に入れないところも多い。自分が亡くなった時に犬をどうすればいいか。体力的にお世話できないといった課題もあります」と鹿野さん。
また、最近はドックトレーナーの勉強だけでなく、介護福祉士の勉強もし、資格取得後にペットと住める介護施設に就職して、お年寄りの介護と犬の面倒もみるという職域も広がっています。
犬の躾のウソ・ホント?
Q:犬は散歩に連れて行かないといけないですか?
鹿野:散歩は気晴らしのためには必要ですが、運動不足の解消にはなりません。犬は体力があるのでシベリアンハスキーだと10km 以上歩かないと疲れません。小型犬でも走らせれば別ですが、30分ぐらい歩くだけでは疲れません。
基本的に犬というのは飼い主など人と遊ぶことがすごく好きなので、一番いいのは引っ張りっこするとか、ボール投げを飼い主がやってあげることです。
Q:犬の散歩は排泄させるため。飼い主は犬にマーキングさせないといけないのでしょうか。
鹿野:基本的には排泄は家の中で済ませてから外に行く、という考え方が強くなってきています。
先日三重の方で、いろんな犬がおしっこをかけた電信柱が腐って折れたという記事がありました。犬の尿はペットボトルの水で流すだけでは取れないんですね。だから不適切な場所でさせないことが大事です。マーキングをするということは、マーキングを容認することです。マーキングをやめさせるには、物理的にそういうところに行かない。ご褒美をあげて褒めながら意識を飼い主のほうへ持っていくことが重要です。
Q:犬の表情や行動で分かりやすいことは?
鹿野:一番わかりやすいのは耳や尻尾の傾きによって、犬が今どういう心理状態なのかがわかります。
しっぽの振り方でも高さが違ったり、耳も立っている時と後ろに倒れている時があります。耳が後ろに倒れているのは恐怖を感じていたり、甘えている時です。それを見ながら飼い主さんも対応すればいいわけです。
飼い主さんから「普段おしっこがきちんと出来るているのに、お留守番させている間にわざとおしっこをしていると。どうすればいいですか」という相談がありました。飼い主さんは「嫌がらせをしているんじゃないか」とも言われます。それは犬の認知機能や行動特性の面から、嫌がらせではなく飼い主と離れる不安が原因であることがわかっています。犬は飼い主さんがいなくなって、恐怖と不安でどうしようもなく漏らしてしまったのです。それなのに帰ってくると叱る。叱ると犬は、飼い主さんがいなくなるとさらに不安傾向が強くなって、また漏らしてしまい悪循環になっていきます。
Q: テレビ番組で、犬の目の前に牛肉を置いて「待て」といって1分我慢できるかというのがありました。
鹿野:昔から餌を目の前に置いて「待て」と言うことが躾に大事だと言われていましたが、今はやってはいけないということになっています。あれはただ餌をちらつかせておあずけさせているだけ。犬は餌が目の前にありちょっとでも動くと怒られてしまうので委縮して動かないだけなのです。このようなことを繰り返すと、食べ物をもらえないのではないかという不安が強くなり、犬によっては食べ物を守ろうとして飼い主に対しても攻撃的になってしまいます。目の前に出すのではなくて、用意してる間に「待て」と言って用意が終わったら「ハイどうぞ」というのはオッケーです。