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困った介護 認知症なんかこわくない ⑱

2018.06.22

川崎幸クリニック杉山孝博院長

認知症をよく理解するための8大法則・1原則                                                                   第4章     上手な介護の12ケ条

第2条「割り切り上手は、介護上手」

多くの認知症の人は、家族が一生懸命お世話しても、否、お世話すればするほど認知症の症状をひどく出すものです。家族はまじめで熱心であるあまり、精神的にも身体的にも消耗しきってしまいます。

こんな時、誰かが別の見方、考え方を教えてあげて、家族が上手に割り切ることができるようになると、介護はずっと楽になります。

「冬でも裸に近い状態で一晩中動きまわっていて、何回着せてあげてもすぐ脱いでしまします。夏は夏で、午後3時ごろになると雨戸を閉めてしまい、厚着をしています。汗をかいて暑そうなので着物を脱ぐように言っても聞き入れてくれません。カゼをひいたりするのが心配です」

「お風呂にはいるのをいやがって困ります。主人に手伝ってもらってやっと入れているのですが、毎日がまるで戦争です」

快適で文化的な生活を楽しんでいる私たちは、認知症の人に対しても、自分たちと同じ基準や感じ方を当て嵌めようとしがちです。もちろん、そのことは、「思いやり」という点では大変重要なことです。しかし、様々な規制や拘束から抜け出た認知症の人にとっては、介護者の気持ちを理解出来ず、かえって煩わしいこと、余計なこと、無理やり押し付けられることなどと感じられることが多いようです。

そんな時、次のような考え方をすると、混乱から早く抜け出せると思います。

「せいぜい数十年前までの日本や、今日でも世界の各地の現実をみれば、清潔な環境、豊富な衣食、安全快適な生活、毎日の入浴などはむしろ異例であって、それこそ約百万年の人類の歴史からみれば逆に”異常”である。普通でないのはむしろ私たちのほうで、認知症の人は正常な行動をしているのだ。」

実際問題としても、苛酷な環境で裸に近い状態で生活している人が、皆カゼをひくわけではありません。テーブルや床の上に落としたものを食べただけでお腹をこわすことはありません。

介護に行き詰まったら発想の転換をするのが大切です。この発想の転換は一人だけでは難しいので、認知症相談や家族の会での話し合い、介護教室や本などで他人の経験を聞き適切なアドバイスを受けることで容易になることが多いのです。

認知症の人を介護する中心はあなたです。上手に割り切って負担を軽くして長続きのする介護を心がけてください。

 

 

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