知ってますか? 認知症 ⑫
川崎幸クリニック 杉山孝博院長
介護のコツは、ほめること
介護者は認知症になるべし
「本人の言うことを受け入れて、穏やかに対応するのがよいと先生は言われますが、介護する身にもなってください。言うことを聞かず、迷惑なことばかりする人にいい顔はできませんよ」と多くの介護者は訴える。
それに対して、私は「毎日慣れない介護をし続けなければならないあなたの気持ちはよくわります。しかし、この時期は介護者にとっても本人にとっても一番つらい時期なのです。良い感情を与えるようにしたほうが結局、あなたにとっても楽になるはずです」と答えている。
介護に慣れてくれば、多くの家族は、感情を荒立てさせない介護ができるようになるが、少しでも早く楽な介護をするには、4つのコツがある。
第1のコツは、「ほめる、感謝する」。どのようなことをされても、「上手ね」「ありがとう。助かったわ」などと言い続けていると、次第に本人の表情や言動が落ち着いてくる。
ぬれた洗濯物を取り込んでいるのを見て「お母さん、乾いてないのに取り込んで!洗いなおさなければいけないでしょう。どうしてこんなことをするの」と言うと、「手伝ってあげたのに、怒るなんて、嫌な人だ」となってしまう。
それよりも、「お母さん、手伝ってくれてありがとう。後は私がしますから、居間でお茶でも飲んでいてください」と言ったほうがよい。
第2は、「同情」で、「ああ、そう」「そういう事があったのですか」「大変ですね」のように相づちをうつこと。
多くの家族・介護職は正しく答えなければいけないとまじめに思って、教え込んだり、聞き返したり、訂正しようとする。それでうまくいくのであればそれでよいが、くどい人、うるさい人、嫌な人ととらえられる場合も少なくない。
それよりも、いかにもよく聞いているような印象を与えながら、適当に相づちを打つほうが楽であるし、本人も穏やかになる。しかし、本人が正気にかえって、「私の言うことを聞いてくれない」と言うときには、「うっかりしてごめんね」などと、とぼければよい。
施設などで、認知症の二人がいつまでも楽しそうに話している光景はよく見られるが、互いが自分の言いたいことを言って、話の内容が全く合っていない場合はよくある。
「うん、うん」「そうだ」とお互いに相づちをうっているから楽しいのである。だから、私は介護者に「介護者はすべからく認知症になるべし!」とも言っている。(続)