男と女の薄毛・脱毛 あなたの疑問、悩みを解決します!!
薄毛は男性だけの悩みと思われていましたが、最近は女性も薄毛で悩む人が増えているようです。男性の薄毛は遺伝やホルモンの影響が原因というケースが多いようですが、女性の場合はさまざまな要因で薄毛になるそうです。また、どの程度髪が少なくなると薄毛なのか、といった判断も個人の思いによって異なります。
薄毛に対する解決方法はさまざまですが、最近は発毛薬もできています。なぜ薄毛になるのか。その原因と解決方法について、頭髪治療専門病院の脇坂長興院長に伺いました。
脇坂長興(わきさか・ながおき)
頭髪治療の専門病院(専門外来)、脇坂クリニック大阪院長。 医学博士。日本形成外科学会専門医。麻酔科標榜医。15年前に誰もやっていなかった「髪の毛」の専門病院として開院。抜け毛の予防から発毛治療までを専門に行う関西地区で唯一の頭髪治療専門病院。
薄毛が治ると期待されても、元通りには戻りません! 治療しても回復するのは平均値までです
私ども脇坂クリニック大阪は男性7対女性3の割合で、20歳代から80歳代までの年齢層の患者さんが受診されています。
治療すれば薄毛が元に戻ると期待する方もいますが、残念ながら20歳の状態までは戻りません。一番良くなっても実際の年齢の平均値(60点くらい)まで。私は患者さんには「妥協も必要です」と説明しています。
ご自身で30点くらいと思っていた髪の量が60点までいくと、周囲からも「ウオーッ」といった反響がありますが、55点で来院して60点ではなく80点を目指す人は治療をしてもなかなか満足出来ないものです。
私どもの基本方針は、治療方法(経路)と治療終了(目的地)は患者さん自身が決めるということです。患者さんはドライバーで、医者はカーナビでしかありません。医者は持っている知識と情報をもとに、患者さんが一般道でいくのか高速道でいくのか、時間や費用、混み具合などをアドバイスし、患者さんと一緒に道順を選んでいきます。ですからドライバーである患者さんには、「お任せします」という姿勢ではなく、ご自身の意思を聴かせていただきたいのです。
治療の流れは、まず目標を決めること。治療開始2ヵ月半頃から効果が出始めますが、6ヵ月で1度見直しをします。「それまでの治療が、費用対効果の面で適切かどうか」の振り返りです。その後は短い期間で評価を繰り返し、良くなっていけば市販の薬に変えていくことなども提案します。
男性の薄毛(脱毛症)の原因は?! 男性ホルモンと遺伝
ある企業のデータによると、2004年の日本の成人男性の薄毛率は25%を超え、およそ4人に1人が該当します。更に最近の調査では、薄毛や抜け毛で悩んでいる人は1300万人いるともいわれています。
「男性型脱毛症」(AGA=Androgenetic Alopecia)の原因は、おもに「男性ホルモン」「遺伝」「ストレス」「食事・生活習慣」の4つです。
大きな原因とされる「男性ホルモン」。このホルモンの代表の「テストステロン」はひげや胸毛など体毛を成長させますが、前頭部から頭頂部にかけての髪では抜け毛の原因物質に変わり、毛根を萎縮させて髪の成長を止めAGAの原因になります。
また、「遺伝的要素」も重要で、父親だけでなく母方からの遺伝も大きく影響しています。他に、生活習慣や環境因子によって体質も変化して髪に影響を与えていることがわかってきています。
女性の薄毛(脱毛症)も増えている?! 気軽に受診しやすくなった
私どものクリニックでも、女性の受診が多くなっています。これは女性の薄毛人口が多くなったというよりも、今まで誰に相談すればいいのかわからなかったけれど、頭髪専門クリニックがあることを知り、女性でも気軽に問い合わせしやくなったからではないかと思っています。
ところが女性の薄毛は、脱毛部分の境界がはっきりしないまま頭髪全体が均等に薄くなっていく「びまん性脱毛」の症状が多く、具体的にこれが原因ですと言えるような〝敵〟がハッキリしていないので、治療に難渋することも少なくありません。
女性の薄毛に最も影響を与えているのは「加齢による変化」。他には「皮膚疾患」「生活習慣と環境因子」「女性ホルモンの低下」「女性の男性型脱毛症」などが考えられます。
髪の毛の生えて抜けるまでのサイクルは5年 成長しきれず抜けると薄毛に
髪の毛の成長期間は5年間。これが1〜2年間で抜け、3ヵ月もするとまた生えるものの、また早いうちに抜けます。これを何回も繰り返すと、段々、短く細い産毛になっていきます。前髪の生え際あたりやつむじに3〜4㎝の髪が目立つようになり、その長さのままで抜けていくわけです。本数自体は少なくなりませんが、成長段階から抜けるまでのサイクルが早くなります。
薄毛で悩む人は気持ち次第です 薄毛の基準はありません
高校生の時に髪がフサフサだった人が、20歳を過ぎた頃から髪が薄くなってきていることを敏感に感じるようになり、意を決して病院にこられます。
では、おでこが何㎝まで後退したら治療を開始すべきなのでしょうか。発毛治療がよいのか、それとも毛量維持の治療で十分なのか。どちらが必要かは気持ち次第です。私はおでこがかなり広いほうですが、高校生のころからこんなものだと思っていましたから、今は維持のための薬だけを飲んでいます。よくなりたければよくなるための薬、維持でよいならそのための薬、と目的に応じた選択をすればよいのです。もっと言うなら、気にしないことにしてしまえば、薄毛の治療は必要ないのです。
薄毛治療なら皮膚科か頭髪専門病院へ
髪の毛は皮膚が変化したものです。抜け毛に悩むなら、まずは皮膚科を受診しましょう。本当に発毛が必要なら頭髪専門病院が適しています。薄毛の原因によっては、他の専門病院を受診したほうがよい場合もあります。
私どもは頭髪の専門病院ですので、患者さんがあちこちの科を受診しなくてもいいように、皮膚科、形成外科、精神科、内科、婦人科などの専門医があらゆる角度から診察し、患者さんの髪の状態や希望に合わせて最適な治療法を選んでいます。
当院での治療ばかりにこだわらず、必要に応じて、薬局で扱う育毛剤やサロンケア、ウィッグ、植毛手術などを紹介することもあります。
9割の薄毛は薬で改善できる! 抜け毛を止めて、発毛させる
9割の方は薬で薄毛を改善できます。まずは、男性ホルモンを抜け毛の原因物質に変える酵素の邪魔をします。その薬が「フィナステリド」で、男性型脱毛症(AGA)の進行を止める、いわば下りの坂道に対するブレーキ役。私どもは発毛薬として「ミノキシジル」を使います。これは坂道を登るアクセル役になりますが、同じ成分の市販薬として「リアップ」があります。
「フィナステリド」は、男性の男性型脱毛症の進行遅延薬「プロペシア錠」として、皮膚科や内科でも処方されます(保険適応外)。
日常生活による薄毛改善点
投薬治療だけで十分な効果が得られないときは、抜け毛を減らすために生活習慣の改善に気を配ることも必要になります。
- 睡眠は5時間以上とってください・・・続けて5時間でなく、切れ切れの睡眠でも構いません。夜眠れないようなら昼寝をしてください。
- 肌によい食べ物を摂る・・・髪の毛は皮膚の付属器です。皮膚のための栄養は、髪の栄養になります。良質なたんぱく質とビタミンとミネラルをたっぷりと摂るために、いろんなものをまんべんなく食べましょう。
『ど〜もど〜も』2016年4月号掲載記事