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あなたの『終の住処』はどこですか?!〈連載8〉

病気になる前から栄養知識を持ってもらうことで

低栄養』と『糖尿病』は改善できる!

NPO法人 京都栄養士ネット(下) 

管理栄養士 樹山敏子さん、荊木文子さん

前回は「京都訪問栄養士ネット」が在宅を訪問して、在宅療養されるかたの課題やそれに向き合う管理栄養士の活動について紹介しました。

今回は在宅での栄養・調理指導をしてきた経験からNPO活動が必要と考えるに至った経緯と活動を紹介します。訪問対象の方々の多くが、糖尿病等の生活習慣病を持つ方であること。病院などで栄養指導を受けている方も多いのですが、知識としては聞かれますが、ご自分の生活の中でどうすればよいかということに至っておられないことが多く、また、自分の食事はこれだと、今までの習慣を変えることが出来ず、重症化する人が多いといいます。高齢になれば、体力も弱って、食欲が落ちて当たり前という風潮もあるといいます。超高齢社会に私たちが年を重ねる時の栄養、食事について伺いました。

栄養や食べ方の勉強の機会を作る
NPO法人京都栄養士ネットでは、介護予防推進センターや地域包括支援センター、地域の団体と連携して介護予防の普及活動を行っています。これをもっと身近な場所で、ふらっと訪ねて自分の食生活や栄養について相談が出来る場が必要と考えています。今、子供たち世代は「食育」があり、青年期の方は特定健診・特定保健指導等、健康や栄養について学ぶ機会が与えられていますが、高齢の方は、若い時から栄養や食べ方を学ぶ機会はなかったといえます。生活環境、食生活もどんどん変化してきて、生活習慣病の方が増えたこと、加齢とともに重症化や、フレイル状態になることが、高齢者の問題としてあるのです。

(注)「フレイル」とは「虚弱」という意味です。

 

年齢を重ねていくと、心身や社会性などの面でダメージを受けたときに回復できる力が低下し、これによって健康に過ごせていた状態から、生活を送るために支援を受けなければならない要介護状態に変化していきます。

 

フレイルは大きく3種類

フレイルは大きく3つの種類に分かれます。

一つ目が「身体的フレイル:運動器の障害で移動機能が低下したり(ロコモティブシンドローム)、筋肉が衰えたり(サルコペニア)する」

二つ目が「精神・心理的フレイル」。高齢になり、定年退職や、パートナーを失ったりすることで引き起こされる、うつ状態や軽度の認知症の状態などを指します。 

三つ目が「社会的フレイル」。加齢に伴って社会とのつながりが希薄化することで生じる、独居や経済的困窮の状態など。

(厚生労働省ホームページから抜粋)

このフレイル状態は予防により進行を緩め健康な状態に戻せる「可逆性」という特性もあります。自分の状態と向き合い、予防に取り組むことでその進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻すことができます。

このフレイル予防に、毎日の食生活が重要です。必要な栄養量を美味しく、楽しく摂ることが、特に高齢者には重要といえます。

 

しかし、この様な方が、なかなか栄養士にご自分の食生活について相談する機会がないことが見えてきました。

 さて在宅療養者の中には、ご自分で食事準備が出来ないため訪問介護員(以下ヘルパー)が食事の準備等支援されるケースがあります。ヘルパーは、私達訪問する管理栄養士にとって大事な協働者です。ご本人に必要な栄養面や食事形状などを伝えるとともに、ヘルパーからはご本人の状況や、食事で困っている状況などの情報を貰います。

表はある82歳の独居女性のお宅の冷蔵庫に貼っているメモです。認知症が進行してきて、冷蔵庫の中には同じ食材、総菜が賞味期限切れで入っていました。毎日、近所のスーパーに買い物に行くのが楽しみな方です。そこで、今回ヘルパーが入ることになりましたが、買い物の楽しみは維持し、食事内容の改善のため、食事準備の伴走をヘルパーがします 

配食弁当の利用時の工夫

ご自分で食事の準備が難しくなった時、配食弁当を利用されることがあります。治療食に対応したもの、食事形態に配慮したものなど色々充実してきていますので、合うものを選ばれるとよいと思いますが、訪問の中で気になることがあります。

①1食を2食に分けて(例えば昼用に来たものを昼夕の2回)食べている。結果十分な栄養量を確保できていない。

②はじめの頃はちゃんと食べていたけれど、同じような物ばかりとか、食べたいものでない、味が口に合わない等など、残す・捨てる方があること。

業者さんを定期的に変えられること、別に一品準備しておき、それと一緒に食べることを提案したりします。また、塩分制限などない方であれば、ちょっと調味料を足すこと等を勧めます。おじや風に形を変えると召し上がる方もあります。

総菜は何を買ったらよいだろうと悩む方

高齢になると、食事の準備も負担が大きい方もおられます。毎日毎食作ることは負担が大きくなるので、一度に2~3回食べられるように多い目に作り、冷蔵や冷凍することをお勧めしています。缶詰や、レトルトのスープや煮豆等、賞味期限を確認して保存のきくものを買い置きすると、ちょっと足らない、調理ができない時に便利です。

 こういう日頃の準備で、毎日の食事がバランスよく整うことに繋がります。しかし、作ることが出来なくて総菜を購入して食事を整える方もありますが、これも良し。どんなものを組み合わせて食べるかが大事です。また、塩分制限のある方などは、総菜の選び方、組み合わせ方等で、塩分過多になることもあります。最近は食品の栄養成分表示がされていますので、それを確認することをお勧めします。ただ、残念ながら印刷の文字が小さくて読みづらいので、買い物には眼鏡を持って行き、読めるようにしたいですね。

先ずは、先に書きましたように、たんぱく食品をしっかり摂ることが大事ですので、「たんぱく質の多い食品に野菜をたっぷり添えて、主食も食べる」を実行できるよう生活環境を整える、ご自分のできないところは助けを借りるなどで、しっかり体に必要な栄養を摂ることを考えていただきたいです。三度の食事でとれないところは間食で補われるのもよいと思います。 

調理する家族に合わせた調理方法を提案する

誰が一番作っているかがポイント

京都訪問栄養士ネットが在宅を訪問して、栄養管理や調理指導を行った家庭で調理する方を調べたのが図表のようになっています。

実際に訪問して、その人の状態を見てどういうものを食べたいか好みを聞いて、どなたが作っているかをお聞きすることも大事です。調理する人が今まで調理などしてこなかった息子さんだったら、息子さんが作れるような調理方法をお伝えすることが大事だと思います。食事準備、調理がお気持ちの負担にならない、少しでも軽減できるように伝えることが重要と思います。

また、それぞれの家庭の台所の状況や経済的なことも併せて提案しなければならないと思っています。

 

 

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