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〈連載1〉 あなたの『終の住処』はどこですか?! 自宅編

どーもどーもの冊子では、2023年3月号から あなたの『終の住処』はどこですか?!を連載しています。

今回から連載記事を毎月ご紹介していきます。

60年ほど前は多くの人は自宅で亡くなりました。やがて人口増に従い病院数が増え最期は病院で亡くなり、最近では介護施設も増え最期を迎える終の住処の選択肢も広がっています。また、厚生労働省は75歳以上の後期高齢者の医療費が高騰し、死ぬ間際の治療費が高いことなどから、自宅で最期を迎えてほしいと訪問診療などの診療報酬を手厚く誘導してきました。最近では訪問診療報酬が抑えられてきているようですが、昔のように畳の上で亡くなることが当たり前の時代になろうとしています。

お金や家族構成、一人暮らしによって終末期を迎える選択肢は異なりますが、終末期を迎えるための考え方や準備について、介護経験者や医療従事者、ケアマネの専門家の立場から、安心できる終末期の迎え方について連載していきたいと思います。

望んでいるのに、なぜ人は自宅で最期を迎えられないのか
厚生労働省のデータによると2017年の死亡者数134万人のうち、最期の居場所は病院が約100万人(75%)であるのに対し、自宅は約17万人(13%)、老人ホームは約10万人(7.5%)となっています。
ちなみに50年ほど前の1965年の死亡者数70万人のうち、病院が約20万人(28%)、自宅が約45万人(65%)と自宅死は病院の2倍以上でした。

病院死が自宅死を上回ったのは1976年からです。

年間死亡者数のピークは2040年
年間死亡者数は2040年に165万人とピークになると予測されており、内閣府が行った高齢者の健康に関する意識調査(平成24年)によると、最期の居場所は病院などの医療施設が良いと考えている人(28%)や介護施設が良いと考えている人(9%)に比べて、自宅が良いと考えている人(55%)は圧倒的に多いにもかかわらず、大半の人が希望とは異なる場所で最期を迎えているのが現実です。

〈上〉義父母の介護経験から『自宅』で最期を迎える条件?!

終の住処コンサルタント 田中聡さん(一級建築士・介護福祉士)

テレビ番組大改造劇的ビフォーアフターで“和の空間伝道師”と評された一級建築士の田中聡さんは、2014年に京都にサービス付き高齢者住宅(略:サ高住)を企画設計し、そのサ高住の施設長として介護保険制度などを勉強してきました。そのような時期に義父母の介護を経験し、著書「施設に入らず『自宅』を終の住処にする方法」を出しています。

今回はその介護経験から『自宅』でも安心して最期まで暮らすための方法。

次回は安心老後住宅の作り方と施設の選択肢についてのお話を紹介します。

 🌟最期の一カ月半を自宅で過ごした義母

キーマンは優秀なケアマネでした!

義理の母は定年後、終末期を自宅で過ごすことを前提に家を作っていましたので、全ての生活が1階で完結出来るようになっていました。ただ、浴室の手すりの取り付けや玄関、スロープは福祉用具貸与事業所にお願いしました。

義母は退院時には要介護度5。施設に入るのが嫌だと自宅でヘルパーや訪問看護、訪問入浴など介護保険をフルに利用していました。
担当のケアマネは、それ以降いろんなケアマネに会いましたが、結果的に看取りまでするという積極的な方で良かったです。また、往診してもらっていたお医者さんは、ケアマネから紹介してもらっていました。看取りまで専門にしている医師でした。

義母の最期は、週一回往診してくれていた医師から、あと2、3日だろうと言われ、起こり得ることの説明を受けていたので、特に何をすることもなく家族だけでゆったりとした時間の中で看取りました。

🌟2年後に亡くなった義父は

一人暮らしで施設から病院、ホスピスへ!

