あなたの『終の住処』はどこですか?!〈連載7〉

毎日の食事管理が病気を治す基本!
家庭環境に合わせた栄養管理・調理指導します
日本栄養士会機能強化型認定栄養ケア・ステーション
「京都訪問栄養士ネット」(上)
管理栄養士 樹山敏子さん、荊木文子さん
病院や施設と違って在宅での療養は治療も大切ですが、食事で体の栄養状態を保つことが基本です。家族が1日3食の栄養、食べやすさ、病人の好みに合った食事を考えて作ることは大変です。医師の指示によって在宅医療や介護保険で食事指導するのが管理栄養士です。介護保険の場合は、ケア計画に基づき管理栄養士が「栄養ケア計画書」を作成して、月に2回まで在宅を訪問して栄養管理や調理指導を行っています。
約11年間在宅で栄養・調理指導を行ってきた「京都訪問栄養士ネット」は、訪問指導しているうちに「元気な時から栄養指導をしていれば、特に糖尿病の重症化や低栄養にはならずに済んだのでは」と思い至り、2022年に「NPO法人京都栄養士ネット」を作り、関係機関と連携して介護予防の取り組みや相談を受けつける活動を始めています。今回は在宅療養での指導とNPO法人の活動を2回に分けて紹介します。
「京都訪問栄養士ネット」で管理栄養士の在宅訪問が広がる
管理栄養士による訪問栄養食事指導は年々活用されるようになり、多職種が連携して在宅医療を担っていくのに欠かせないサービスになってきています。
2012年頃から数人に仲間と「訪問栄養」を始めようと考えていた樹山敏子さんと荊木文子さん。
「山科区の病院の先生から、『誤嚥性肺炎の患者さんを回復させて家に帰しても、1年もするとまた病院に戻ってくる。それは家庭でその人に適した食事が提供できないからだろう。管理栄養士が在宅に行って具体的に指導することが必要だ』と背中を押してもらったことがあり、在宅訪問栄養指導をすることになりました。
食事というのはその家庭ごとに食習慣が違います。療養者さんの状態にあった栄養量を取らなくてはいけないので、その人にふさわしい食事の形態や食べさせ方をどのように工夫すればよいのか。家庭での現場指導が必要だということです」
山科区では、医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護師会、栄養士会と各職能団体が連携して、在宅医療・介護を支えようという「山科地域ケア愛ステーション」という連携の仕組みがいち早くできたこと、この中で活動をスタートさせることができ、このつながりで、他の区にも訪問する管理栄養士の存在を知ってもらうことができました。
それからは興味のある栄養士仲間で勉強会を始め、2015年「京都訪問栄養士ネット」を結成、現在は京都市内全域と京都府内にも少しずつ活動エリアを広げています。
私たちの考える訪問栄養食事指導は、医療面でその方の治癒・健康状態の改善を図るとともに生活が成り立つことを考えること、この2つを支援することだと考えています。
病状に合わせた栄養指導や調理方法がわからない
在宅療養されている方で、食事療法や、調理法で困っている方は、主治医や、介護認定を受けている方はケアマネジャー、地域包括支援センターに相談してください。
在宅療養で訪問栄養指導対象者
◆ 糖尿病、腎臓病、肝臓病、胃潰瘍、貧血、脂質異常症(高脂血症)、痛風、心臓病、消化管の手術後、潰瘍性大腸炎、高血圧症、
高度肥満・・・などの食事管理が必要な方 ◆ 低栄養状態(やせ、アルブミン値3.5g/dl以下) 嚥下困難(そのために摂食不良となった方を含む)での流動食 がん、経管栄養の方
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家族も介護職も『栄養』についての正しい知識が乏しい
訪問管理栄養士による訪問指導で、利用者の方が病状や機能改善される実績が認められるにつれて、ケアマネジャーや訪問看護師を通じての依頼が増え、これら多職種の勉強会で栄養指導の理解を深めてもらう機会も増えているそうです。
