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武道が“前向きな心”へつながる!

 心合道・日本障害者武道会 総師範 

渕上博昭さん(59歳

「パラスポーツって言い方カッコいいですね」と話すのは「障害者スポーツ」といってきた世代の渕上博昭さん。小児麻痺の半身障がいで小学生のころからいじめにあい、自殺を考える日々を過ごしてきたといいます。中学生になり人気のブルスリーや空手を自分流に練習していじめを克服。社会人になり空手道場に通い「障がい者にこの楽しみを味わってほしい」と障害者武道を築き上げました。武道が“前向きな心”へとつながる、その神髄を伺いました。

「友達とは仲良くしないといけんばい」と教えられてきた渕上さんは、小さな頃からいじめにあい、「何でこうなるのかな。いじめは絶対に間違ってる。間違っていても誰も止めない大人は間違ってる」と、この時の心(気持)の確信が人生のテーマになります。

空手道場に通うようになった渕上さんは、「いじめの時汚い心で殴り蹴られるより、空手稽古の方が何十倍も痛いんですが、心は何十倍も晴れやかなんですよ。痛みが気持ちいいんです。人を妬んだり恨んだりした気持ちを、薄皮が剥がしてくれるような感じでした。ハードな稽古も普通の人以上に頑張れたわけです」

3年で指導員になったころから、障がい者にもこのような気持を味わって欲しいと、障がい者の空手道場のことを周辺に話すも難しいと言われます。

「健常者に空手を教える人は一杯いますが、障がい者に空手を教える人はいない。障がい者として不自由な世界の中の自由を探した技を研究してきました」と渕上さん。31歳で“空手道洗心会”を設立。健常者に混じって肢体障がい者や知的障がい者、発達障がいがある方など、誰もが参加できる道場を5カ所に広げ、5年後に重度の障がい者のための“障害者武道会”を設立します。

「健常者は空手のトップを目指しますから、重度の人が混じると稽古にならない。私は空手に興味を持った人に来て欲しいと作業所や学校を回りましたが、みなさん聞く耳をもってくれない。そこで“障害者武道” を始めるというと、それってナニって感じで話しを聞いて頂けました」

障がいのある子どもを持つお母さんたちは「空手を始めると子どもの心(気持)まで積極的に変わってくる」と話すそうです。「自信が出てくることは、私自身で立証しています。小さな自信が積み重なってすごい自信になる。自分ができたことに対して自身を褒めてあげることも大事です。また、スウェーデンでは空手は障がい者リハビリとして大変優れていることが研究され、文献もたくさん出ています。多くの障がい者は、日常生活の動作が楽になります」と渕上さん。

2009年には国際武道大学の松井完太郎氏の呼びかけにより(一社)障害者武道協会が設立され、スウェーデンから障害者武道の先生を招き、渕上さんも一緒に、日本各地で障害者武道の講習会を開いたそうです。日本の武道を学んだスウェーデン人が帰国して障害者武道を研究。逆輸入みたいな形で活動しています。「いまはコロナ禍ですべての活動は止まっています。再開されれば一緒に障害者武道を広めて行きたいですね」と話す渕上さんは、障がい者にしかできない技を教えられる貴重な存在です。 ※YouTubeで日本障害者武道会 渕上道場をご覧ください。

 

 

 

 

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