義父母は同時期にがんを患っていまして、義母が亡くなった後、義父は2年ほど元気にしていました。やがて要介護度3ぐらいになるものの、自分のことはできていたので、一人でも自宅で過ごせると思っていましたが、妻が安全上、衛生面から一人にさせるのは無理があると介護付き有料老人ホームに入居しました。老人ホームは良かったのですが、10ヵ月ほどして施設長が替わり介護方針が変わったので私のサ高住に移りました。

その後、妻が治療をさせたいということで入院した時には、全介助だったので一気にQOLが落ちて、最期はホスピスで過ごしました。

良いケアマネと在宅医の見つけ方

最初にすべきことは、良いケアマネと良い在宅医を探すことです。

ケアマネは知人の紹介が理想ですが、なかなか難しいのでまず「地域包括支援センター」でそのことを伝えて紹介してもらうことから始めましょう。
最低二人のケアマネに会って、在宅看取り積極派か否かを確認してほしいです。面談して「自宅で最期を迎えさせてあげたい」という要望を伝えてみる。最終的に前向きに動いてくれる人であれば在宅看取り積極派であり安心です。消極派のケアマネは、良い在宅医が近所にいない、在宅看取りの環境が整っていないといった第三者的な要因で、看取りをしない方が良いと言いますが、これは消極派ケアマネの常套手段です。この場合は別の人を探します。

人柄を含めて相性が合う在宅看取り積極派のケアマネと巡り合えたら、第一段階クリアです。
次に在宅医の探し方ですが、医師についてはケアマネから紹介してもらうことがベストです。在宅医もネットで情報収集した上で、会って人柄を確認すべきだという情報も巷にあふれていますが、営利追求型の在宅医と、利用者に献身的な在宅医に二極化しています。形式的に耳あたりがいいことだけを並べる在宅医には要注意です。厳しくても、現実的なことを言う医師の方が信用すべきです。
在宅医は信頼感を持ってお任せすることができ、いいづらいことも相談できるような相性の合う医師が適任です。

 

🌟自宅介護はプロジェクトマネージャーという意識を持つ

これは介護を終えた後に考えたことですが、自宅介護をしようと思った時、一人で何もかもやろうとすると気が重くなるので、組織や社会の力を借りる。人に相談して悩みをわかってもらい支援を受けることです。

そして、プロジェクトマネージャーとしてマネージメントを常に意識することです。ケアマネやヘルパーさんは、あなたのプロジェクトに参加してくれるプロフェッショナルのスタッフです。そうしたプロの力を借りながら、介護プロジェクトを動かすマネージャーとして、安定した介護体制を作ることを目指すべきであるという考え方です。

また、介護が必要な人に対しては、何でもやってあげるのではなく、その人がまだ持っている力を引き出しながらの関わりが重要で、自分でできることは自分でやってもらう意識も大切です。

 

🌟義父母の介護から最期は自宅がふさわしい理由

私が自宅こそがふさわしいと考えている三つの理由には、

①自宅で最期を迎えることは様々な問題が生じるし、家族のストレスが増大します。しかし、亡き人を思い出す際、関わった人たちには病院死では得られない充実感があります。
②病院や介護施設では共同生活を行うためのさまざまなルールがあり、どんなに患者の意向を尊重してくれるところであったとしても、その行動には何らかの制約がかかってきます。
一方、自宅であれば、一切の制約はなくなり、自分の望み通りの暮らしが実現でき、人それぞれの自分らしい最期を迎えることができます。つまり最期の時において、人間の尊厳を大切にした居住空間は、病院や介護施設では実現不可能です。
③病院や介護施設では物理的かつ心理的な行動制限がかかることで、老いのスピードとストレスが増します。医療者と介護者の協力を前提に、最期の居場所はゆったりとストレスフリーで寛ぐことができるようにまわりの人たちが配慮すべきです。

 

🌟高齢者を自宅で介護をするための心得

多くの人ができることなら介護施設なんかに入居したくないと考えています。しかし「介護保険に関する世論調査」によると、自分自身が介護を受けたい場所は70歳以上が自宅44%、介護施設30%なのに対して、50歳代は自宅32%、介護施設は51%と年齢が若くなるにつれて自宅ではなく施設で介護を受けたいと考えている人の割合が多くなっています。
自宅で介護を受けると家族や子供に迷惑がかからないので、施設に入居したいと考えている人の割合は、若い人ほど多くなっていく傾向があります。

 

自宅介護で苦労しただけのメリットもある

メリットのひとつはお金の面です。

以下のルールの範囲であれば、介護施設に入らないことがメリットとして大きくなります。そのルールは、
①介護のために家族が仕事を辞めることは絶対に避ける。あくまでも仕事を続けながらできる範囲の介護を行う。足りない部分は介護保険サービスなどを受ければよい。
②介護のための同居は避ける。単身から要介護5の寝たきりになっても、介護保険サービスなどを受けながら、自宅での生活を継続させることは簡単ではないができるのです。

著書「施設に入らず『自宅』を終の住処にする方法」

詩想社:1000円(税別)

 

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