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困った介護 認知症なんかこわくない⑪

2017.08.30

〈第3法則〉

自己有利の法則

「自分にとって不利なことは絶対認めない」というものです。

「大事なものが無い」と大騒ぎするので、家族も一緒になって捜したところ、認知症の人が使っているひきだしの中から見つかった場合、家族から「そらごらんなさい。ここにしまっておいたのを忘れたのでしょう。おじいちゃんしかここにしまう人はいないんだから」と言われても、「いや、自分はそんなところへしまった覚えはない。誰かがそこにしまったんだ」と必

ず言い返します。

言い返しがあまりにも素早く、しかも難しいことわざなどを交えたりする

ので、周囲の者は本人が認知症になっているとはとても思えません。しかし、言い訳の内容には明らかな誤りや矛盾が含まれているため、「都合のよいことばかり言う自分勝手な人」「嘘つきだ」など、本人を低い人格の持ち主と考えて、そのことで介護意欲を低下させてしまう家族も少なくないようです。

こうした認知症の人の言動には、自己保存のメカニズムが本能的に働いているにちがいありません。つまり、人はだれでも、自分の能力低下や生存に必要なものの喪失を認めようとしない傾向があり、認知症の人

も同様なのです。

社会生活に適応するということは、本能の直接的な現れを推理力・判断力などの知的機能によって抑制することにほかなりませんが、認知症の人は知的機能が低下するため、本能的な行動が表面に現れやすくなっているのです。

「自己有利の法則」を知っていると、無意味なやりとりや、かえって有害な押し問答を繰り返さずに混乱を早めに収拾することができるようになります。

日々の介護で混乱されている家族は、「自分たちはこの法則で説明できる症状に振り回されているのではないか」と考えてみて下さい。

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