昆虫の生態知るとあなたの生活環境わかります!

奈良県 橿原市昆虫館 学芸員 池田 大さん
もうすぐ夏休み。小学生の頃ミィーミィーと蝉が鳴き始めると網を持って採りに出かけましたが、最近チョウやトンボを見かけることが少なくなったなと思いませんか。里山が残っているところでは、池がありチョウやトンボの餌があるので生息することができていますが、都会にはそのような環境がなくなり、昆虫などが生息しにくくなっています。そこで橿原市昆虫館の池田 大さんに昆虫の生態環境について教えていただきました。
全国に昆虫館は22カ所あるそうですが、橿原市昆虫館は奈良県では初めての施設で平成元年にできました。令和4年 までの約33年間の入館者数は300万人に達し、年間8万人強の人たちが訪れ楽しんでいるそうです。
幼い頃に昆虫など生き物の生態を知り興味を持つと、大人になって深く学ぶ人もいます。池田さんもその一人「子どもの頃は伊丹市昆虫館で虫のことを教わり、気づいたら昆虫の人になっていました」と話しています。
橿原市昆虫館は『見て、聞いて、触って、感じる』をテーマに昆虫の生態をいろいろな方法で学ぶことができるよう、興味をそそる仕組みがいっぱいです。
その一つが『温室のチョウ』。亜熱低・熱帯の花の中を10種類前後600頭以上のチョウが飛び交う放蝶温室です。
「年中、飛び交うチョウを見ていただくために、毎日チョウの卵を採取し別の部屋で幼虫を育てています。そうしないと卵の中に小さな蜂が入って寄生したり、放っておくと病気になったりするので、卵を回収してチョウが好む葉っぱを与えます」と毎日大変な作業が行われています。
もうひとつは『ミクロ探検隊』。UFOキャッチャーのような機械にレンズを取り付け操作することで、虫がクローズアップで見ることができます。
さらにユニークな企画を行なっており、過去には『G(ゴキブリ)20』を企画「ゴキブリの展示は、名前のインパクトですごく人気がありました。その時はコロナ禍で入場制限していた頃で、もったいなかったと思っています。できれば数年後にはまたやりたいと思います」
そして、橿原市昆虫館の役割はいろいろあり、県民からは昆虫の飼い方の相談、昆虫マニアからは「今まで奈良県にいなかったベニトンボを見た」と連絡が寄せられるなど自然観察の交流がすごいです。地球の温暖化によって、温かな地域にしかいなかった昆虫の生息域が東、北へと広がっているようです。
もちろん絶滅危惧種に指定されている『ヒメタイコウチ』についても「生息地とは別に私どもでも繁殖させて、生息地が危なくなった時に対応できるように試験研究などをしています」と話されています。
池田さんによると昆虫の歴史の中では、今は昆虫の多様性が高い時代だそうですが、近年では世界的に昆虫全体が減っているそうです。絶滅危惧種も増えているそうです。