48歳からの華麗な生き方・老後をサポートする

知ってますか? 認知症 (42)

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

工夫して、上手に服薬

要求する人にはサプリを

 記憶力、判断力の低下している認知症の人の介護で苦労することの一つが服薬だ。

「毒を盛られていると思っているのでしょうか。薬を飲もうとしません。説得しても聞き入れないばかりか、食べ物も拒否し始めました」

「睡眠薬を飲んだ後でも何度も要求してきます。毎晩1時間も続きます。かといって余分に飲ませることはできませんし…。夜の来るのが怖いです」

「先生に教えられたとおりに薬を粉にして食べ物に混ぜましたが、味がおかしいと感じたのか、吐き出して食べてくれませんでした」

認知症の人の中で服薬に関して深刻な問題を示す人はそれほど多いわけではないが一定の割合でいることは確かである。

認知症が進行すると必ず問題になるのは、薬を飲まなかったり余分に飲んだりする服薬管理の問題である。さまざまな工夫、家族や介護スタッフの介助が必要になってくる。

 記憶障害のため、飲んだことを忘れて「飲んでいない」と要求することはしばしばだ。本人にとっては「飲んでいない」ことが事実なのだから、「飲んだから駄目よ」は説得力を持たない。

足りなくなった薬を医師に追加処方してもらうことはできないし、多く飲めば副作用も出てくる。

 「飲んでいない」というこだわりに対しては、市販の整腸剤の錠剤やサプルメント製剤を「先生が出してくれたよく効く薬よ」と言って、要求のたびに与えるのがよい方法である。これなら何錠服用しても問題はないし、要求に応じた方が早くこだわりがとれる。

 自分である程度管理ができる認知症の人が服薬を確実にするための工夫を挙げてみる。

①複数の薬を一包化して一度に飲みやすいようにする②服薬ボックスを使う③カレンダーに張って見やすい位置に置く④テーブルの上に「薬は飲みましたか」と書いた紙を置く⑤家族がタイミングをみて電話する⑥服薬時刻をはずれてもよいので、ヘルパーの訪問時に服薬させる―などがある。

 薬を飲まない人に対する工夫としては次のようなものがある。

①飲みやすい剤型にする②どうしても必要な薬に絞る③勧め方を工夫する④食べ物に混ぜる⑤味を考える⑥注射や貼付薬に変える―などがある。

 散剤や単純な錠剤では苦い薬も、糖衣錠やカプセルになっていれば、苦味を感じなくなる。シロップや砂糖をまぜれば飲みやすくなる場合もある。

 

 

関連記事