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あなたの『終の住処』はどこですか?! 〈連載2〉 

〈下〉安心老後住宅と介護施設という選択肢 

終の住処コンサルタント 田中聡さん(一級建築士・介護福祉士) 

前回は義父母の介護経験からキーマンになるケアマネや訪問医の探し方などを紹介しましたが、今回は介護が必要になる前の準備について。寝たきりを防ぐ室内の転倒予防の工夫、小さくても周辺環境の良いところに移り住む、老後を見据えた住宅改造。もちろん老人ホームや介護施設の選択肢についても紹介します。

🌟寝たきりにならないために自宅での転倒を避ける工夫!

高齢者にとって転倒事故発生場所は、階段よりも居室内での転倒事故が2倍も多く、ケガをする割合が高くなるというデータがあります。
寝たきりになる原因には、転倒⇨骨折⇨入院でADLが急降下。高齢者の場合ほぼ確実に認知症を発症したり重度化したりします。

転倒を避けるために多少の段差でも転倒しないようにしておく、日常の生活動線上は切れ目なく手すりが張り巡らされていることが理想です。壁に手すりを取り付けて、反対側に安定した家具を配置することも工夫の一つです。
そして、「高齢者は骨折くらいでの入院は極力避けるべきだ」という医師もいます。高齢の場合は転倒して骨折しても入院しないという選択肢もあります。

🌟小さくても周辺環境の良い中古住宅に移り住む

空き家が全国850万戸を超えた今(2020年現在)、駅から近い魅力的な散歩コースがあるなど周辺環境、立地優先で中古住宅を探す。住み慣れた自宅を売却して中古住宅を購入するメリットはあり得ます。不動産業界もそのようなサービスを提供する会社が増えています。
中古住宅のリノベーションは、戸建て新築の6〜7割程度の費用。終の住処としては延床面積30坪以下でも十分ですし、今まで住んでいた地域より駅近で便利なところに、小さめな中古住宅を購入することが実は一番現実的でおすすめです。

🌟最期まで暮らせる住宅「新築編」

私は30年前、高齢者住宅建築の先駆者である積水ハウスにおいて、「生涯住宅」の住宅商品企画をしていました。

終の住処“ホッとする家”のコンセプトは「安快単感」です。つまり安価で快適でシンプルで五感を刺激してくれる設えがあることだと考えています。

最期を迎えることができる自宅とするためには、まず小さくコンパクトな住まいにすることが大切です。階段を使わずに寝室、居間、水回りがワンフロアにあり、そこで1日の生活が完結できる平家型の住まいが理想です。

🌟最期まで暮らせる戸建の「トイレ」改修

私は福祉住環境コーディネーター1級の資格も生かして改修計画の相談を受けています。

三大介護と言われる食事介助、入浴介助、排泄介助のうち最期まで自力で何としても行いたいのは“排泄”です。
介護保険を利用するようになると、住宅改修という選択肢があり20万円の工事が1〜3割の自己負担でできるという制度があります。
お金を掛ける前に取り組みたいことは、便器への移動時間短縮のためにトイレのドアのネジを外して撤去し、ロールスクリーンで目隠しをすることです。
それだけでは心配という方には TOTOの「ベッドサイド水洗トイレ」(写真)というベッド横に水洗トイレを設置するという商品がオススメです。一般的なポータブルトイレは汚物処理など、介護者の負担があります。この商品は給排水工事をするため一般的な水洗トイレと同じ便利さとなり、どこでも追加設置が可能でしかも可動できます。見た目は写真のようなポータブルトイレですが、目隠しパーティション設置まで改修工事でセットすると完璧でしょう。特定福祉用具購入対象です。
トイレが物理的に近いことが、ご本人の気持ちに余裕を持たせることもあるので「どこでもトイレ」が理想型です。

TOTOの「ベッドサイド水洗トイレ」

アロン化成の「家具調トイレセレクトR 自動ラップはねあげ」

排泄物を自動でラップに包むことができるので、終末期でベッドの横に置けば、家族も後始末が楽で匂いもありません。

🌟最期まで暮らせるマンションの改修
国民の1割が住んでいると言われているマンションは、全国に670万戸あり、その1/3は築30年以上です。

フルリノベーション工事は意外と簡単にできますが、工期が2ヵ月ほどかかり、その間の仮住まいと坪30〜40万円程度の工事費がかかります。満足度の高い終の住処づくりに対応してくれる業者を見つけるために、まず福祉用具貸与事業所に声をかけたいです。住宅改修などの工事もしているのでリノベーションに慣れた業者を知っているはず。理学療法士との関わりがあるので相談もしやすいです。

終の住処は有料老人ホームや施設という選択肢もあり

施設にはいろいろなタイプがありますが、金銭的余裕のある人が入るとしたら、介護付き有料老人ホームがいいと思います。

私が施設長をしていましたサービス付き高齢者住宅は、部屋は18平米が基準で月々18万円ほどです。有料老人ホームよりは安く一時金もいらないので入りやすいですが、介護は外付けサービスとなり、自立度の高い人向けの制度といっていいでしょう。入っていた人はある程度お金に余裕のある方が多かったと思います。

施設見学だけで良い施設を選ぶことは難しいので、体験入居を積極的に利用しましょう。

🌟迷っていれば自宅で頑張る!
私は義父母の介護経験から得たことは、老親が施設に入らないといけない状況になってきたのではないかと考えている人は当然たくさんいると思いますが、自宅か施設か迷っている方は絶対施設に入らないほうがいいと思います。見学にも行かない方がいいと思います。
迷っているということは何とか自宅で頑張れるということなので、その段階では自宅にしがみついて、行けるとこまで行ってみることが大切ということです。 

🌟家族で自分や親の最期の居場所を話し合う

親が高齢になってきたと感じた瞬間から、今一度おろそかになっていた家族のコミュニケーションを再構築する必要があります。それができないと *QOD の向上は絵空ごとに終わってしまいます。

それには年末年始やお盆などの家族や親戚が集まる時が絶好のチャンスです。自分や親の最期の居場所や相続のことを基本に話し合うことです。
老親のQOD の向上は簡単ではありませんが、是非とも管理しなければならない残された子や家族の使命です。

 *QOD:「Quairity of Death」の略。よい死、質の高い死、尊厳死。終末期における穏やかな最期をどのように過ごすかをめぐる考え方。

終の住処コンサルタント田中聡さん  前回の本の写真

著書「施設に入らず『自宅』を終の住処にする方法」

詩想社:1000円(税別)

(早く全容が知りたい方は本を購入して読んでください)

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