知ってますか? 認知症 ㉓
川崎幸クリニック 杉山孝博院長
3万8000人が若年期に発症
幅広い支援早急に整備を
認知症介護に関して、今後大きな問題となるテーマが4つある。
「若年期認知症」「一人暮らしの認知症の地域ケア」「認知症の人が認知症の人を介護する『認認介護』」「ターミナルまでを含めた初期から末期までの継続的なケア」である。
今回は「若年期認知症」を取り上げてみる。まずは認知症の人と家族の会の調査に寄せられた声を聞いてほしい。
「何と言っても『徘徊全盛期?』は大変でした。将来の不安と世間の目を気にしながら、雨の日も、朝、昼、夜もかまわず歩きたい夫について歩いていた頃、よからぬことを考えたのもその頃でした」(55歳で発病した夫を11年間介護している妻)。
「何よりも経済的なことが心配です。年金生活の中から入院費、看護費、付添費などをどう捻出したらよいのか途方に暮れてしまいます」(59歳で発病した夫を1年間介護している妻)
若年期認知症とは、65歳未満に起こる認知症であって、厚生労働省研究班の調査によれば、全国に3万8千名の患者がいると推定されている。
若年期認知症の人も介護保険のサービスを利用できるようになった。しかし①活動性が高いため受け容れてくれる施設が少ない②若年期認知症にあったプログラムが用意されていない③手間のかかる割に要介護度が低く認定されるためサービス量が限られる―など介護負担の十分な軽減になっていないのが実情だ。
認知症の人と家族の会が実施した「若年期痴呆介護の実態調査」(2002年)によると、発症年齢は、50歳代後半が41.0%、50歳代前半が31.1%と50歳代が最も多く、40歳代も10%を超えていた。
発症時には62.1%の人が仕事についていたが、認知症が進行し仕事を辞めさせられた人が18%、自ら辞めた(たぶんやむを得ず辞めた)人が75.4%と、実に9割の人が仕事を続けられなくなったと回答した。
妻が夫を看るケースが44.7%、夫が妻を看るケースが37.4%と、配偶者同士の介護が80%を超えていた。
自分の認知症や配偶者の介護のため、退職したり責任の軽い職場へ配置転換されたりして、経済的に厳しい状況がうかがえる。認知症が重度障害と認められないために、ローンを払い続けなければならない人もいる。
若年期認知症をめぐっては医療や介護の領域のみならず、就労、経済的問題、遺伝、子供の養育・結婚、介護サービスの質的・量的不足などといった問題が山積している。総合的な対策が早急に望まれるのである。