世界の価値観は“資源は無限にあるものではない”
NPO法人ユニバーサルファッション協会
理事長 柳原美紗子さん
2025年に団塊世代が75歳以上になり5人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上となります。この高齢化が社会のシステムや商品化に影響を与えています。ユニバーサルファッション協会も「年齢、身体、障がい、性別、国籍などにかかわらず、誰もが豊かなファッションを楽しめる社会を作ること」を目指し理念に掲げています。私たちが思っている以上にファッション関係は進化している状況を柳原美紗子さんにお伺いしました。
1998年に設立したユニバーサルファッション協会は、今日までユニバーサルファッション(略:UF)のデザイン開発に関する研究や商品開発を行ってきています。それを牽引してきたのは今井啓子名誉会長で、母親を通して高齢社会とユニバーサルデザインを見つめ直し、2012年にSUDI(湘南くらしのUD商品研究会室)の有志と『オヤタメ商品 ヒットの法則』の本にまとめています。高齢化が社会システムや商品開発に影響を及ぼし、発刊から12年後の今日においては、さらに高齢化は進みSDGsに象徴されるように、物作りや考え方の価値観が変わってきています。
設立当初から関わってきた柳原美紗子さんは今年4月に理事長に就任。協会としてもこれからさまざまな活動や商品開発を予定しているそうです。
「私たちが幼い頃は親が私の体型に合わせて洋服を作ってくれましたが、やがて企業が量産化するようになり流行も企業が作り、その洋服に体型を合わせるようになってきました。それでも体型や障がいがあって洋服が着にくい人たちへの対応ができていなかったことから、UF協会としても四方向に伸び縮みするストレッチ性の素材や寒くても暑くても耐えられる素材などで着やすい洋服を開発してきました。
また、介護現場で働く作業療法士さんや理学療法士さんが、身体の不自由な人たちが着やすい洋服を研究し、自ら服飾学校に通って洋服作りに転職されたり、企業と商品開発を進める人もいます。それらの商品はネットで購入できる時代になってきています」と現場を知る人たちが参画する時代になっているそうです。
協会設立当初は「ユニバーサルファッション」という意識が高かった時代でしたが、今の若い人たちにはピンとこない時代になっているそうです。それは「ユニバーサルファッション」と謳わなくても、それらが当たり前の時代になっているからかもしれません。
「世界の価値観は資源は無限にあるものではない。洋服の素材においてもヨーロッパでは地球環境に配慮した素材を。化石資源を使わずに、何度でも再生できるリサイクル繊維でなければならない、そういう価値が選ばれ生き残っていくという考えです。やがて日本もそのようになっていくと思いますが、私ども協会としてもそういう考えで物作りし、啓発活動を推し進めて行こうと思っています」と話されています。
新しい物作りの一つに縫い目のない生地で洋服作りに取り組んでいるそうです。
特定の人だけでなく万人に優しい洋服作りが誕生するようです。
※写真右は佃 由紀子副理事長