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知ってますか? 認知症 (51) 最終回

川崎幸クリニック 杉山孝博院長

「20XX年」の認知症

医療進歩、介護は地域密着

超高齢化が進行して、認知症の人が約500万人になった20XX年の日本。タイムマシンに乗って見聞してきた、未来の認知症の医療とケアについて報告する。

徘徊に対して衛星利用測位システム(GPS)内蔵の携帯電話が登場し、本人の居場所が分かることで家族の不安は軽くなった。しかし、携帯電話では電池切れ、紛失などの心配があった。

体や空気の熱を電気エネルギーに転換技術や省エネ技術が発達し、充電の必要がなく安価なフィルム状の「ICタグ」が開発された。衣服やかばん、靴などに張り付け、本人の居場所が確実に把握できるようになった。

皮下に埋め込む「マイクロカプセルIC」も開発されているが、人権問題もあって使用は一部にとどまっている。

 認知症の人は昔の時代に戻り、その世界を現実のものととらえる特徴がある。脳波磁気解析技術、バーチャル映像技術、三次元ホログラム技術などが結びついて、認知症の人が思っている世界や人物が、周りの人にも分かるようになり、混乱が軽くなった。

 興奮して大声を出されると、家族や隣家のストレスは甚だしい。そこで大声を別の音波で打ち消す「音中和装置」が開発された。室内や本人の体につけておくだけで、大声が数分の一になり、家族らのストレスが軽くなった。

 どの時代も医学・医療に対する期待は大きい。認知症に関する多数の遺伝子が発見され、構造も解明されてきた。遺伝子診断によって認知症になる確率がある程度算出できるようになった。

しかし、認知機能のメカニズムはあまりにも複雑なため研究の緒についたばかりである。

認知症は生命の宿命である老化の仕組みと複雑に絡み合っていることが明らかになって、治療の難しさが思い知らされている。それでも病気の進行を抑える治療薬は、数種類が使われている。

記憶を司る海馬などでは、神経細胞が新生されていることが1998年以降分かっていた。神経細胞の増殖と維持を促す神経成長因子の解明と、それを認知症治療に応用する研究が進みつつある。

 認知症のケアでは個別対応しすい地域密着型サービスが普及している。

住宅のセキュリティシステムは地域の交流を閉ざし、認知症の人の自宅への出入りを妨げる要因となる。そのため出入りしやすいようにシステムを撤去する動きが始まった。

 

 

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