困った介護 認知症なんかこわくない ㉖
川崎幸クリニック杉山孝博院長
認知症をよく理解するための8大法則・1原則
第4章 上手な介護の12ケ条
第6条 「囲うより開けるが勝ち」
「これまではおばあちゃんのことを隣近所に知られまいとして懸命に隠してきました。家の恥を外に出したくないと思っていたからです。それに、あんなにしっかりしていたおばあちゃんが認知症になったことが近所に知れると、おばあちゃんがかわいそうだから・・・。でも今日、先生や皆さんにお話しすることができてすっきりしました。」
あるお嫁さんが家族の集いで発言した内容です。
認知症について社会的な理解がまだ不十分な現在、同じような思いを抱いている介護者は少なくないかもしれません。
人は誰でも、自分や家族の欠点や問題が他人に明らかになるのを嫌います。
心理的ステップ「とまどい」「否定」の段階にある介護者は、身内や同居の家族に対してすら悩みを打ち明けられないこともあるものです。
しかし、認知症は極めて社会的な問題でもあるのです。家族や社会の理解と援助を得なければ介護を続けることが困難になる場合も少なくないと思います。
一人で悩むことは、介護者自身にとっても、また、認知症の人にとっても辛いことですし、混乱を深めるばかりになりましょう。
見失っては大変だと24時間緊張して監視を続けるより、徘徊ネームなどを付けておいて、見失ったら誰かがそれを見て連絡してくれるだろうと考える方が楽になります。
固い表情をしていた介護者が、家族の会の場などに出て何でも話すことが出来るようになってから、表情がどんなに明るくなることか。
心を開くことがよいことと分かっていても、差別や偏見が世間にあったら、気楽に打ち明けられません。幅広い啓蒙活動を通して、皆が自分自身の問題ととらえなおして、認知症に対する理解を深めてゆくことが重要であることは明らかでしょう。
「明日は我身」「お互いさま」です。
悩みを気軽に打ち明けて皆が一緒に考えていく、そのような真の福祉社会を築き上げていきたいものです。閉じこもるよりも開いた方が勝ち、とはっきり言えるようにするために。