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特集 『公園浴』で健康づくり!

岩崎 寛教授  千葉大学大学院 園芸学研究院/千葉大学 園芸学部

私たちは森を歩くと澄んだ空気によって心地よさを感じますよね。これは『森林浴』効果として知られていますが、実は身近な公園でも同じような効果が得られる『公園浴』を、20年前から提唱しているのが千葉大学・園芸学部の岩崎寛教授です。

人の五感を刺激する草花や菜園においても、同様の効果があることを研究しています。すでに皆さんは草花を育てたり、菜園で野菜作りにいそしんでいる人が多いのも、その五感を刺激していることを実感しているからだと思います。

今回は緑と花の健康効果の『公園浴』を中心に、ドイツの気候療法、地域ケアの訪問園芸、出前園芸についてお伺いしました。

❀25年前から「緑で健康になる」ことを研究しました!

千葉大学は日本で唯一の園芸学部があり「緑の中での人の健康効果」を研究しています。学部は百年以上前からですが、昔の園芸は農学的な生産がメインで、福祉的な活用までは至らなかったのです。

私が「緑と健康」の研究を始めたのは30年ぐらい前ですが、誰も関心を持ってくれませんでした。「緑で健康になるなんて怪しい」と、論文を出しても審査できる先生がいない時代でした。

『公園浴』は156年前に私が作った言葉で、かなり前からエビデンスも出していました。緑と人の健康で『森林浴』はご存知ですが、昔はエビデンスがなく、どういう成分が体にいいのか国が森林調査をして分かってきました。そして森林総研は「週に1、2回森に行かれたらいいですよ」と説明。
私は週に12回森に行くことなんて大変だな、町の公園であれば週に12回は行けるんじゃないかと思いました。その時、神戸市役所横の中央公園で、そこの楠木の成分と人への効果を調べたんです。そうすると森林と同じ効果があることが分かったんです。

『公園浴』 高い木がなくても効果はあります!

『森林浴』の森林効果というのは、樹木からの揮発性物質のフィトンチッド(森林の香り)という成分で調べました。

神戸市中央公園の楠木の成分を部屋中に充満させて、人にストレスをかけた場合と成分がないところでストレスをかけた場合とでは、楠木の成分があるところがストレスを半減しました。ということは公園にある木でもそういう成分を出しているので、森まで行かなくてもいいんじゃないのと『公園浴』という言葉を使いました。

そして、公園に大きな木がなくても全然大丈夫です。芝生でも調べましたら同じように揮発性の成分を出しているので、木に限らず植物と接するだけでいいわけです。

コロナ禍で草花の栽培は盛んになりました!

コロナ禍で多くの人が公園を利用し、東京都は公園が多すぎて閉鎖「何で閉鎖なの」と思った「緑の日」に、新聞社が公園再発見と健康づくりというテーマで『公園浴』を掲載したところ、東京こども病院の理事長さんも公園がいいよと薦めていただいて、ようやく注目されるようになったわけです。
コロナで多くの人が公園に行くようになりましたが、実は植物を栽培する人も増えたんですよ。ホームセンターは草花の苗がすごく売れて、園芸業界はウハウハでした。

 

園芸療法も同じ健康効果があります!

園芸療法の基本は植物を育て収穫することですね。

なぜコロナ禍で多くの方が植物を育て始めたかと言うと、園芸は将来への楽しみや期待感があるからです。

来週芽が出ているんじゃないか、お花が咲き実ができるんじゃないかと先の楽しみがあるわけですね。あのコロナ禍真っ最中では薬もできるか分からない、明日がわからない時に楽しみを持てることがなかった。でも植物だけは維持管理をきちんとしていると花を咲かせてくれる。多くの人がそこを求めたんですね。

もう1つは収穫する。花を育てて花瓶に入れて飾ったり、野菜は収穫に関わって触ったりすることに満足感や充実感、幸福感を得られるわけです。


五感を楽しむ『味覚狩り』も流行っています!

春はイチゴ狩りが流行っていますよね。単に食べたいのであればスーパーで数百円で買えるのに、なんでわざわざ遠いところまで行って1000円以上払って、自分で摘んで食べているのかということはまさに五感を楽しんでいるのです。我々はそこに価値観を持ってお金を払うわけです。

公園の始まりは公衆衛生のために作られた!

もともと公園の始まりは公衆衛生のためです。昔はお金持ちしかお医者さんにかかれなかった頃に、公園の環境で元気になって欲しいということで全国に増えたんです。国立公園や国定公園の管轄は今でこそ環境庁ですが、昔は厚生省でした。

公園が公衆衛生や健康のための場所だったんですが、それがいつの間にか子供の遊び場に意識が変わってきました。

今、多くの人が健康を気にするようになり、公園を利用するというのは新しいことではなくて、元々そういうために作られていたから全国どこでもあったわけです。現在は全国に11万ヵ所の公園があります。

岩崎 寛 著書

「みどりの処方箋」ヒーリング時代の緑の使い方

食物や植物の健康効果について研究を始めて25年。

植物の効果を知っていただきたい、生活の中に取り入れて健康になっていただきたいという思いから、2017年に雑誌グリーン情報で連載したものを再編集しました。
ストレス社会と言われて久しいですが、これからは植物の出番です。これまでの研究成果から緑による心や体への健康効果。さらには人とつながる社会的健康効果などが明らかになっています。ストレス緩和や地域ケアなどに活用ください。

価格は1800円+税金 発行元:株式会社グリーン情報


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