特集 『押し花』アートの世界へ 変色しない『押し花』を作ろう!

一般社団法人 世界押花芸術協会 杉野宣雄会長
四つ葉のクローバーは三つ葉のクローバー5000本の1の確率で見つけることができるそうです。希少だから見つけると「幸せになる」と言われ、『押し花』の栞にしたことがありますが、すぐに色あせた記憶があります。
以前『押し花』のついている電報がありました。生の花なのに変色しません。この花の色そのまま残す『押し花』の技法は、今日ではアートとしても表現されています。この特許技法を世界に広めているのが世界押花芸術協会の杉野宣雄会長です。
今回は自然の色が変色しない『押し花』アートの作り方を教えていただきました。
ここではスペースの関係で掲載できません。
こんなところに『押し花』アートが活かされています!
未来に向かって目指す2つの夢
⭐️自然の色が変色しない「OSHIBANA」は日本発祥です。「OSHIBANAを日本の文化として一層高め、世界に広げること」
⭐️写真や絵画と同様に、芸術としての評価されている「OSHIBANAアートを、我が国を代表する世界の芸術文化にすること」
自然の色が変色しないことから思い出に残る記念として、オリンピック選手のメダリストのビクトリーブーケを押し花作品にして贈られたり、最近ではブライダルブーケを押し花作品にして、一生の記念として残せるアフターブーケが人気だそうです。
変色しない『押し花』はどのようにして生まれたのか?!
一般社団法人 世界押花芸術協会 杉野宣雄会長
Q:この押し花の技法はいつ頃できたのですか?
杉野:祖父が植物分類学をやっていまして、牧野富太郎先生らと一緒に研究していました。祖父の名前のついた植物もあります。貴重な植物を標本として残していたのですが、茶色く色が変わるので綺麗に残したいという祖父の願いから、父が『乾燥マット』というのを開発したんです。乾燥剤が染み込んでいる板です。
「こんなに綺麗な押し花ができるんだったら電報につけたらどうだ」ということで、 NTTの押し花電報の開発をしました。父は電報の仕事をしたものの研究者で会社経営が苦手だったことから、その会社をやめて押し花の作る楽しみを伝えたいと教室を始めました。自分がとってきた花をハガキに貼って送ったり、フレーム作品を作ったりする押し花教室です。1978年頃です。
Q: 教室はどのような展開になったのですか?
杉野:両親や祖母は福岡県の大牟田市にいて、押し花をデパートで販売したり生徒を募集したりしていんですが、そこで教室をするのはなかなか難しかったので、私が大学で東京にいたものですから「仕事を手伝うように」ということで、仕事を手伝い始めました。
私も大学で植物の分析など技術的なことが得意だったので、そういう技術を入れながら化学の力で「押し花をより簡単に美しく、色が変わらないものにしよう」というテーマで、いろんな技術開発を始めたんです。その技術開発したものが100 近く知的財産として特許を積み重ねて、それをカリキュラムにして教えました。それが今から35年前のことです。
特許の有効期限は15年ですから、今でも新しい技術開発を続けないと業界のトップにはいられません。
Q:自然の花の色が変色しないという発想や作り方は、日本では初めてのことでしょうか?
杉野:世界的に見ても非常に稀です。それは日本が梅雨や四季があり、変わりやすい環境下にあるからです。
戦後私の父と同じように、押し花をきれいに乾かそうという考えの方が何名かおられました。ところが結局、一般的なシリカゲルで乾燥したりする技術は生まれたものの、それをいつまでも色が変わらないように加工する技術ができなかったわけです。「最初は綺麗だけれども1年も経たないうちに茶色くなってしまった」というものだったので広がらなかったわけです。ところが我々はいろんな技術を極めていったので、それが大きく普及していったわけです。
Q:今の技術で花びらを乾燥させて額に入れた場合、永遠に色が保てるわけですか?
杉野:紫外線の影響で色は変わりますが、室内で飾る分には長期間色は変わりません。私自身この技術を考えたのは30数年前でしたので、それからは変わらないですね。
Q:「押し花」アートと言われているように、作品展では芸術的なものも多いですね。しかも果物や野菜も使えるわけですね。
杉野:乾燥剤である程度きれいにできると思います。乾燥というメカニズムは、水蒸気の移動距離にかなり影響されるんですね。ここにポンと押し花を置いて周りが乾燥していても、風が多くないと空気が淀むだけでなかなか乾かないんですよ。常に乾燥させたいもののそばに、乾燥した空気(風)がないと乾かないんです。
Q:教室は全国にどのぐらいあるのですか?
杉野:実は 2000年ぐらいが押し花教室のピークでした。その時は先生が3万6000人ぐらいいまして、生徒が50万人ぐらいいました。今はその人たちも高齢化しましたしコロナ禍になり、先生は8000人ぐらい生徒さんもそんなに多くはないですね。
また、時代として習い事をする状況が少なくなっています。今はものを習って作る。それをネットで売ったりすることがすごく人気なんですね。そういうことも含めて、新たに講座をスタートします。
Q:普及活動はどうされているのですか?
杉野:ハルメクさんの関連会社と一緒にタイアップしてやっています。
目的は健康寿命を延ばすためや認知症の方に『押し花』がとてもいいということなので、そういうことを含めて新たなプレイシニアの楽しみとして普及していこうとやっているところです。
Q:お花の供給はどうされているのですか?バラ園のようなお花を育てるような場所を作られているのですか?
杉野:全国のいろんなガーデンとタイプしていますので、そこで採集させてもらったりしています。富良野の風のガーデンでも年に1、2回植物採集を兼ねて行っています。もちろん庭に花の栽培もしています。