「不便さ」「良かったこと」調査から共用品は生まれる!!
(公財)共用品推進機構
専務理事兼事務局長 星川安之さん(63歳)
“共用品”や“共用サービス”をご存じですか。障がいの有無にかかわらず、多くの人が使いやすい製品やサービスのことです。例えば、スマホの着信を振動や光で知らせたり、温水洗浄便座やノンステップバスなども共用品です。このように誰かの「不便さ」と「良かったこと」を調査して、その結果を「より使いやすい製品」に活かせるようデータベース化し、一般公開しているのが共用品推進機構です。その活動について専務理事で事務局長の星川安之さんに伺いました。
“共用品”のルーツは1837年頃の江戸時代にありました。柏餅の葉っぱを表と裏(ザラザラ面)に分けたことで、結果的に目の不自由な人が触って中身がこしあんか、みそあんかの判別ができるようになっています。不便な人には「使えるように」、一般の人には「より使いやすくした」のが“共用品”です。
共用品推進機構が出来た経緯を伺うと、「40年ほど前、私はタカラトミーで障がい児のオモチャ作りを進めていました。障がい児専用でなくても、障がいのない子ども達と一緒に使えるオモチャがいいだろうと、トミー1社でなくてオモチャ業界全体で基準作りしているうちに、他の業界の人たちも一緒にやろうということになりました。20人ほどの市民団体が8年間で400人になり、300社の企業が参加。障がい者当事者団体や行政も入り始めて、これでは市民団体では無理だということで1999年の4月に財団を立ち上げたのです」と星川さん。
世界にもなかった『共用品』
共用品の開発を始めた当初は難しいテーマにするとすぐに結果が出てこないため、結果が出やすいと思った視覚障がい者を対象に始めたそうです。
「目の見えない子ども達300人を調査して、触って分からないモノを触って分かるように、音に替えたりすればオモチャになるだろうという想定のもとに作りました。それらを “共用品”として展示会で披露するとたくさんの人が来てくれました。その中の聴覚に障がいのある人達から『俺たちのこともやって欲しい』といわれ、障がいの調査をするようになるといろいろな課題が出てきて、パンドラの箱を開けたみたいになってしまったんです。
いろいろなプロジェクトをつくり、識別班がプリペイドカードやパッケージの識別を手がけました。それをJIS 規格にして『国際規格』にもできることを知り、外国のことを調べていくとほとんどが福祉用具で、共用品は作っていないことが分かりました。一般製品と福祉用具の中間的な“共用品”は日本しかやっていなかったこともわかりました。そして、“不便なこと” “良かったこと”調査を始め、それによって多くの共用品が開発され市場規模が拡大していくと、企業のトップも“商品開発を早くやれ”となってきました」
開発当初は珍しかった共用品ですが、今日では当たり前のように生活に溶け込み、高齢者の生活の不便さを無くしてくれています。
星川さんは「共用とかユニバーサルとかいっていないで、普通のモノ自体、誰もが使えることが前提になっていればいいなと思っています」
あなたの身の回りを見てください。共用品があふれていますよ。