知ってますか? 認知症 (38)
川崎幸クリニック 杉山孝博院長
原因は脳の病変、ストレス
早めの受診と対策を
今回から認知症の原因について考えてみたい。
認知症の原因には、脳そのものの病変による一次的要因と、脳以外の身体的、精神的ストレスによる二次的要因がある。
まず一次的要因には、脳萎縮性変化(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)、血管性変化(血管性認知症)、内分泌・代謝性・中毒性疾患(甲状腺機能低下症、アルコール性認知症など)、感染性疾患(クロイツフェルト・ヤコブ病、脳梅毒による進行麻痺)、手術による効果が期待できる正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍といった疾患がある。このように認知症を起こす原因はたくさんある。
早期診断・早期治療により症状が改善する場合があるので、できるだけ早く専門医に診てもらうことが必要だ。
二次的要因には、環境の変化や人間関係、不安、抑うつ、混乱、身体的苦痛などがある。
入院や転居といった環境の変化で認知症が出現することや、骨折や貧血など体の変化により認知症がひどくなることがよくある。配偶者の死や定年退職をきっかけに認知症が始まった例も少なくない。
二次的要因を見つけて適切な対策をとるのが実は最も重要で有効な方法である。
主な一次的要因について説明してみたい。
アルツハイマー病あるいはアルツハイマー型認知症では、大脳の神経細胞の萎縮と「老人斑」と呼ばれる変化が見られるのが特徴だ。原因は不明だが、ベータアミロイドというタンパク質の老廃物が多量に蓄積し神経細胞や神経のネットワークが破壊されることが分かっている。
頭部CTなどの検査をすると、中年期以降に大脳、とくに記憶中枢のある側頭葉の海馬と呼ばれる部分の萎縮が認められる。
物忘れから始まって徐々に進行する。運動神経は侵されないので初期には体はよく動く。進行が緩やかになることはあっても、次第に大脳機能が喪失して寝たきりになっていく。
40歳後半から65歳未満に発症した場合をアルツハイマー病、65歳以降に発病した場合をアルツハイマー型認知症と呼ぶ。認知症の原因として最も多い。
初期の段階であれば記憶力を改善する塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)などが使われるようになったが、脳の萎縮そのものを治すものではない。認知症が進行すれば、数年で薬の効果は期待できなくなる。