48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

困った介護 認知症なんかこわくない ㉗

2019.08.03

 川崎幸クリニック杉山孝博院長

認知症をよく理解するための8大法則・1原則

第4章  上手な介護の12ケ条

第7条 「仲間をみつけて、心軽く」

大変な亭主関白のAさんは、奥さんの介護ひとつひとつに文句を言い、一言でも口答えすると手にもった竹のムチでたたこうとするなど、介護に苦労の多い人でした。それでも最後まで自宅で看続けた奥さんは、看取った後で私にしみじみと次のように話されました。
「こうして頑張ってこれたのは、先生や看護師さん、それとBさんのお陰です。本当にありがとうございました。途中で何度死のうと思ったか知れません。そのたびに、Bさんに励まされました。」
 川崎市幸区御幸東地区社会福祉協議会婦人部の人たちが中心となって行っている老人デイケア「やすらぎ」の場を通して、Aさんの奥さんはBさんを知ることが出来ました。認知症の症状を示し続けた祖母を7~8年間介護して99歳近くまで看たBさんは、思いやりがあって相手の気持ちをつかむのがとても上手な人です。Aさんの奥さんは極限状況の中でBさんの援助をどれほど心強く思ったことでしょう。

同じく、老人デイケア「やすらぎ」の家族の話し合いの席で、「介護を初めてから数年間外へ出たことがなかったのですが、先日Cさんに誘われてハイキングに行き、喫茶店でお茶を飲みました」と本当にうれしそうに話した人がいました。経験のない人にとっては信じられないことでしょうが、介護のある時期には当たり前の、ささいな事もできないし、また、それが実現できると大きな喜びを感じるものです。

どんな便利な制度や介護用品でも、それを利用するときには心理的負担(心理的ハードル)があります。その負担の大きさは、その人の性格、介護の経験、地域社会の理解などによって変わりますが、介護の経験者や専門家のアドバイスによっても大きく変わります。前回の「囲うより開けるが勝ち」と同じことになりますが、気の合った仲間を見つけ相談できることは、介護を楽にする大切なポイントです。

普段から何でも話せる知人を一人は持つこと、家族の会など同じ悩みを持つ人たちの集まりに積極的に参加すること、特に隣近所の人たちとの付き合いを大切にして気軽に頼み合えるようなつながりをもつことが重要であると思います。

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