困った介護 認知症なんかこわくない㉘
川崎幸クリニック杉山孝博院長
認知症をよく理解するための8大法則・1原則
第8条 「ほっと一息、気は軽く」
24時間続く緊張に耐え続けることは、誰にとっても容易ではありません。まして、その緊張がいつまで続くか見通しがつかないときには・・・。
普通の人が、長い人生の中でそのような緊張状態を経験することはそれほどある訳ではありません。ところが、認知症の人を介護する過程では必ずと言っていい程の家族も経験します。
認知症の人が夜寝ないで大騒ぎをしたり、体力があって徘徊が激しいときには、精神的にも身体的にも家族は疲れきってしまいます。そして、このような状態がいつまで続くのだろう、と考えるだけで参ってしまうものです。
これが危篤状態の病人の家族であれば、案外頑張れるものです。せいぜいあと何日間しかもたないという気持ちがあるからでしょう。
24時間介護でなくても緊張状態が毎日続けば同じでしょう。
「すべてを忘れて好きなことのできる週1回の息抜きの時間が、私には貴重でした。その時間がなかったら、数年間の介護を続けることが出来なかったでしょう。家に帰ると、家の中がめちゃめちゃになっていましたが、自分が楽しんできたのだからとおもって、腹もたちませんでした」と一人の介護者は話していました。
デイサービス、ショートステイ、訪問介護などの利用や、隣人への依頼などによって、介護者はむしろ積極的に息抜きをしてほしいものです。
一生懸命に介護しようとする余り頑張り過ぎて行き詰まってしまうことがよくあります。上手に介護していくためには私も割り切って休むことも必要なんだ、と思うべきでしょう。
そして、周囲のものも、「この程度のことで休もうとするなんてだらしない」「年寄りを老人ホームに預けて自分たちは旅行に行くなんてけしからん」「私がホームヘルパーとしてきて一緒に看てあげようと思っているのに、家族は本人をおいて買い物などで外出してしまう」「本当に困ったときでなければ制度は利用できません」などと、24時間介護を続けてきて、ほんのわずかでも息抜きしたいと思っている家族に対してつらい言葉を投げ掛けないで欲しいものです。
制度をどのように利用したところで、また、周囲がどれほど援助したところで、大部分の時間は家族が介護しているわけですから。そして、介護力を維持・強化するためにも息抜きの時間を積極的につくることは必要条件といってよいでしょう。
自分が同じ立場だったら、どう感じるかを考えながら、介護しやすい環境作りをしたいものです。