人生100年時代をより良く生きるためのWell Agingへ
(一社)日本ウエルエージング協会 会長 小川利久さん(66歳)
Well Agingとは「上手に歳を重ねる」こと。1981年に日本ウエルエージング協会を創設したのは医師の吉田壽三郎さん。生涯元気に生きて、人の手を煩わせることなく自立して生きることを目標に。6代目会長の小川利久さんは、人生100年時代をより良く生きるために、創設時の構想だった「ウエルエージングセンター」をソーシャルメディアの中で実現しようとしています。新たな時代への挑戦についてお伺いしました。
同協会は1989年にゴールドプランができ、高齢者のことを知ろうとインスタントシニアのプログラムをカナダ政府の許可を得て導入。ゴーグルや杖、歩きにくくするために錘(おもり)をつけ、サポーターで関節を制御して高齢者を共感体験する『インスタントシニア』をご存知の方も多いと思います。
「人生100年時代」を迎え、新たな役割と活動を始めようとしています。
「今は高齢者に対する価値観や捉え方も変わってきています。若い人には小中高大学と社会に出るための教育はありますが、65歳でリタイアした後の教育は体系化されていません。体系化しようとしてもキャリアが全く違うので難しい。私は科学的なエビデンスを高齢者に求めるんじゃなくて、どういう風に生きてどういう風に死んでいきたいのかというエイジングモデルを発掘し、高齢者の共感体験(ノウハウ)を物語性としてナラティブ(ナレーション)で伝えていこうと思っています。
また、認知症になった時にどういう不便を感じ、どういう心でいるのかなど重度化した状態を知ることによって、逆に軽度へ遡っていくと予防できる術がわかるのではないかと思っています」
“感動”の数で介護を評価
小川さんはグループホームのユニット化を先駆けて実践し、さまざまな老人ホームに関わってきた経験があり、新しい介護情報に「認知症体験」と「看取り体験」をプログラムとして挙げ、老人ホームの評価をシステム化しようとしています。
「私はウエルエージング・アカデミーというプラットフォーム作っています。施設現場で“感動”を与えたかを評価基準にし、いろんな人に評価してもらい、こういう施設を選びましょうと動画や音声にして発信していく考えです」
小川さんはYouTuberや音声、X、Instagram、ブログなどの媒体で情報発信していることから、これからの情報発信を協会活動と連携していく考えです。
超高齢社会に向け情報発信の仕方も変革しようとしており、協会の活動も日本から世界へと広がっていく役割を担っているようです。
「海外に住む日本人は日本の制度や仕組みがわからないので、日本に残している親の介護相談を受けてくれる人がいるだけでほっとされます。今チームを作って海外にいる方の相談を受けています。
今後はお年寄りにスマホのボタンを押してもらい、自分の体験や生き方を音声として世界中に拡散する。それが個人の役割の一つにもなる」これが「ウェルエージングセンター構想」だそうです。