「訪問看護師やケアマネジャーからの退院時から管理栄養士の介入が必要だということで医師から依頼されます。最近増えているのは、在宅医療専門のクリニックです。「管理栄養士さんと一緒にやらないと、患者さんは良くならないですよね」といわれ、そういう先生は理解がありますし、細かなところまで指示されます。
その一方で、「もう年で食が細くなるのだから、いいのじゃない」と言われる方もいますが、年だからこそ、また終末期でも食べることの意味があると思います。私たちは少量でもどうすれば食べてられるかを考えます。
病気と栄養状態の改善の工夫
「京都訪問栄養士ネット」が訪問栄養指導の対象者を図表のようにしています。『低栄養』と『糖尿病』が多く、病気になる以前から栄養についての知識があれば防げるかもしれないと、「NPO法人京都栄養士ネット」を立ち上げた経緯はここからも読み取れます。この活動は次号に紹介します。
ここでは病気と栄養状態の改善の工夫について紹介します。
- 『嚥下障害』は調理に工夫が必要
療養者の中には、咀嚼嚥下に問題のある方が多く、最近は在宅でもST(言語聴覚療法士。以下ST)が支援に入っていることが増えています。私たちもSTと一緒に同行訪問することがあります。STがその人の食べ方、機能を見て、評価し、私たちに伝えてくれます。その方に合った形、硬さ、濃度など、実際を見ながら、その場で調整したり、家族の食事からの調理の工夫を伝えたりします。
また、状態の変化に合わせてSTに相談や、歯科医の先生と一緒に訪問し、嚥下評価に立ち会い食べ方の相談をすることもあります。
- 『胃瘻』と栄養補給
経口摂取が困難な時や病状から必要な時に、胃瘻を造ることがあります。
脳梗塞で一時的に胃瘻を作り十分な栄養補給をしながら、リハビリを行うことで、胃瘻は抜去(ばっきょ)できます。胃瘻と経口摂取を組み合わせて、好きなものを経口摂取できる形態で食べる、この喜びが療養を頑張る力になることもあるのです。そんなケースを見てきました。
しかし、神経進行性難病の方などでは、胃瘻からの栄養補給で命をつながれる方もあります。お好きなものを胃瘻から注入できる状態に加工して入れます。その食べ物の匂いが胃から上がってきて、「食べている」と感じてうれしく思っている姿に、私たちも頑張ろうという気持ちになります。
胃瘻であっても、その方がどのように生きたいかということをチームで考えていくことが大切と思います。
神経進行性難病の方や、がんの方の終末期の訪問栄養指導の場合、日々病状が変化する場合があるので、普通は月2回の訪問ですが、訪問回数を増やしてほしいと思っています。
- 食べてくれない『認知症』の方
認知症の方は、状態によりますが、落ち着いて食べることに集中できる環境が先大事です。一度に全部の食事を見るとどれから食べたらよいかわからず、食べられない方の場合は、1つ食べたら次を出すという形にします。どのタイミングで食べればいいのかわからない方には、持っているお箸をチョンチョンと触って合図すると食べ始める方がおられます。
現場では、一人一人の特徴をよく観察して、関わることが大切だと学びます。
- 『褥瘡』は栄養状態の改善で良くなる
病院で褥瘡(床ずれ)をつくって在宅に帰ってくる方もあります。訪問看護、ヘルパーと協力して、在宅で褥瘡が治癒したケースは、その方のやりたい希望を目標に、好きな食べ物を食べられる形で提供し、しっかり栄養補給作戦を実施した結果です。在宅だからこその取り組みだと思います。
この事例の方は「ケンタキーフライドチキンを自分で車いすを操作して食べに行きたい」と希望。
義歯を付けず、誤嚥性肺炎も経験しているAさん。噛まなくてよい介護食を食べて、処方されている栄養補助飲料も飲み残す状態。管理栄養士の介入で、好きな総菜をミキサー食にする、温泉卵等を加える、栄養補助飲料を支援者がいる間に、1日1本は必ず摂れるようにするなど、支援者がチームを作り関わった結果、褥瘡は治癒し、念願のケンタッキーに行きました。
褥瘡は、除圧や患部だけの処置のことを言われることが多いのですが、傷の治癒と組織の回復に多くの栄養量を必要とします。「あ!褥瘡ができかけている」は低栄養と考えて、管理栄養士につないでいただけたらと思います。